ディープな大井川(2) ダムカレーと吊り橋とリニアと

前回の「ディープな大井川(1) 井川湖畔の廃線ウォーク 歴史を刻む線路跡」では、井川線の廃線跡を紹介した。井川には数時間しか滞在できなかったが、廃線跡のほかにも記しておきたい場所がある。

下の写真は廃線小路の終点、旧堂平駅があった付近だが、ここで道は行き止まりとなり左右に分かれる。
右に行けば「夢の吊り橋」(後述する)。左に行けば、アルプスの里だ。

上のマップをみて、なんとなくすぐ到着できそうに思っていたのだが、舗装路ではあるものの、けっこうな上り坂が延々続き、人気もなくテンションがだんだん下がってくる。

しばらく歩き続けると、目の前が大きく開けた場所に出た。
道があっているのか、少々不安になるが、古い道しるべが目に入った。
どうやら、方向は間違っていないらしい。

このまま真っすぐいけばいいのか?
ここからはアルプスの里(井川農林産物加工センター)がどこにあるのか、よくわからない。
(あとから分かったが、右側にある赤い屋根の建物の奥にあった)

井川を紹介する旅のガイドなどでは必ず紹介されている、アルプスの里。
今日はここにダムカレーを食べるためにやってきた。
11月終わりごろの時期ではあるが、風もなくそれほど寒くもない。
こういうときは、やっぱり外で食べるのがいい。

こちらが、井川ダム公認のダムカレー。
かぼちゃが何を表すのか、聞いておけばよかった。

お店の軒先には、「ずいき」が干されていた。

ずいきの近くで作業をされていた女性に少し話を伺った。
ずっと井川にお住まいなのかと尋ねたところ、若い頃は静岡で調理関係の仕事をしていたが、井川で学校の調理の仕事があり、地元に戻ってきたとのこと。その後結婚をされ、そのまま井川で暮らされている。

この地の子供たちは中学卒業のタイミングで井川の町を離れ、静岡など高校のある場所に下宿をすると聞いて驚いた。
下宿先は祖父母の家だったり、セカンドハウス的な家だったりするようだ。
確かに井川には高校はないし、進学先をいろいろ考えた場合、そういう選択肢になり得ることに、まったく考えが及ばなかった。

ちなみに、アルプスの里から東に1km弱ほどのところに静岡市立井川小中学校がある。
名前の通り小中一貫校なのだが、2019年の生徒は全部で7人。少しうらやましい。

夢の吊り橋の上で、まさかの・・

ダムカレーを食べ終えても、まだ井川駅に戻るには時間の余裕がある。
実は井川には「夢の吊り橋」と呼ばれる吊り橋がある。
「夢の吊り橋」という名称では、圧倒的に寸又峡の吊り橋が有名だと思われるが、この井川にもあるのだ。

ただ吊り橋探検にありがちなんだけど、吊り橋を渡る以前にその場所に行くまでがけっこうサバイバルということが少なくない。この井川の吊り橋も例外じゃなさそうなことが下調べでわかっていた。
近場に行くだけ行ってみて、だめそうなら引き返そう、そう決めて吊り橋に向かうことにした。

ということで、吊り橋の入り口に到着。

おそらく「夢の吊り橋」という小さな標識がなければ、この崖下に吊り橋があるなどとは、到底気が付かないだろう。
どうしようかと、標識の先をのぞきこむ。
一段ずつ、ガンガン降下していく感じじゃない?

私はビビりなので、恐る恐るゆっくりと降りていく。
しかもたちが悪いことに、ビビりの無鉄砲なので、そのままずるずると杭につかまりながら、降りて行ってしまった。こうなるともう引き返せない(いや、引き返すことはできるんだけど、なんというか心情的に)。
これ、雨もしくは、雨上がりだったら無理だなぁ。

吊り橋にたどりつく。この時点でも少し渡るのに迷いがある。
だって、おそらく物心ついてからこんな人気のない本物の吊り橋を渡るのは初めてなんだから!

まずは一歩。

揺れる。揺れるじゃん。渡し板の幅が40cmぐらい(目測)しかないんですけどっ。

2mぐらい進んで。そのまま立ち止まり考える。
このまま引き返していいのか>自分。

何かの記事に、吊り橋を渡るときは、5mぐらい先を見て歩くがよい・・みたいなことが書いてあった。
覚悟を決めて、そのまま一歩ずつ歩き出す。 しゃ、写真も撮らなくちゃ。
カメラは首から下げていたので、そのまま下を見ずに液晶モニタをのぞいたその時。

まさかの、バッテリー切れ。

そのままリュックのサブポケットにはいっている予備バッテリーを震える手で取り出し、落としたら世界終了の覚悟でバッテリーを取り換えた。
もう、この時点で吊り橋からの景色なんてどうでもいい!という気分になっていた。

なっていたんだけど、やはりこの景色をみると、こころが奪われる。
よくぞこんなところまで一人でやってまいりました、という達成感がみなぎる瞬間である。

ひたすら、内股で歩を進め、吊り橋を渡りきる。
渡り切った先には、また上り坂があらわれる。
でも、さっき下った道よりも傾斜が緩やかだし、ちゃんと道になってるのでどってことない。

登りきったところで、年配の女性一人とすれ違う。
大丈夫かな。ちょっと心配だったけど、私なんかよりずっと足腰もしっかりしていそうなので、きっと大丈夫だろう。

リニア建設の拠点として

夢の吊り橋を渡り終え、あとは井川駅を目指すだけである。
西方向に、とにかく道なりにずっと歩いていくだけだ。

道中、リニア関係の立て看板をいくつか見かけた。
井川よりずっと北がリニアの走行ルートのはずだけど、どうやら関係者の行動拠点として井川のこの開けた場所が利用されているようだ。

まだまだ完成には時間がかかる。
いろいろな問題もきっとでてくるだろう。
そのとき、井川の町はどんな影響を受けるのだろうか。

実は今回の井川訪問、もしスケジュール的に可能だったら、井川の中心部からさらに大井川上流にある「井川大橋」も訪ねてみたいと思っていた。
重量制限はあるが、車も走行可能な大きな吊り橋である。湖面まで60mの高さと聞くと、怖くて笑いたくなる。

住民が利用するバスもある。下の地図のように、井川中心部から車で5分程度だ。

2.8kmなら歩ける距離でもあるので、グーグル先生に徒歩の場合どのくらいか計算してもらった。

すると、驚きの結果がでたのである。
なんと、53時間。
車で5分の距離が、53時間とはこれ如何に。

上の地図をみても明らかなように、ぐるっと1周して236km。
寝ないで歩いても2日ではたどりつかない計算だ。

車では正しくルート計算できるのに、徒歩だとできないのは、何かフラグでも立っているのかもしれないけど、そんなことよりも、こうやって1周できる道があることに、ちょっとわくわくしませんか、皆さん 笑。

そんなこんなで井川でのサバイバルも終え、列車に乗り込んだ私。

子供のように、駅員さんに手をふるのでありました。

次に続く、、、

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