白洲灯台レンズの謎 二階堂CM「詩人の島」篇   

 

 

 

短編映画をみたような余韻を残す、大分むぎ焼酎二階堂のCM。CMの中には、しばしば古い土木建造物が登場する。

今回取り上げるのは、2004年度の作品、「詩人の島」だ。CMの映像の中で登場するのは、北九州市の沖合にある白洲岩礁に建設された「白洲灯台」である。

まずは公式サイトが公開しているCMをご覧いただこう。

 

  

 

CMの最後の方で、灯台が光を放つ場面が登場する。

 

「詩人の島」CM 25秒頃

 

この映像を見たとき、やや不鮮明ながら昔からある古いタイプのレンズに見えた。もしかしたら、今もこのレンズが残っているかもしれない!とテンションがあがる。

灯台についてたいした造詣もないけれど、暗い海を照らすレンズがとても素敵だ。光源の灯りを遠くまで拡散する古い様式のレンズに、強い魅力を感じるのだ。

ちなみに近年では、さまざまな理由から古いタイプのレンズは姿を消し、LED灯器に置き換えられている。このため、古いレンズが残されている灯台は、レンズ好きからすると希少な存在なのである。

 

トップページは2013年に撮影された白洲灯台である。この写真の灯室(レンズなどが格納されている灯台上部)を拡大したのが、次の写真だ。

 

2013年撮影の白洲灯台

 

不鮮明ながら、あきらかにCMのレンズとは違うものが設置されているように見える。公式なデータは確認できなかったが、どうやらLED灯器(Ⅱ型)というタイプのもののようなのだ。

現在は老朽化のため灯台のレンズがある場所までは上れないと聞くが、2011年頃に内部を撮影した動画がYoutubeで公開されていて、一瞬同じような形のLED灯器が映っているので、おそらく間違いないだろう。

「詩人の島」篇は2004年に公開されているので、その頃には今のLED灯器と違うレンズが設置されていたのだろうと思った。

さらに調べてみると、白洲灯台に90年近く設置されていた古いレンズが展示されていたという記事が見つかった。

このレンズ、直近3年では10月ごろに以下のように何らかのイベントで現物展示されいた。

・2020年10月31日~11月15日 ノスタルジック灯台展 旧下関英国領事館
・2021年10月1日~10月10日 全国近代化遺産活用連絡協議会主催?展示 旧下関英国領事館
・2022年10月29日~11月6日 白洲灯台フェスティバル in 小倉城 ~岩松助左衛門翁没後150年~

すでに展示は終わってしまっているが、幸いにも全国近代化遺産活用連絡協議会のサイトに、展示されていたレンズの写真が掲載されていた。

 

白洲灯台 第6等不動レンズ 全国近代化遺産活用連絡協議会サイトより転載

 

しかし問題が一つある。

先ほどの、全国近代化遺産活用連絡協議会のサイトには以下のような記述があった。

 

今回展示した第6等レンズは、明治43年に設置され、平成8年まで現役で活躍していたものです。

「白洲灯台 第6等不動レンズ」全国近代化遺産活用連絡協議会

 

この記述が確かならば、レンズが設置されていたのは、1910年から1996年までということになる。ということは、2004年の「詩人の島」篇にでてくる白洲灯台の灯りは、この第6等不動レンズではない可能性が高いのだ。

CMに登場する灯台がいつ撮影されたのかもわからないし、今のLED灯器が設置された正確な年代の公式データを確認できなかったので、結局は何もわからないという何とも締まりのない結果となってしまった。

もしかすると、第6等不動レンズと今のLED灯器の間の期間に、別の灯器が設置されていたのかもしれない。

 

とはいえ、レンズがなんであろうとも、CMに登場する白洲灯台は孤高の気高さを感じるような魅力がある。

白洲灯台が立つ一帯は、暗礁が多く急潮の海難事故の多い場所だった。

近代化の波が日本に押し寄せ、あらゆるインフラ建設が熱を帯びた明治時代。海難救助を多く経験していた岩松助左衛門の尽力により、1873年(明治6年)に初代木造の白洲灯台に灯りが点く。

それから150年、今もかわらず同じ場所に白洲灯台は立ち、暗い海を照らし続けている。

こうした灯台の存在を教えてくれる、二階堂のCMとはそういう存在でもあるのだ。

 

 

 

 

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