流域の安全を担う岩手県一関市の矢櫃ダム

 

 

 

ここ数年、7月の前半になると日本のどこかで集中豪雨があり、大きな被害が出る。「50年に一度」が毎月のように発生することもある。

昔の気象モデルはあてはまらなくなってしまった・・と思いつつも、ふと過去の歴史をみれば、昔から多くの災害はあった。国土が狭く急峻な地形の多い日本は、治水の整わない古き時代から水害との闘いの歴史がある。

岩手県一関市にある矢櫃(やびつ)ダムは、こうした歴史の中で建造された防災ダムである。なお、同じ岩手県の雫石町にも北上川水系の矢櫃ダムがあるが、これとは別物である。

 

矢櫃ダムは氾濫を繰り返していた磐井(いわい)川の洪水対策として、1953年(昭和28年)に竣工した。国道342号線のほぼ直下にある越流型アーチダムは、晴天であればセルリアンブルーの磐井川の水が、緩やかに弧を描いて滝のように26mの落差で流れ落ちる。防災目的であることを一瞬忘れてしまうほどの美しさだ。

 

 

 

 

矢櫃ダムの近くまでやってきた。  

 

一関市中心部を背にして、北方向を望む。左手が磐井川上流

 

磐井川に架かるのは「昇仙橋」だ。上の写真の右手側に同じ名前の人道橋がある。

 

 

 

 

昇仙橋のたもと、磐井川の上流側に近づいてみる。この直下に、ダムが見えるはずだ。

 

 

 

  

見えた。

 

少しだけ、ほんの少しだけ身を乗り出して写真を撮る。言葉に表せないほど、ぞくぞくする。空を映す水面と、白糸のように流れ落ちる水流の中に吸い込まれてしまいそうだ。

 

動画

  

 

 

ダムの全体を見るために、下流側にある人道橋へ移動する。

  

国道に対して斜めに位置する歩行者専用の昇仙橋

 

国道の昇仙橋は磐井川を斜めに横切っているが、人道橋のほうは川に対して90度の角度で、国道より少し低い場所に架けられている。

 

 

落下する水の飛沫で虹が見える

 

 

 

国道から下流方向を望む。人道橋もなかなか美しい

 

こちらの歩行者専用の昇仙橋がいつ作られたものか、調べてみたがわからなかった。

 

 

 

「磐井川若井原砂防堰堤」の看板がある

 

2つの昇仙橋の間に、古い看板があった。この地は「若井原」であったことから、「矢櫃ダム」の前は「磐井川若井原砂防堰堤」と呼ばれていたのだろう。

 

 

 

 

人道橋から矢櫃ダムと磐井川上流を望む。赤い橋は、国道の昇仙橋

 

昭和前期(昭和15年頃)には、矢櫃ダム建設の計画があったが、太平洋戦争開戦の直前でもあり着工には至らなかった。戦後になり、1947年(昭和22年)のカスリーン台風、1948年(昭和23年)のアイオン台風により、甚大な被害がもたらされ、その3年後、ようやく着工のはこびとなったのである。

【矢櫃ダム】
 
着 工: 1950年(昭和25年)
竣 工: 1953年(昭和28年)
堤 体: 越流式アーチダム
堤 高: 26m
堤 長: 83.3m
堤体積: 4241立方m

動画

 

 

 

人道橋より下流方向を望む

 

 
平時であれば、夢のように美しい景観の矢櫃ダム。砂防&防災ダムとして、今後も磐井川流域の安全を守り続けてほしい。

 

 

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