手作りいかだで初めて実感するバットレスの威容 〜丸沼ダム〜

  

  

日光国立公園の西端に位置する丸沼ダムの秋は早い。10月下旬になると紅葉も終盤、アクセスのバスも運転終了してしまうものもある。10月の第3週、ぎりぎりのところで丸沼ダムを訪問してきた。

沼田駅から通学で満員のバスも、市街地を抜けるころにはガラガラに。階段状に土地が隆起した河岸段丘(かがんだんきゅう)を車窓に眺めながら、終点の鎌田営業所までバスはひた走る。

 

JR上越線の沼田駅から、直線距離でおよそ35km。途中の鎌田営業所でバスを乗り継ぐ

 
 
1時間ほどでバスは片品村の鎌田営業所に到着。本来ならここからバスを乗り継いで丸沼ダム(湯元方面へのバスに乗る)へ行く。ただ、今年はコロナの影響でバスが減便になっており次のバスまでかなり待つことになってしまう。仕方ないので、今回はタクシーで丸沼ダムまで向かうことにした(地元のタクシーは前日に予約済)。
 

鎌田営業所とバス停。周囲にはダムカードがもらえる商工会館や道の駅などがあり、片品村の中核となる場所だ

 

 
 
 

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丸沼ダムに到着

国道120号沿いに丸沼ダムの入り口がある ☆クリックで拡大



丸沼ダムへは去年も同じ時期に来ている。今回で2回目の訪問だ。前回大きな失敗をしたので、そのリベンジでもある。

上の写真は丸沼ダムに通じる道だ。立入禁止のチェーンがあるが、歩いて立ち入るのは許可されている。ここを道なりに歩いて行けば、丸沼ダムの天端(ダムの一番高い人の通れる場所)の近くまで行くことができるが、ダムの姿は真横から見えるのみ。ダムを正面から見るには別の道を行かねばならないわけだが、その道を前回見落としたのだ。 

丸沼ダムの下流側、大尻沼の湖畔に降りていく道は、先ほどの丸沼ダムに続く舗装路の左側にある。看板が立っているので注意していればすぐにわかりそうなものなんだけど、なんで去年見落としたんだろう。 

 

丸沼自然遊歩道の看板あり  ☆クリックで拡大

 
 

国道と湖畔との高低差は約45m。この道を一気に・・というか、いろは坂のようにくねくねと急崖の道を下っていく。
 

遊歩道から湖畔をのぞきこむ  ☆クリックで拡大  

 
 
あいにくの小雨混じりの天気。樹々の葉が雨よけになり濡れることはなかったが、足元はあまりよくない。杖(トレッキングポールを1本持ってきていた)を使いながら慎重に降りていく。
 
 

大尻沼が近づいてくる。雨をものともせず釣り人が糸を垂れる  ☆クリックで拡大  

 
 
 
目的の場所まであと少しというところで、降りてきた方向を見上げる。帰りはこれを一気に登るのか・・と思うと、げんなりする 笑
 

上のほうに見えるガードレールは、国道120号

 
 

なんとか崖を下りきり、大尻沼の湖畔に到着。目の前には、さあどうぞと言わんばかりに筏(いかだ)が私を待っていた。

 
 

右手に見える白い建物が丸沼ダム  ☆クリックで拡大

 
 

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さあ、乗船

トム・ソーヤ号と名付けられた手作りの筏   ☆クリックで拡大

 
 

大尻沼湖畔に浮かぶ、この筏。丸沼ダムを正面から見られるようにと「丸沼を愛する会」の方々が作ってくれたものだ。過去の写真などを見ると、何度か作り直されていて、これは何代目かのもの。トム・ソーヤ号というネーミングがとてもいい。子供だけでなく大人だってわくわくする。
 

ルールを守って利用したい  ☆クリックで拡大  

 
 

わくわくはするのだが、機敏さも運動神経もない私にとっては、ちゃんと操舵できるか緊張する。操舵とはいっても、ロープを引っ張るだけなんだけど、そうはいってもね。最初の一歩を筏の上に踏み出すと、重みがかかって筏がぐっと傾く。ちょっとビビる。
  

軍手の忘れ物が

 

以前は柵付きの手すりだったが、現在はこのような枠組みに

 
 
 

以前は桟橋もなく、水位によっては筏への乗り降りの際に足元が水没してしまうこともあったようだが、今はそんなこともない。「丸沼を愛する会」の方々のメンテナンスには本当に感謝したい。

一度、筏に乗ってしまえば、こんな私でもバランスさえ気を付ければ操作は簡単だ。ロープをゆっくり引けば、トム・ソーヤ号はゆるゆると進んでいく。失笑を買いそうだけど、まさに冒険してるんだぜ的な気分が味わえる。
 

向こう岸にも桟橋がある  ☆クリックで拡大

 
 
 

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眼前のバットレスに圧倒される

バットレス構造の丸沼ダム 樹々に埋もれて見えないが、左手には1番と2番の骨組みがある  ☆クリックで拡大

 
 
筏のロープを引っ張り、丸沼ダムが正面から見える位置までやってきた。堤高(ダムの高さ)は32.1mと、ダムの中ではそれほど高さがあるわけではない。しかし、当時は高価だったコンクリートを節約するため考え出された、水をせき止める遮水版とその水圧を支える擁壁(ようへき)を持つバットレス構造は見事の一言。1931年(昭和6年)竣工の丸沼ダムは、今もなお現役の貴重な土木遺産である。

 

右手には10番までの数字が確認できる ☆クリックで拡大

  
 
バットレス構造の骨組み、10番までは目視できるが、その続きがあるのか筏の上からでは確認できない。
1年前、天端近くから撮影した写真を引っ張り出してみると、どうやら10番で終わりのように見える。
 

2019年10月、天端の横から撮影

 
 

最後に、丸沼ダムの全景を(広角レンズでの撮影なので少し魚眼っぽく見える)。
 

☆クリックで拡大

 
 
ダムとは反対方向を見る。なんだかこんな景色を独り占めしてしまうのは、申し訳ないようだ。

音もなく雨が降り、湖畔の樹々はまもなく冬支度を始める  ☆クリックで拡大

 
 

名残惜しくはあるが、反対方向にロープを引いて桟橋にトム・ソーヤ号をつける。また来たいな。
 

桟橋に足をかけると反動で筏が逆方向に動き、ひやりとする

 
 
 

カレーの前に取水堰

今度はロープの内側から国道方向を臨む

 
 

予想通り、50m近くの高低差を一気に登るのは大変だ(3回ぐらい休んで登ったのに)。国道近くまで戻ってくると、吐きそうになりしばらく動けない。

去年は時間の関係でダムカレーを食べることができなかった。そんなにこだわっているわけじゃないけど、今回はちょうど提供時間とのタイミングがあう。これは食さない手はないよね。
 

鎌田営業所の近くの道の駅「尾瀬かたしな」でダムカレーは食べられる  ☆クリックで拡大

 
 

とはいえ、カレーの前にもう1か所立ち寄るところがある。大尻沼の水は下流の一之瀬発電所に送られているのだが、その水を取水する一之瀬取水堰が1kmほど先の国道沿いにある。

まずは歩いてそこに向かうことにする。
 

その昔、溶岩で堰き止められてできた丸沼と大尻沼。大尻沼の西端に一之瀬取水堰がある

 
 

次の記事につづく

 
 
 
 

コチラの記事も参考にどうぞ

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