大半の方がご存知ないはず。すごくマイナーだもの。
三軒家樋管は、川越市にある文化財で、明治に作られた土木遺構である。
長いこと生きてくると、だいたい自分の好みとか興味の対象が限定されてくるけど
ここ1年ぐらい、先端的なインフラ構造物や(←これは以前から興味があった)
過去の遺物のような、土木的建造物に妙に萌える自分に驚いている。
人間、いくつになっても新しい自身の発見ってあるものだ。
中でも特にいいなぁと思うのが、古い煉瓦。
調べてみると、そういう古い煉瓦に詳しい方というのがたくさんいらして、
そういう方たちの博識に驚いたり感心したりしきりである。
浅識の私でも、100年ぐらい昔の職人さんたちが積み上げた煉瓦をみると
間接的に当時の作業する音や、エネルギーのようなものが伝わってくるような気がする。
三軒家樋管は明治43年(西暦1910年)に作られた樋管で、びん沼川につながっている。
小雨そぼ降る中、訪ねていくと、
ごく普通の住宅地の中、青々とした田んぼの脇道の奥、
当たり前のように三軒家樋管がそこにあった。
こちらは、水が出ていく側で、吐口(はきぐち)と呼ぶらしい。
吐口は2連のアーチになっていて、アーチを囲むように3重に煉瓦が積み上げられている。
両サイドの壁も、アーチの上の煉瓦も、長い煉瓦と短い煉瓦を一段ずつ交互に積み上げている。
「ふふふ、イギリス積みだね」
雨の中、煉瓦をみてほくそ笑む中年女は、さぞ不気味に映るだろう。
周囲には誰もいないけど 笑
樋管の上には説明板がたてられている。
興味がなかったときは、きっとこういうものも目に入らなかったんだろうな
反対側にまわってみる。
こちらは、吞口(のみぐち)という。
土木に疎い私には、吞口・吐口という呼び名もなんだか新鮮だ。
ちょっと擬人化感覚だよね。
吞口は大きなアーチが1つで、アーチ周りの煉瓦は4重だ。
こうした水の出入り口の形状が違うというのは、
間口を広く水を集め、2手に分けて水流を制御するということだろうか。
土木学会が出している
『 日本の近代土木遺産(改訂版)―現存する重要な土木構造物2800選』をみると
こうした小さな遺構があちこちにある。
それから古い煉瓦の残る場所というのも、行ける範囲内でけっこうある。
できればこつこつと尋ねてみたいと思う、梅雨寒の候なのだった。