苦労してたどり着いた猿山岬灯台、見込み違いが生んだ貴重な経験とスリル

 

 

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

 

到達:2022年10月
難易度:■■■□(中級)

「秘境にある猿山岬灯台」。クルマをとめてから徒歩で約15分で行けるので、「行くのが困難」というほどではない。しかし、今回(2022年10月11日)はたどり着くまでに結構苦労した。なぜそうなったのか?

 言い方を変えれば、貴重な経験であり、スリルがあって記憶に残るものになった。これが「灯台を見に行く」ことの楽しみの一つだ。

 猿山岬灯台(石川県輪島市)は「能登半島最後の秘境」と言われる場所にある。能登半島のほとんどは、海岸線に沿って国道249号または県道(次の図の赤オレンジ線および黄色線)が通っているが、猿山岬を含む北西部だけは海岸沿いの道がないことからも「秘境」であることが想像できる。

 

 

 第九管区海上保安本部のWebページによれば、

 

最近まで人一人が歩けるだけの山道が通じているだけでしたが、今は道路が整備され、訪れる人も多くなっています。

https://www.kaiho.mlit.go.jp/09kanku/koutsubu/toudai/kakutoudai/saruyamamisaki.htm

とある。

 

 猿山岬灯台の付近には雪割草の群生地があり、おそらくこのために(いつごろかが不明だが)道が整備され、大きな駐車場も作られている。したがって、以前よりも猿山岬灯台には行きやすくなっているのは確かだ。

 

(Googleマップ)

 

 このGoogleマップを見て、「同じ道を引き返すのはつまらないので、行き帰りで別の道を通ろう」と考え、猿山岬駐車場には南側から向かうことにした。そして、これが間違いだった。

 国道249号(図下部の黄色線)を西側の海岸に向かい、そこから県道266号に右折する。はじめ海岸沿いだった道は、急峻な崖に阻まれて途中から内陸に入る。そして、かなりのつづら折りを経て、猿山岬駐車場に向かう脇道に入る。こういう目論見だった。

 カーナビには猿山岬灯台の登録がなく、大まかな地図の位置を指定して目的地にしたところ、北側から回るルートを指示した。あまり頼りにならないので、カーナビを見るのはやめて、事前に見ていたGoogleマップの記憶を頼りに進むことにした。

 

 

 

 門前町深見(地図の左下)で海岸線を離れたあと、上図A地点からは本格的な山道だ。青の標識のうち、上の「猿山灯台」の文字は消えかかっている。下の「六郎木」は少し先の集落。その下に「猿山岬灯台 雪割草群生地」という看板もある。ここまでは順調。

 

 

 途中、3、4軒の建物が見えたのが「六郎木」集落だろう。

 そこを過ぎると、クルマ1台分の道幅しかなくなり、道の両側は草や木が生い茂っている。対向車が来てもすれ違える場所がほとんどない。テレビ番組「ポツンと一軒家」でよく見る光景だ。

 ゆっくりと走って「いつまでこれが続くんだろう」と思うころに分岐(地図のC地点)にたどり着く。猿山岬灯台の標識があるので左に進む。

 通常はスマホのGPSをオフにしているので、Googleマップを開いても現在地が表示されない。設定を変える方法をゆっくり調べる気持ちの余裕がなかったので、現在地がよくわからない。実は、事前に見ていたGoogleマップの記憶から、この分岐(地図のC地点)が地図のD地点だろうと勘違いしていたのだ。

 ここからがアドベンチャーのハイライトだ。カーブの先は草で見えないので、対向車が直前に来るまで確認できない。路面には枯草や枯木が一面に落ちていたりして、あまりクルマが通らないことを示しているが、来ない保証はない。緊張を強いられながら時速20kmぐらいの低速で進む。雪割草シーズンに多くのクルマが行き来してだいじょうぶなのか?

