かたつむりのうた 琵琶湖疎水で恋矢を想ふ

滋賀県大津市の琵琶湖に隣接した取水口から京都府京都市の蹴上まで、琵琶湖疎水と呼ばれる水路沿いを歩いたことがある。雨混じりの天気だったおかげで、水路沿いのコンクリートブロックの上に、体長5cm以上もある大きなかたつむりを見つけた。

こんな大きなものを見るのは初めてかもしれない。かたつむりに明るくないので、なんという種類かわからないが、苔むした塀の上をぴんと角をたてて顔を上げたり下げたりと、なんとも優雅な動きだった。

なんということもなく、こどもの頃に歌った「でーんでんむーしむし」の歌詞が頭の中で流れ始めたわけなのだが、そのときにふと気が付いた。

おーまえのあーたまはどーこにある
つのだせ やりだせ あたまーだせ

???

 

やりって?

 

 

角も目玉も頭もわかるが、やりってなんだろう。普通に考えれば「槍」よね。
かたつむりは、槍なんてもっていただろうか。

いらすとやってほんとに何でもあるね

 
帰宅してから、かたつむりの「槍」についてちょっと調べてみたところ、私的には驚愕の事実が判明した。

(ちなみに、昨年の秋にも同じように思って調べた人がいたらしく、ツイートして話題になっていたようだが、そのときはまったく知らなかった)

結論からいうと、かたつむりは確かに槍をもっていた。種類によって形や数はいろいろらしいけど、多く見られるものは石灰質でできた細長い棒状のもので、「恋矢(れんや)」という何とも粋な名前がついている。確かに実際に現物をみてみると、槍というよりは矢のようにもみえる。

wikipediaより

 
かたつむりが雌雄同体であるということを知ったのは中学2年のときだ。当時はまっていた萩尾望都氏のドイツのギムナジウムを舞台にした少女マンガで、登場人物の学生の一人がアメフラシやかたつむりが雌雄同体だと語るセリフに驚いたものだ。(その後、海外小説「闇の左手」で両性具有の惑星ゲセンの世界観にも翻弄されるのだが、それはまた別の話)

そんな雌雄同体のかたつむりの交尾は、あたまの下のほうにある生殖口に双方の生殖器を挿入して行うらしいが、それとは別に、交尾時に普段隠し持っていた槍が突如現れ、こともあろうに、相手の身体をぶすぶすと刺すのだという。

なぜそんなことをするのか100%解明されているわけじゃないようだが、槍の表面にある物質が、相手のかたつむりの生殖能力を抑える効果があるらしい(他の個体と交尾しにくくなる)とか、刺すには刺す理由があるのである。

私が生半可な知識で解説するより、下のナショナルジオグラフィックの記事を読んでいただいた方が、より理解が早いかもしれない。

カタツムリの「恋の矢」が相手の寿命短縮、東北大

ちなみに上の記事で最後に紹介されている、木村一貴先生の解説記事へのリンクがキレている。
下の先生のサイトのURLが参考になると思う。
なお、先生は、研究のため大量の槍(恋矢)が必要とのことで、「もしご家庭で不要な恋矢、物置に眠っている恋矢がありましたらご提供いただけないでしょうか。」とおっしゃっている。
 
そう、この槍は交尾が終わると抜け落ちるらしいのだ(毎回必ずそうかは未確認)。
だから、かたつむりを飼育している方のブログをみると、「あ、落ちてた!」みたいなことがあるらしい。

いやー、もうね。当たり前なんだけど、世の中、それもごく身近な世の中でも、知らないことがたくさん!

カタツムリの交尾 (木村一貴先生のサイト)

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