秩父鉄道「よりい」駅がタイムスリップ感を醸し出すワケ~群馬県片品村へ2~

 

寄居駅に降り立った直後から、なんだかひどく懐かしい感覚がわきあがってくる。
都心から離れた駅ということももちろんある。でもそれだけじゃない。
駅舎全体の雰囲気もあるが、最も既視感が強かったのが、天井近くにある駅名が表示された看板だ。

余談になるが、上の写真の看板の正式名称がわからず、ネットで調べてみた。
最初に「駅の行き先表示板」で検索してみると、「発車標」がヒットした。
しかしこれは違う。発車標は、急行が何時何分に何番ホームにくるなどが行単位で電光掲示板に表示されるアレである。

次に、ヒットしたのが「行先標」だ。これだ!と思ったら、やっぱり違う。行先標は電車などの側面に掲げられているものだ。

上の写真にある、私たちが日常的に目にするソレは、「駅名標」と呼ばれるものだった。長いこと生きてきたけど、そんな名前があることを初めて知る。

話は戻り、この駅名標の使われている文字の書体が、その懐かしさの原因ではないか・・と思ったのだ。幼い頃、祖父母といっしょに乗った列車から眺めた駅の標識と同じだからなのか、古い駅なので類似のものが残っていたのか・・などと、あとからいろいろ考えた。

この駅名標について少し調べてみると、「鉄道文字」というニッチながらとっても魅力的な世界があることを知った。(鉄道文字の世界については、書籍や記事などがヒットするので、興味ある方はそちらをご参照いただきたい。例えば「「鉄道文字」の奥深い世界を知っていますか」では その道のプロ 中西あきこさんのインタビュー記事が載っている)
古くから使われていたのは、「 すみ丸ゴシック 」というゴシック体の角を丸くしたような書体だ。手書きで書く職人さんが書きやすい文字ということもあるようだ。

寄居駅の駅名標は、このすみ丸ゴシックに似てはいるが、もう少し細身である。当初私が感じた、古い書体による懐かしさとは言い切れない気がしてきた。

駅構内を見渡すと、駅名標以上に既視感のある眺めが目に飛び込んでくる。

 

天井のゆるやかな三角屋根と標識のコラボがなんともいい感じ

 

天井のゆるやかな三角屋根と標識のコラボがなんともいい感じ
まず時計がいい。年季の入った、点灯しない時計が、古くから何年もこつこつと時を刻んできた実直さを訴えかけてくる。
そして横にある電車時刻表とその右横にある宣伝してるんだか消しているんだかわからない「郷土の銘酒」の裏で消えかかっているような蛍光灯。

いいなぁと思ったあとで、ふと気づく。懐かしさの既視感の源は、この光源なのだと。
冒頭に掲げた駅名標も蛍光灯だ。(たぶん)
アクリル板(?)のパネルを通して 伝わってくる、蛍光灯による明度の低い明るさのムラが、古い記憶のひだにぴったり収まるような、そんな妙に心地のよさを感じる要因となっているのだ。

こんな来たこともない駅の標識ひとつで、何十年も前、祖父母に肌をよせたときのぬくもりまで思い出すのだから、人の記憶というのはすごいものだと思う。

ということで、さらに旅はつづく

 

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