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わたらせ渓谷鉄道は、群馬県桐生市から栃木県日光市まで山間の渓谷沿いを走る第三セクターの鉄道だ。古くは、1911年(明治44年) に足尾銅山から産出される鉱石を輸送するために開業した足尾鉄道をルーツとする。
駅の数は全部で17で、有人駅は相老(あいおい)・大間々(おおまま)・通洞・足尾の4駅だ。
上流に進むほど様相を変えていく渡良瀬川や 足尾銅山跡 など観光的な見どころも多いが、なんといっても春の花が咲きだす頃のわたらせ渓谷鉄道は、天女が舞い降りてきたかのような美しさがある。
まずは、花咲き乱れる各駅の様子を、順番にご覧いただこう。
桐生駅で一日フリーきっぷを買う
わたらせ渓谷鉄道が発行する一日フリーきっぷは、始発の桐生駅から終点の間藤駅まで、何度でも乗り降りできて(発売日当日限り)1,880円だ。神戸(ごうど)駅までの往復は1,440円だが、間藤(まとう)駅間なら2,260円。多くが無人駅で降車時には運転士さんが切符を確認するので(乗車中に車掌さんが検札に来る場合もある)、フリーきっぷを購入したほうが何かとストレスがない。
他にも、降車駅が限定された切符などもあるようだが、実際に目の前で「この切符ではこの駅で途中下車できません」と運転士さんに降車を止められている方もいたので、その手の切符を購入前には注意が必要だ。
今回、この一日フリーきっぷを事前に購入することができなかった。
(購入の方法については、こちらの公式サイトを参照)
当日に桐生駅で買うしかないと思っていたのだが、JRから乗り継ぎの時間があまりなく、小市民の私は出かける前から結構ドキドキしていた。いやまあ、買えなくたって、多少割高になるというくらいなのだけれど。
ちなみに、ローカル線にありがちなことだが、わたらせ渓谷鉄道では交通系ICカードは使えない。
桐生駅でJR両毛線を降りてみると、ラッキーなことに、すぐわかる場所に焦げ茶色のわたらせ渓谷鉄道の車両がとまっている。しかも、鉄道関係者らしきお二人が、車両の横に立っていた。
フリーきっぷの購入が可能ということで、ここで無事に買うことができた。
乗車した電車は桐生駅を8時24分に出る。本当はもう1本早い7時44分発に乗るはずだったが、途中でまーさーかーの乗り間違えミスをおかし、1本遅い電車になってしまった。この時点で、私のテンションはダダ下がりである。
乗降者が多い時をのぞき、原則ワンマン運転となっているため、運転席の近くには運賃箱などが設置されている。
新旧対決の駅名標、 相老駅
最初の停車駅は、下新田(しもしんでん)。わたらせ渓谷鉄道の中では最も新しい駅で、1992年(平成4年)に開業された。
このため、駅全体はごく現代的で、住宅街の中にある。
次に到着したのは相老駅。1911年(明治44年)に開業された古い駅である。開業当時は「相生」という名前だったが、翌年に現在の「相老」に変更している。(変更理由は諸説あり)
駅舎自体どの程度当時の建造物を残しているかは不明だが、 かなり古い駅名標(駅名看板のこと。ここでは柱に取り付けられている)は、レトロな雰囲気たっぷり。新しい駅名標と仲良く並んでいる様子は、あたたかな世代交代のようで、なんとなく微笑ましい。
相老駅では、東武桐生線が乗り入れている。わたらせ渓谷鉄道の駅の中では乗降者数の比較的多い駅である。
続いて、列車は運動公園駅に停車。こちらも住宅街に隣接した駅だ。
わたらせ渓谷鉄道の要、大間々駅
大間々駅は、駅前に大きな駐車場があり、 この駅を基点として乗降する観光客も多い。特に自家用車で来る観光客に対しては、大間々駅の駐車場などに車を止め、わたらせ渓谷鉄道に乗車して旅をしてもらうことを推奨している。
トロッコ列車の始発便も多く、観光の拠点となる駅なのだ。
大間々駅を過ぎると、わたらせ渓谷鉄道の車窓はそれまでの住宅街から徐々に変化していく。
終点の間藤駅に向かって進行方向右手側に渡良瀬川が流れているため(逆になる場所もある)、座席もどちらかといえば右側がオススメだ。
時代を超えた木造りの駅舎 上神梅駅
次に到着した上神梅(かみかんばい)駅は、これまでに停車してきた駅とは一線を画した雰囲気だ。
列車が速度を落としつつ駅に近づくと、まるで公園のような花壇のあるホームが出迎えてくれる。
上の写真をみても、そうと知らなければ鉄道の駅のホームには見えないだろう。
1912年(大正元年)に建設され、その後、昭和初期に増築された木造の駅舎は、なんとも雰囲気がある。特に改札の木枠がいい。はるか遠い昔、こどもの頃にみた鉄道の風景を思い起こさせてくれる。この駅舎とプラットホームは2008年(平成20年)国の登録有形文化財に登録されたというのも納得だ。
ピンクのグラデーションの樹々の花だけでも十分だが、足元にこれでもかというほどの鉢植えの花が並べられ、関係者の方々の想いが熱く胸に迫る。電車の乗り間違えで下がっていたテンションが、あっという間に上昇曲線を描いてくるのがわかる。
上神梅駅を出発し、列車の最後部から線路を臨む。こんな何気ない風景ですら、春のわたらせ渓谷はほのぼのと美しい。
右手側の渡良瀬川の岸辺に桜並木が見えてくる。奥の山々にもところどこに桜が点在し、全体に春の霞がかかったような雰囲気である。
桜とホームだけの小さな駅 本宿駅
7番目の駅、本宿(もとじゅく)に到着。
地元の集落の要望もあり、1989年(平成元年)に開業した駅で、1日20~30人の乗降がある。
斜面に作られた小さな小さな駅。それでも、地元住民にはなくてはならない駅だ。
本宿駅を後にして、列車はいよいよ水沼駅に向かう。
正直なところ、温浴施設がある駅という程度の認識だったが、このあと予想を裏切られる展開となるのだった。
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