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日光国立公園の西端に位置する丸沼ダムの秋は早い。10月下旬になると紅葉も終盤、アクセスのバスも運転終了してしまうものもある。10月の第3週、ぎりぎりのところで丸沼ダムを訪問してきた。
沼田駅から通学で満員のバスも、市街地を抜けるころにはガラガラに。階段状に土地が隆起した河岸段丘(かがんだんきゅう)を車窓に眺めながら、終点の鎌田営業所までバスはひた走る。
1時間ほどでバスは片品村の鎌田営業所に到着。本来ならここからバスを乗り継いで丸沼ダム(湯元方面へのバスに乗る)へ行く。ただ、今年はコロナの影響でバスが減便になっており次のバスまでかなり待つことになってしまう。仕方ないので、今回はタクシーで丸沼ダムまで向かうことにした(地元のタクシーは前日に予約済)。
丸沼ダムに到着
丸沼ダムへは去年も同じ時期に来ている。今回で2回目の訪問だ。前回大きな失敗をしたので、そのリベンジでもある。
上の写真は丸沼ダムに通じる道だ。立入禁止のチェーンがあるが、歩いて立ち入るのは許可されている。ここを道なりに歩いて行けば、丸沼ダムの天端(ダムの一番高い人の通れる場所)の近くまで行くことができるが、ダムの姿は真横から見えるのみ。ダムを正面から見るには別の道を行かねばならないわけだが、その道を前回見落としたのだ。
丸沼ダムの下流側、大尻沼の湖畔に降りていく道は、先ほどの丸沼ダムに続く舗装路の左側にある。看板が立っているので注意していればすぐにわかりそうなものなんだけど、なんで去年見落としたんだろう。
国道と湖畔との高低差は約45m。この道を一気に・・というか、いろは坂のようにくねくねと急崖の道を下っていく。
あいにくの小雨混じりの天気。樹々の葉が雨よけになり濡れることはなかったが、足元はあまりよくない。杖(トレッキングポールを1本持ってきていた)を使いながら慎重に降りていく。
目的の場所まであと少しというところで、降りてきた方向を見上げる。帰りはこれを一気に登るのか・・と思うと、げんなりする 笑
なんとか崖を下りきり、大尻沼の湖畔に到着。目の前には、さあどうぞと言わんばかりに筏(いかだ)が私を待っていた。
さあ、乗船
大尻沼湖畔に浮かぶ、この筏。丸沼ダムを正面から見られるようにと「丸沼を愛する会」の方々が作ってくれたものだ。過去の写真などを見ると、何度か作り直されていて、これは何代目かのもの。トム・ソーヤ号というネーミングがとてもいい。子供だけでなく大人だってわくわくする。
わくわくはするのだが、機敏さも運動神経もない私にとっては、ちゃんと操舵できるか緊張する。操舵とはいっても、ロープを引っ張るだけなんだけど、そうはいってもね。最初の一歩を筏の上に踏み出すと、重みがかかって筏がぐっと傾く。ちょっとビビる。
以前は桟橋もなく、水位によっては筏への乗り降りの際に足元が水没してしまうこともあったようだが、今はそんなこともない。「丸沼を愛する会」の方々のメンテナンスには本当に感謝したい。
一度、筏に乗ってしまえば、こんな私でもバランスさえ気を付ければ操作は簡単だ。ロープをゆっくり引けば、トム・ソーヤ号はゆるゆると進んでいく。失笑を買いそうだけど、まさに冒険してるんだぜ的な気分が味わえる。
眼前のバットレスに圧倒される
筏のロープを引っ張り、丸沼ダムが正面から見える位置までやってきた。堤高(ダムの高さ)は32.1mと、ダムの中ではそれほど高さがあるわけではない。しかし、当時は高価だったコンクリートを節約するため考え出された、水をせき止める遮水版とその水圧を支える擁壁(ようへき)を持つバットレス構造は見事の一言。1931年(昭和6年)竣工の丸沼ダムは、今もなお現役の貴重な土木遺産である。
バットレス構造の骨組み、10番までは目視できるが、その続きがあるのか筏の上からでは確認できない。
1年前、天端近くから撮影した写真を引っ張り出してみると、どうやら10番で終わりのように見える。
最後に、丸沼ダムの全景を(広角レンズでの撮影なので少し魚眼っぽく見える)。
ダムとは反対方向を見る。なんだかこんな景色を独り占めしてしまうのは、申し訳ないようだ。
名残惜しくはあるが、反対方向にロープを引いて桟橋にトム・ソーヤ号をつける。また来たいな。
カレーの前に取水堰
予想通り、50m近くの高低差を一気に登るのは大変だ(3回ぐらい休んで登ったのに)。国道近くまで戻ってくると、吐きそうになりしばらく動けない。
去年は時間の関係でダムカレーを食べることができなかった。そんなにこだわっているわけじゃないけど、今回はちょうど提供時間とのタイミングがあう。これは食さない手はないよね。
とはいえ、カレーの前にもう1か所立ち寄るところがある。大尻沼の水は下流の一之瀬発電所に送られているのだが、その水を取水する一之瀬取水堰が1kmほど先の国道沿いにある。
まずは歩いてそこに向かうことにする。
次の記事につづく
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