馬島4灯台の「影の番長」ナガセ鼻灯台、崩れやすい急坂攻略がカギ

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

 

到達:2024年3月
難易度:■■■□(中級)

 

「日本一灯台密度の高い」馬島(うましま)の4灯台を探索した。難易度の高そうなところから片付けることにして、まずナガセ鼻灯台(ながせはなとうだい、愛媛県今治市)に向かう。馬島の東端にある灯台だ。

 先達のみなさんのネット記事(いつも参考にさせていただいています、ありがとう)を読むと、急な坂道がちょっとやっかいなようだ。

馬島4灯台の位置。青線は歩いた経路(国土地理院)

 馬島がどこにあるか、なぜ灯台密度が高いのか、今治から馬島への行き帰り行程、などはこちらで書いている。

 

 今治駅前からのバスを降り、エレベーターで地上に着いたところから話を始めよう。トイレのある小さい広場から階段をおりると、道が二手に分かれている。これを右に行く。左に行くと住宅地を抜けて、馬島港に出る。

 しまなみ海道の橋をくぐり、島の北半分に入る。大型車が楽々すれ違えるほど広くりっぱな道路だ。島からしまなみ海道に乗り入れるときの連絡路のようだ。ちなみに、馬島には住民や関係者しかクルマの乗り入れができない。

 聞こえるのは、しまなみ海道を通過する車の音と、鳥の鳴き声だけだ。

 広い道が左にカーブするところで、右に向かう細い道に入る。

 ゆるゆると上り坂の細い道の先に、さらに上り階段が見える。

 この階段をのぼる。この左は木がないちょっとした草地になっているのだが、次に行く来島洲ノ埼灯台への入口になっているので、あとでまたここに来る。エレベーターを下りてからここまでは5分ちょっとぐらいかな。

 階段をのぼりきると、しまなみ海道の太い橋脚がある。海面を見ると、複雑な潮の流れがありそうな感じだ。

 

 橋脚を回り込んで島の南半分に戻ると、のぼっていく階段が正面にある。

 灯台に行くためだけの階段だと思うのだが、かなりしっかり作られている。ただ、年月が経って、ところどころくずれ始めているから、のぼりおりには気をつけた方がいい。

 50段ちょっとで階段が終わると、左に下る道がある。ただ、直進する方向も道のように見える。右側の柵も続いているし。

 この先には行かなかったが、一応道になっていて、高さ80mの山を越えると、エレベーターの乗り口のところに出るようだ。国土地理院の地図には道が描かれているし、Googleのストリートビューにはそこを歩いた人の写真もある。

 ただ多少遠回りにはなるが、いま来たルートの方が歩きやすいだろうと思う。

 

 というわけで、左に曲がり、いよいよナガセ鼻灯台に向けて坂を下りていく。

 このロープは、斜めになっている岩のためだろう。表面が乾いていれば、使わなくてもなんとかだいじょうぶだ。坂道もまあまあ普通に下りられる。

 電柱のあるところで、ナガセ鼻灯台がとうとう見えた! まだだいぶ下の方だ。

 しかも、この電柱のところから傾斜がすごく急になる。地面は土のかたまりや石が主体で、足をつくと多少崩れる感じがある。粘土質の滑りやすい土とは違った歩きにくさだ。

 

 ここだ。この坂を普通のスニーカーで下るのがかなり厳しそうなのは、いくつかのネット記事に書かれていた。というわけで、用意してきたアイゼンをスニーカーに装着。

 必要なのはこの先の5分だけ(往復で10分)。そのためにわざわざ買って、さらにもってくる必要があるかどうかだけど、なくてもなんとかなるとは思う。ただ、スニーカーのままではすべってしまう可能性が高いし、ころび方や場所によってはケガをしかねない。個人的には、これがあることで歩きやすい気がしたし、安心感が大きく違った。

 この先はこんな感じ。写真ではどれぐらいの角度かがわかりづらいのだが、写真上端に見える釣り船(?)のようすから想像してほしい。

 ここはどんな靴であっても、ロープのお世話にならないとなかなか下りられない。

 通りすぎたあと、振り返って見上げるとこんな感じ。帰りの上りはもっと大変だった。

 途中、道が左右二手に分かれていた。右は先に見える砂浜に下りるようだ。コンクリートの階段があるが、この道の用途がわからない。しまなみ海道ができる前、灯台の保守はこの浜に船で来ていたとか?

 灯台のある方向を意識していれば、迷うことはないだろう。左だ。

 アイゼンを付けてから5分もかからないぐらいか。コンクリートの階段が現れる。ここでアイゼンの役割は終わり。面倒だけどスニーカーから外す。

 

 仮設階段のようなところを下りていく。ナガセ鼻灯台のすぐ左、中渡島にある中渡島灯台も小さく見えている。

 最後はコンクリートの道を渡る。左右とも急な崖なのでこの道はありがたいが、ヒビが入っているな。

 

 やっとナガセ鼻灯台に到着。しまなみ海道の馬島バスストップから唯一見えなかった灯台だ。エレベーターを降りてからだと20分ちょっとぐらい。

 初点灯は1961年(昭和36年)3月。光源はLEDに替えられている。

 ほとんどすべてが直線で構成されているところが、なかなか潔い。建設しやすさを追求した結果とも言える。

 明治初期に造られたブラントン式灯台以降、「灯台は曲線」というイメージが刷り込まれていたと思う。この時代になって、ようやくそれから解き放たれたということかもしれない。「昭和モダン」?

 

 海側に回るときれいな景色で気持ちがいい。さすが瀬戸内海だ。

 ここが、“難所”来島海峡(くるしまかいきょう)のうち、馬島の東側の航路だ。西側航路に比べて、通る船が少ないように思えるが、それは時刻や潮の流れで変わるのかもしれない。

 見る人も通る船も少ない東側でひっそりと働いているナガセ鼻灯台は、馬島の「影の番長」と言っていいだろう。

 

 正面には無人の中渡島にある中渡島灯台(なかとしまとうだい、愛媛県今治市)が間近に見える。この灯台は馬島にある灯台よりもずっと古く、1900年(明治33年)4月初点灯という、影の番長の大先輩だ。

 ドーム型の灯籠に円柱型の灯塔。いかにも「明治の灯台」という形だ。

 左はしまなみ海道。

 右は南方向、今治の市街が見える。

 

 景色を堪能したところで、そろそろ引き返そう。またアイゼンを付けたり外したりして、橋脚を回り込み、階段を下りる。

 右にある、木がないちょっとした草地が来島洲ノ埼灯台への入口だ。

 つづきはこちら。

 

 

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