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取材でやってきた男鹿半島の入道埼灯台。前編では灯台の上部、灯室に登ったところまでお伝えした。
後編は、灯室の上にあるレンズを見学するところからスタートだ。
★前編はコチラ
●普段はみられないレンズが眼前に
灯室の天井にあたる部分は、鉄でできたドーナツ型でスリット状になっている。その上にガラスがのせられているので、上部の光がそのまま灯室に差し込んでいる。
鉄製の梯子を登り、灯ろうの中に入る。
(通常の参観では灯ろうの中に入ることはできません。許可をいただいて撮影しています)
灯ろうの中は狭く、レンズと壁の間は人ひとりがやっと通れる程度のスペースしかない。
入道埼灯台は15秒に1回光る。レンズは2面あるので、30秒で1回転しているということだ。
●フレネルさんが作ったフレネル式レンズ
入道埼灯台に設置されているのは、第三等大型2面フレネル式閃光レンズ。レンズの高さは1576mmで大人の背丈ほどの高さがある。
灯台のレンズは昔は凸型レンズを使用していたが、重量が重くなるだけでなく、あまり大きなレンズを作ることができなかった。
フランス人物理学者のオーギュスタン・ジャン・フレネルは、薄いレンズを組み合わせて、1枚の凸型レンズと同じ性能を実現することに成功。同様の構造を持つレンズは、考案者の名前をとってフレネルレンズと呼ばれるようになった。
2面のレンズの間には光源があり、現在はメタルハライドランプが使われている。
名残惜しいが、そろそろ下の灯室にもどらなければいけない。
しかし、この床のガラス、強化ガラスだとは思うが割れてしまったらどうしようと、ずっとヒヤヒヤしていた。割れなくてよかった。
●危険を知らせる照射灯
灯室の一画に、大きなサーチライトのようなものがある。入道崎の600mほど北にある小さな島「水島」を照らす照射灯だ。
ちなみに、こちらのサイトで、夜間の照射灯の美しいビーム写真を見ることができる。
●回廊からみる絶景
灯室の壁にある分厚い扉を開けると、回廊にでることができる。
回廊からは北側にある水島がよく見える。肉眼でははっきり見えないが、島の中央に標柱が立てられており、照射灯はここに光をあてて周囲を航行する船舶に島があることを知らせている。
回廊から見上げると、灯台の頭頂部がみえる。
回廊の南側にきた。
入道崎の先端、鳥になって陸地を見下ろしているような、そんな気分になる。
さて、以上で灯台内部の見学はおしまいだ。名残を惜しみつつ展示室に向かう。
●琥珀色のフレネルレンズが?!
1998年(平成10年)に建設された灯台資料展示室は、片流れ屋根の外観を持つ建物だ。入道埼灯台を訪れたなら、ぜひこの展示室も見学していただきたい。
入道埼灯台のレンズは一般公開されておらず、目の前で見ることができないが、それと同格のレンズがこの建物の中に展示されているからだ。
しかも巻き上げ機+水銀槽+フレネルレンズという状態で起立しており、その存在感に圧倒されること間違いない。
展示されているレンズは、青森県深浦町の艫作埼灯台(へなしさきとうだい)で以前使われていたもので、入道埼灯台と同じく三等大型フレネルレンズである。
すっくと立ちあがったレンズは、中2階の高さにある廊下から観察することができる。展示室の建物の屋根が片流れになっていたのは、このレンズをじっくりと鑑賞できるようにするためだったんだ・・と一人納得する(全然違う理由かもしれませんが 笑)。
入道埼灯台のレンズは翡翠色だったが、艫作埼灯台のレンズは琥珀色。いずれも甲乙つけがたい美しさだ。
当時使われていた、分銅を巻き上げる巻き上げ機も見ることができる。現物を見るまでは、巻き上げ機はもっとシンプルな造りかと想像していたが、予想以上に手の込んだ感じがした。資料としても土木遺産としても、とても貴重なものだと思う。
展示室には他にもいろいろと展示されていた。やはり現物を間近にみると、その大きさを実感するし、実際に現役で働いていた時の様子を想像すると感慨深いものがある。
密度の濃い展示室の見学を終えて、外に出る。
入道崎の突端のほうに回り込んで、灯台を振り返る。
先ほど目の前にあったレンズが、今は遠く、日が落ち明かりを灯す時を静かに待っている。
取材協力:秋田海上保安部、公益社団法人燈光会