奥多摩湖に映える鮮烈な赤いアーチ 峰谷橋を訪ねて

 

 

 

JR青梅線の終点、奥多摩駅を降りて5~6kmほど国道411号(青梅街道)を西に進むと、東京都の水がめ小河内(おごうち)ダムがある。ダムの西側には東西に細長い山間のV字谷を水で満たした、ぎざぎざとした形の奥多摩湖が広がっている。

小河内ダムは戦時中に建設が一時中断したが、その後再開し、1957年(昭和32年)11月に竣工した。旧小河内村はダムの底に水没し、村内の主要道路は付け替えとなった。

この時期、わずか2年(1956~1957年)の間にそれぞれ橋梁形式の異なる5つのアーチ橋(峰谷橋・麦山橋・坪沢橋・鴨沢橋・深山橋)が架設された。峰谷(みねだに)橋は、その中でももっと東に位置する美しい赤いアーチ橋である。

 

 

 

 

 

 

峰谷橋を訪問

Googleマップ 航空写真より

 

 

上の写真は峰谷橋付近の航空写真だが、ご覧の通り峰谷橋を真横から撮影するのは難しい。

下の地図で示したように、国道411号のトンネルを抜けたあたりの適当な場所から、なんとか全景の撮影ができそうなのだが、残念ながら現在は工事中でピンク●の部分は立ち入りができない(車のみ通行可能)。

 

トンネル出口の上部(紫●)が工事個所  Googleマップより

 

 

仕方がないので、上の地図の緑線の方向で撮影したものが下の写真だ。

 

 

北側から峰谷橋を望む

 

目に痛いくらいの鮮やかな赤いリブアーチが、迫ってくる。写真で見ても美しいなと思ったけど、肉眼でみると迫力が全然違う。本物ってなんでもそうなんだろうけど。

 

 

橋門工には、紅葉柄と橋名を刻んだ大きなプレートが取り付けられている

 

規則正しく並ぶ照明灯が華を添える

 

道路幅は6m、左右に1.2mの歩道がついている。現物の橋を見てはじめて、レトロなデザインの照明が連なってることに気が付く。山間部の橋で、こういう凝ったデザインをあまり見たことがない。

 

 

 

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中路式か下路式か

CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

 

橋にはいろいろな分類がある。上の図は、Wikipediaに掲載されている通行位置による橋梁形式の分類だ。峰谷橋は、ぱっと見は下路式のアーチ橋にみえる。実際、土木学会の歴史的鋼橋集覧には「下路2ヒンジブレースドリブアーチ」と掲載されており、下路式に分類されている。が、今回記事を書くにあたり最も参考にさせていただいた論文「東京奥多摩町・青梅街道の昭和前期における橋梁 の進展に関する研究」では、「鋼中路式ブレースドリブアーチ」で中路式となっている。

そんなのどっちでもいいのでは?と思われる方もいらっしゃるだろうけど、性格上こういう細かいことが気になって仕方ない。

  

 

上の写真、黄点線●のところで、アーチの下弦が橋の下にもぐっている。その橋下を撮影したものが、下の写真だ。

 

 

西側から峰谷橋北端を望む

  

上の写真を見る限り桁がアーチの中部にある。下の一般図をみても、やはり中路式なのかなと推測するが、わたしのレベルではここまでしかわからない。

 

歴史的鋼橋集覧 峰谷橋の一般図より

 

 

 

観光地としての景観に配慮

電灯につながる電気ケーブルも赤く塗られている

 

資料(※1)によれば、峰谷橋が架設される前は、小川橋という木造の方杖橋があった。(方杖橋は、主桁の下側に斜めの方杖を配置して桁を補強する構造で、渓谷のような場所によく建設された)

峰谷橋が新しく架設されたときも、上の写真にあるような照明灯はついていなかったようだ。下の画像は架設当時のものだが、照明灯がついているようには見えない。

 

「#昭和の東京シリーズ 第1回 小河内ダム ~ダムに沈む小学校~(昭和32年9月)」東京都チャンネル動画より

  

ちなみに、橋の色も、当初は赤ではなかったと思われる。少なくとも2000年に撮影された峰谷橋は、白っぽい色をしていた。

照明と合わせて歩道橋や橋門工のプレートなども、あとから追加で改修したようだが、調べた限りその時期は確認できなかった。

いずれにしても、景観をそこなわない華やかな雰囲気のデザインを採用することで、ただの通行のみならず観光地に架かる橋の使命を担っているようにも感じる。

 

 

 

リベット接合の妙

目立つ場所に橋の銘板がある

  

実際に橋を渡ってみた。

 

峰谷橋は戦前にもよく見られたリベット接合の橋なので、橋のそこかしこに連続する半円球の姿が見ることができ、リベット好きにはたまらない。

 

 

  

 

無数に並ぶリベット

 

 

 

橋を渡りきり、南側から峰谷橋を振り返る。

 

  

  

 

 

橋を渡りきるとすぐ、短いトンネルがある。このトンネルも、峰谷橋が架橋された同じタイミングで建設されたものだ。

 

 

峰谷橋の南側にある馬頭トンネル

 

 

 

馬頭トンネルの右側にある急な坂道を登っていくと、少し樹々に遮られるが峰谷橋を俯瞰できる場所がある。

 

西側から峰谷橋を望む

  

峰谷橋の橋長は125m、支間長は123mで竣工当時としては国内最長支間の鋼中路式ブレースドリブアーチ橋だったとのこと。

姿のよく似たもので、宮崎県の尾鈴橋がある。ライズ(アーチの高さ)が低く骨組みの美しい様子が地元では恐竜に例えられているというが、この峰谷橋もまさに恐竜の寝姿にも似る独特の風格をにじませている。

 

 

 

奥多摩駅からバスで

 

峰谷橋へのアクセスは、奥多摩駅から出ているバスも利用できる。こちらは2021年11月時点での西東京バスの時刻表だが、【奥09】【奥14】ほかいくつかの系統で峰谷橋のたもとまで行くことができる。【奥09】は峰谷どまりなので本数が少ないが、さらに西へ行く鴨沢西行きの【奥14】と合わせると、1時間に1本以上ある。1日3本くらいしかバスがないような場所によく行く私にとって、これはもうほぼ都会だ 笑。

奥多摩は、車で来る方も多いだろうが、公共交通機関でも十分アクセス可能な場所なのだ。

 

ただ、今年の7月18日に発生した峰谷橋付近の土砂崩れにより、現在も国道411号線の一部区間で片側交互通行となっている。状況は変化していくので、奥多摩訪問の際は事前に交通状況を確認してから訪問されるようお願いしたい。

 

 

🔶参考資料 ※1 東京奥多摩町・青梅街道の昭和前期における橋梁 の進展に関する研究
      

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