えちごトキめき鉄道 鳥塚亮社長の仕掛ける地域活性化

普段はBSなどめったに見ないのに、たまたま番組表を眺めていたら気になるコンテンツが目にとまった。
毎週日曜日にBS-TBSで放送されているBizスクエアで、「えちごトキめき鉄道の挑戦!地域黒字化の仕組み」という特集があるらしい。(2月23日放送済み)

しかもゲストにあの鳥塚亮社長が出演されるとなれば、見ないわけにはいかない。

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ムーミン谷から日本海へ

菜の花といすみ鉄道
いすみ鉄道沿線     写真AC カッパリーナさん撮影

 
鳥塚亮という名前にピンとこない方もいるかもしれない。経営難に瀕していた千葉のローカル線いすみ鉄道が、2009年に社長を公募。123人の応募者の中から選ばれたのが鳥塚亮社長だ。
いすみ鉄道沿線をムーミン谷になぞらえてムーミン列車を走らせるなど、様々なアイデアを駆使して、いすみ鉄道の名前を全国区の知名度に引き上げた。

2018年に任期満了で退職した後、えちごトキめき鉄道の社長公募に応募し、2019年9月にえちごトキめき鉄道の社長に就任した。

就任してまだ半年も経過していないが、持ち前の企画力ですでに多くの取り組みを実施している。またビジネス界での抜群の知名度を生かし、要所要所でのメディア登場というのも抜かりない戦略の一つと言える。

とはいえ、鳥塚亮社長も同番組で述べていたように、いすみ鉄道とえちごトキめき鉄道では会社の規模がかなり違う。具体的には、2019年3月期の売り上げは以下の通り。

  • えちごトキめき鉄道   36億6855万5000円(2019年3月期)
  • いすみ鉄道        1億5054万9758円(2019年3月期)

こうした規模の違いも含め、赤字を解消するため、どのような取り組みで臨むかが、番組の中で語られていた。

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新幹線と並行在来線の共存

赤が妙高はねうまライン 、緑が日本海ひすいライン

2015年に北陸新幹線が長野から金沢まで延伸開業された。糸魚川(いといがわ)市出身の両親を持つ私にとっては、東京から糸魚川まで2時間強で行けることが、いまだに夢のようで信じられない。

一方で北陸新幹線が開通したことで、従来の路線である並行在来線がJRから切り離され、別経営の路線として存続をかけてのスタートを切らなければいけないという現実がある。

2010年、えちごトキめき鉄道は、JRグループ2社から並行在来線の運営を継承し、以下の2路線でスタートした。

  • 妙高はねうまライン 妙高高原駅 ~ 直江津駅( 旧JR東日本・信越本線 )
  • 日本海ひすいライン 市振(いちぶり)駅~直江津(なおえつ)駅 ( JR西日本・北陸本線 )

地図でみる2つの路線は、非常にシンプルだ。海沿いを一直線に東西に走る日本海ひすいラインと、山と海を南北に一直線に結ぶ妙高はねうまライン。この路線に、鳥塚亮社長は、非常に大きなポテンシャルがあると感じているようだった。

問題はそのポテンシャルをどうやって情報発信し、他の地域の人たちに知らしめて興味を持ってもらうかである。

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休眠中のお宝に付加価値をつける

記念乗車券 オモテ面   えちごトキめき鉄道 公式サイトより
記念乗車券 ウラ面   えちごトキめき鉄道 公式サイトより

番組内では、年々鉄道の利用者数が減少し、収益もリンクして下降傾向になっていることが紹介されていた。高校生など、通学に利用する人口が減ってきているのも理由の一つで、こうした地域利用の減少を改善するのは難しい。それゆえに、いかに外から人を呼び込むかという点がカギになる。

鳥塚亮社長は、社長就任後、地域の人たちが所有している古い鉄道写真に目を付けた。この写真を印刷した記念乗車券「なつかしの旧信越本線シリーズ」を2019年12月に販売すると、5枚セット1,000円のこの商品はたちどころに完売した。

売上総額はたいしたことはないかもしれないが、この写真が存在した場所に行ってみたいと思わせる宣伝効果としては十分な役割を果たしただろう。

駅をにぎやかにすることが地域を活性化する

写真AC だいにゃんさん撮影

鳥塚亮社長が次々と繰り出す戦略の中で、私が最も興味をひかれたのが、夜行列車体験のイベントだ。

従来から運行されていた観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」を、夜行列車として走らせた。夜に走らせるので、日中のダイヤには影響しない。リソースの有効活用である。感心したのは、ターゲット設定だ。
もし私が考えるなら、鉄道ファンにプラスして、夫婦や友人同士という、ひねりも何もない層をターゲットにしただろう。
鳥塚亮社長は違う。なんと、「冬休み親子夜行列車体験号」として親子に狙いを定めたのである。

親の世代は夜行列車を知っている。例えば、夜遅い駅に煌々と灯る照明や、座席でまどろみながら聞くゴトンゴトンという音を肌で知っている。ところが今の子供はそういうことを知らない。こうした夜行列車に乗るイベントは、親子の記憶をつなぐ体験を売ることなのだと鳥塚亮社長は言う。
狙いは恐ろしいほど的中し、イベント切符は瞬時に売り切れた。
直江津駅を出発し、直江津駅に帰ってくるだけの夜行列車が、子供たちにかけがえのない体験となって、その記憶を未来につないでいくのである。

鉄道会社にとって重要なのは、列車に乗ってもらうことだけではない。地域の人に駅に集ってもらい、駅が賑やかになること。そして、この街にえちごトキめき鉄道が必要と思ってもらうことが大事だと鳥塚亮社長は考える。

鉄道を通じて、人が動く流れが生じ、地域が活性化し、さらに人を呼びこんでいくというプラスのスパイラルを構築したいと考えているのだ。

そんな、えちごトキめき鉄道の動向に、今後も引き続き注目していきたい。

なお以下は、鳥塚亮社長のブログ。Bizスクエアに出演した際の話が書かれている。

昨日はBS-TBS

また右のリンクは、NHK WORLD-FAPANのえちごトキめき鉄道の体験レポート動画だ。
英語ではあるが、英語がわからなくてもけっこう楽しめる。

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