消えたダム湖と“第一”ダムの謎 ~姫川第二ダムを訪ねて~
姫川第二ダム 監査通路

 

 

 

姫川は、長野県北安曇郡白馬村の湧水を源流とし、新潟県糸魚川市を経由して日本海に流れ下る一級河川である。

 

紺色の線が姫川

 

高田河川国道事務所の姫川の概要ページには、姫川など河川の勾配を示すグラフが掲載されている。姫川は長さ60kmと短いが、勾配は黒部川などに匹敵する急峻さで、白馬岳など標高2000mを超える山々の間を流れ下る川である。

この急峻な地形に加えフォッサマグナ(糸魚川静岡構造線)地帯を通るため、流域は昔から土砂災害に悩まされてきたが、同時に勾配差を利用しての水力発電も盛んに行われてきた。

 

別記事で紹介した姫川第二ダムも、発電目的で建設されたダムである。

  

消えたダム湖

写真上部の第一姫川橋梁のすぐ南に姫川第二ダムがある。手前が姫川上流
Google 3D航空写真より

 

川の水を堰き止めるダムの上流側には、一般的に満々と水を湛えたダム湖というイメージがある。姫川第二ダムも建設当初は、上の航空写真にある水神宮橋あたりまで湖面の広がるダム湖だったようだ。

ところが、北アルプスの周辺の山々から運ばれてくる膨大な量の土砂が堆積し、ダム湖としての用をなさなくなってしまった。

今回訪問したのは4月半ばで、山からの雪解け水が多く流れ込むためなのか、上の航空写真よりはダム上流部の水は多く、ダム湖風の様相をみせていた。

 

 

姫川第二ダムの南側(上流)から撮影

 

上の写真を拡大したものが、下の写真だ。ダムのすぐ後ろ黄矢印の先に通(かよう)橋、青矢印の先にJR大糸線の第一姫川橋梁が見える。

 

中央にある桜は2分咲きといったところ。白馬村の春は遅い

 

 

 

次の写真はWikipediaに掲載されていたものだが、上流側の水量が少ないので3門あるラジアルゲートがすべて開いている。

 

2014/11/30に撮影された姫川第二ダムの写真
   Apple2000, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 

 

黄丸で囲った位置の下流側には、放水穴がある。今回訪問時、下流側から撮影した写真と比較すると、水位の違いが明らかだ。

 

右が放水穴。左のラジアルゲートも閉まっている

 

 

訪問時は中央のゲートのみから放流

 

 

ダムから放流された水は、減勢工(げんせいこう)で水勢を幾分弱めて下流へと流れていく。 

 

 

第一姫川橋梁と交差する姫川

 

 

川の水は透明感のある翡翠色

 

 

 

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姫川第一ダムはどこに?

姫川ダム管理所に祭られていた水神社

 

姫川第二ダムは、1935年(昭和10年)に姫川第二発電所とともに竣工。事業者は1937年(昭和12年)まで存在した安曇電気だったが、現在は中部電力が事業を引き継いでいる。

堤高が15m未満の重力式コンクリートダム(堰)で、最大出力は14400kWである。

姫川水系には多くの水力発電所があるが、中部電力が管理するのは次の5か所だ。

 

発電所名河川名出力(kW)運転開始年月
二股発電所南股川他52001930年5月
南股発電所南股川22001930年7月
姫川第二発電所姫川他144001935年10月
姫川第三発電所姫川122001955年7月
新楠木発電所楠木川22001989年5月

 

姫川“第二”ダムからおよそ10km下流に姫川“第二”発電所がある。またそのすぐ下流に姫川“第三”ダムと、およそ3km下流に姫川“第三”発電所がある。

 

 

 

 

姫川第三ダムは、もともと安曇電気が計画していたダムだが、最終的に中部電力に引き継がれ1955年(昭和30年)に完成した。

 

 

姫川第三ダム(上流側)2006/10/25撮影
Qurren, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

姫川第三ダム(下流側)2006/10/25撮影
Qurren, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

 

さて、「姫川第二ダム」「姫川第三ダム」を紹介したわけだが、では「姫川第一ダム」はどこにあるのだろうか?

今回調べた限りでは、第一ダムの存在を示す資料がまったくなかった。

でも絶対あったと思うのだ。そうでなければ、“第二”と名付けるはずがない。郷土史など相当深掘りすれば、「計画途中で頓挫した幻の姫川第一ダムがあった」というような事実が発見されるかもしれない!

  

 

最後に、姫川第三ダムの200m上流にある姫川橋を紹介する。1939年(昭和14年)竣工のRCローゼ橋だ。

個人的な好みとして、コンクリートの橋はそれほど萌えないのだが、この3連のポニーローゼ橋はたたずまいがとても美しい。

設計者は世界で初めて鉄筋コンクリートローゼ橋を設計したと言われている中島武氏で、姫川橋を含む長野県の5橋がRCローゼ桁群として土木遺産に認定されている。

 

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