細長い国土で有名な南米大陸のチリ共和国(以降、「チリ」)は、北から南まで約4630kmの距離がある。チリの首都「サンティアゴ」から南に500kmの場所に、今回ご紹介するマジェコ高架橋(Viaducto del Malleco)がある。
北部の砂漠地帯と南部の森林地帯に挟まれた、渓谷地域に位置する鉄橋だ。
完成したのは19世紀
マジェコ高架橋が完成したのは1890年、竣工までおよそ4年の歳月がかかっている。最初から黄色だったかどうかは不明だが、現在は鮮やかな黄色で一度見たら忘れられない存在感がある。
全長は347.5mで、幅員は4m。後述するが、建設当時の橋脚は4本で、橋台近くにある2本の橋脚は存在しなかった。上の写真、左から数えて2番目と5番目の橋脚が43.7m、3番目が75.7m、4番目が67.7mの高さがある。
2022年現在で、橋年齢は132歳。果たして今も現役かどうか気になるところだが、なにしろチリという国のことをよく知らないし、訪問したこともない。以前、フランスの鉄道事情を調べたときもそうだったが、他国の鉄道事情を調べるのはなかなか難しい。
ただ、2020年に撮影されている下の画像を見る限り、上路を貨物列車が通る様はなんとも頼もしく、おそらくは今も現役で存在していることは間違いないだろう。
重量級機関車のための補強
マジェコ高架橋の古い設計図を見ると、先にも触れたように橋脚はそもそも4本だった。
また、下の工事中の写真を見るとわかるように、現在の橋桁と橋脚の接続部にある羽を広げたような斜材は存在しない。
日本においても明治から大正・昭和初期の鉄道黎明期では、鉄道による輸送力増強のため、より力のある重量級の機関車通過に耐えられるように鉄橋などが強化された。
同様に、マジェコ高架橋でも、1923年に補強工事が行われている。橋桁と橋脚をつなぐ斜材が設置され、橋台近くの2本の橋脚も追加され現在の橋脚6本の構造となった。
チリでは、都市部の地下鉄など鉄道網が充実する一方、日本以上にローカル線の減便や廃止がすすんでいる。かつては、輸送の主力だった蒸気機関車も、今は観光列車で目にするのみだ。(下の画像)
ちなみに、下の画像で観光用蒸気機関車に牽引される客車は、2000年代初頭までサンティアゴからテムコで運行されていたアルゼンチン「Fiat-Materfer」製の客車"Fiat Concord"のようだ。
最後に、マジェコ高架橋の美しい勇姿を映した4K動画を紹介したい。
映像としても素晴らしいので、ぜひご覧いただきたいのだが、この映像を最初に見たときに「おおっ!」と驚いたことがあった。
35秒過ぎぐらいに、レールの横の鋼材に文字が書かれている映像が映し出される。
「fuiste erkes y seoiras siendo lo mas hermoso en mi vida」
Google先生に翻訳をお願いすると、「あなたは元気で、私の人生で最も美しいものになるでしょう」という内容だった。
なんだか抽象的だけれど、きっと橋の塗り替えを行った人たちが記念に書き残したものなのか!と思ってテンションがあがる。
しかし、その後よくよく調べてみると、どうも運行頻度の少ないこの鉄橋に立ち入る人が少なくないようで、Googleマップにもそれを裏付ける写真が多く掲載されている。
つまり、私がちょっと感動したメッセージは、不法侵入者の落書きだった可能性が高いということになる。
立ち入りはいけません。ルールは守らないと。