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以前、青森と秋田の両県を、4日かけて旅をしたことがある。一度は乗りたい絶景路線として人気のあるJR五能線にも乗った。
五能線は秋田県の東能代(ひがしのしろ)から青森県の川部まで全長147.2km・43駅の路線で、車窓から日本海の美しい景色が楽しめる。
鯵ヶ沢町の赤い橋
川部から五能線に乗り深浦方面へ向かっていた私は、途中の鯵ヶ沢(あじがさわ)駅を出てすぐ、小さな赤いトラス橋が目に入り、あわててシャッターを切った。
わずか数秒ほど目の前を通過しただけだが、車が通る橋ではない・・ということは見てすぐわかった。なんということのない橋なのだが、妙に気になる。
Googleのストリートビューで確認すると、幅はかなり狭い。橋の名前を知りたかったが、残念ながらストリートビューでは橋名が書かれている親柱の文字がよく見えない。
いろいろ調べてみると、中村川に架かるこの橋の名前は「新富橋」。1981年(昭和56年)に町が架けた人道橋で、地元では「赤い橋」と呼ばれているようだ。
せっかくの赤い橋も経年劣化でさびなども出てきているが、2017年(平成29年)5月には簡易的な修繕が行われている。なぜトラス橋を採用したのか、その点に関してはわからなかったが、面白い資料が見つかった。
2017年、町の初めての試みとして、鯵ヶ沢高校2年生35名による模擬議会が実施された。町の人口減少対策や地域産業の活性について、鰺高生が真剣に考えた10の質問を議会形式で町に問いかけた。
その質問の1つが、あの赤い橋についてなのだ。「橋の改修で、住民の安全確保へ」を主題に、新富橋についての現状と今後の提案を行う高校生と町とのやりとりは、なかなか興味深い。ただ、引用するには長すぎるので、ぜひ以下のリンク先の資料をご覧いただければと思う。
◆議会広報あじがさわ(151号) 高校生模擬議会 平成29年8月
大雨で中村川が氾濫
新富橋を撮影したのは、五能線の列車が中村川に架かる鉄橋を渡るときだった。
すぐ上のストリートビューで、画面右方向をみていただくとその鉄橋が見える。実はこの鉄橋が中村川の大増水により、路面が大きく歪んでしまう事態になっている。
これまでに例をみない長時間にわたる長雨で、青森・秋田の一部の地域に大きな被害がでているのは、最近の報道で多くの方が知るところだろう。
鰺ヶ沢町では24時間の降水量が8月10日午前0時過ぎに202.5mmとなり、この時点で観測史上1位の大雨となった。中村川は濁流となり、多くの流木が鉄橋の橋脚にぶつかり、列車走行が到底できない状態となってしまっている。
※実際の現在の鉄橋の様子は、こちらのニュースサイトで公開されています。
上で紹介したニュースサイト内にある動画、23秒経ったあたりで新富橋が映りこんでいる。どうやら流されてはいないようだった。
鯵ヶ沢町では中村川の氾濫により、少なくとも床上・床下浸水した家屋が445棟にのぼっている。
鯵ヶ沢以上の雨が降った深浦でも
青森県の深浦町では、8月10日の午前3時20分の時点で、24時間の降水量が325mmを記録。その後、72時間の降水量では386.5mmとなり観測史上1位となっている。(12日午後1時半時点)
この雨量は8月の平均降水量の約2倍に相当する大雨である。
下の画像は本日14時過ぎにTVで放送されたものだが、五能線の線路上に住宅が押し流されている。
五能線の千畳敷駅に近い場所で、少し角度が違うが同じ場所をストリートビューで見たものが次の画像だ。
報道によれば、9日火曜の午後から、家屋が少しずつ流されてきたとのこと。12日午後2時の時点では、到底列車走行ができない状態になってしまっている。
こうした被害状況は他にもあり、JRからは13日土曜日も、能代と五所川原(ごしょがわら)の間で五能線の運転を始発から見合わせると発表があった。
多くの被害状況を考えると、全線復旧にはかなりの時間がかかるだろう。
いずれにしても、来週明けにはまた前線が活発化するという予報もある。これ以上の被害がでないことを、切に願う。