 D地点であれば、ほどなく駐車場が現れるはずだ。ところがこの道がいつまで経っても終わらない。実際にはC地点からD地点に向かって走っていたからだ。「次のカーブの先が駐車場ではないか」という期待が何度も外れ、同じような道が現れる。Googleマップにはない、間違った道を来てしまったのではないか、という不安を抱えながら延々と走っていたのだ。

 このような状況だったので、道路の写真を撮ることに気が回らず、この区間の写真はない。代わりにGoogleストリートビューの画像を入れておこう。

 

(Googleマップ ストリートビュー)

 

 C地点から15分ぐらい走っただろうか。ようやく少し広い道に突き当たった。これがD地点だったのだ。そこから5分ぐらい走って、ようやく駐車場にたどり着いた(地図の「猿山岬駐車場」というマーカー位置)。2カ所の駐車場に40~50台ぐらいがとめられそうで、雪割草の季節(2月から4月)はここもいっぱいになるのかもしれない。だがきょうは1台もいない。

 

 

 クルマをとめ、この先は徒歩で進む。

 

 

 すぐに舗装は終わる(地図のE地点)。「娑婆捨」(この先に行くなら世間の記憶は捨てよ?)という威嚇的な名前が付いていて、トイレと休憩所がある。

 

 

 トイレを過ぎて始まる遊歩道はこんな感じの道だ。

 

 

  

 

 崖の下は日本海。

  

 

 アクセスの悪い灯台へ行く醍醐味は、木々の間から灯台の姿が見えた瞬間だ。だいたいアプローチの道は木や草で見通しが悪いので、だいぶ近づいてからようやく灯台の姿が見えるのだ。

 猿山岬灯台の残念なところがここだ。灯台まであと100m以上ありそうな地点で、チラッと灯台の先端部分が見えてしまうのだ。写真だとわかりにくいが、中央付近に灯台の先端部分が見えている。

 

 

 アプローチの最後は急な階段だ。

 

 

 

 そして灯台が見えてくる。ここまでの苦労が報われる瞬間だ。

 

 

 とうとう猿山岬灯台が全体の姿を現した。これ以上上ると、写真のフレームに灯台全体が入らなくなる。右にある塔は、上部で細長い棒状のものが回転していて、レーダーっぽいものと思われる。灯台の古い写真を見ると(例えばhttps://lighthouse-japan.com/ishikawa/saruyamamisaki/saruyamamisaki.html)、この右の塔が写っていないように見えるので、近年建てられたのかもしれない。

 

 

 

 そして到着。猿山岬灯台は点灯が大正9年(1920年、改築昭和59年)とかなり古い。前述したように猿山付近は人が近づくのが難しく、当時はアクセス道路がなかったため、建設には相当の苦労があったようだ。

 

資材は灯台直下の崖下に船を着け、海抜約200メートルの建設地まで、垂直に近い急斜面を人力で這うようにして担ぎ上げられ、工事は難航を極め、大正9年11月に点灯しました。

https://www.kaiho.mlit.go.jp/09kanku/koutsubu/toudai/kakutoudai/saruyamamisaki.htm

 

 これを考えると、今回アクセスに要した苦労はたいしたものではないと思えてくる。

 

 

 

 

 駐車場からの歩きは約500m、10~15分ぐらいだろうか。距離はそれほどないが、上り下りがあるので歩くのは結構つらい。

 この先も遊歩道は続き、門前町深見まで続いている。案内板によれば深見まで3.4km、歩いて1時間半。さっき不安を抱えながら走った自動車道と並行した形で山中を歩き、門前町深見の中心地付近に出る。

 

 

 

 では駐車場に戻り、次の灯台(禄剛埼灯台)に向かおう。駐車場から地図のD地点まで戻ると、道は自然とその先に続いている。さっき南から来た道には間違っても曲がりそうにない。道は両側1車線から2車線ぐらいの幅で、走るにはなんの心配もない感じだ。小崎という小さな半島を回ると、門前町鵜山というちょっとした集落に出る。

 

 

 なんのことはない、こっちからアプローチしていれば、そんなに迷わずに猿山岬駐車場まで行けるのだった。

 ここでもう一度最初の地図を載せる。

 

 

 これを見ると、北側(上端)の門前町鵜山から南側(下端)の門前町深見までそこそこ太い道(白線)があるように感じてしまうではないか。Googleマップに文句を言っても仕方がないのだが。

 そしてもう一つ。地図をよく見ないと気づかないのだが、国道249号から南側の門前町深見に向かう道路は県道265号。一方、北側の門前町鵜山付近の道路は県道266号。県道としてはつながっていないのだ。猿山岬付近を通過して南北に行き来する人(クルマ)は、確かにそれほどいないだろうな、と想像できる。

 そう考えると、今回は貴重な道を走破する経験をしたことになる。しかもちょっとしたスリルも味わえた。

 

 

 

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