

到達:2025年1月
難易度:■■□□(初級)
一番気をつける必要があるのが、道迷いでも悪路でも崖でもなく、犬なのは、刈又埼灯台(かりまたさきとうだい、徳島県阿南市)ぐらいだろう。
刈又埼灯台がある椿泊(つばきどまり)へのアプローチもなかなか厳しいのだが、2年ぐらい前に、ぐっとラクになったことが判明した。
刈又埼灯台は紀伊水道に面した、徳島県最東端近くにある。刈又埼(国土地理院の地図では燧崎)、蒲生田岬(かもだみさき)、伊島付近はだいぶ入り組んだ地形になっていて、かなり難所の海域らしい。

東へ張り出した蟹の爪のような2つの半島、蒲生田岬(南側)の反対側に椿泊(つばきどまり)という集落があり、刈又埼灯台があるのはその先だ。

椿泊は、ハモ、アワビ、しらすなどの漁業が盛んな漁師町だ。戦国時代には阿波水軍の本拠地だったところで、細い道の両脇に歴史的な価値のある家並みが長く続いている。上記の地図では、家屋を示す赤い四角が密集しているのがわかるだろう。
国道55号を曲がり、椿泊に行くまでの道も一部が細く、クルマのすれ違いが難しいところがある。そこを路線バスや水産会社の大型トラックまで走っているので、運転には気を使う。
だが、駐在所やバスの終点を過ぎると、道の細さは半端なくなる。クルマがすれ違ったりUターンしたりする場所はまったくない。
さらに戦国時代の名残か、兵が攻めて来にくいように道が折れ曲がっているので、すれ違うどころか、通るだけでも大変だ。軽自動車ですらヘタすると角でこすってしまうという。
どこかかなり手前でクルマをとめ、片道30分ぐらいは徒歩でないと難しいな。と思いながらGoogleマップのストリートビューを見ていたら、なにやら新しい道ができているのに気づいた(複数日付の写真のうち一つだけなので、気づきにくい)。
従来の堤防より海側に「臨港道路」というのが作られていたのだ。Googleマップでも国土地理院の地図でも、航空写真だとはっきりわかるが、どちらもまだ“道”として認識されていない。前掲の地図で青い線を引いた部分だ。徳島県の資料(https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/818299.pdf、https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/937769.pdf)によると、2022年度に開通したようで、2025年度以降にさらに手前まで伸ばす予定だという。
刈又埼灯台を訪問した先人の記事を読んでも、みなさんアプローチに苦労されていて、臨港道路を使った例は見つからなかった。ラクさせてもらってすいません。
というわけで、臨港道路の終点でクルマをとめた。
写真左端から旧道に出る。
すると2、3分で行き止まりの民家に着く。これは早い。堤防と民家の間が、灯台への入口だ。
「犬に近づかない!!」という大きな看板の向こうに猫がいるが、犬は…。
次の瞬間、思いっきり吠えられた。秋田犬のエルくんだそうです。ところがカメラを向けると視線を逸らしてしまう。
そりゃ、家に入っていくも同然だから、灯台(と神社)に行く人はみんな吠えられるんだろうな。看板があるということは、噛まれた人がいたのかもしれない。
エルくんに近寄らないように気をつけて通りすぎると、堤防が少し続いていて…。
堤防が終わると、刈又埼灯台がもう見えた。
そしてのぼりが急になっていく。のぼった先に灯台の塔頂と赤い鳥居が見える。
鳥居は龍宮神社のもの。いまでもきちんと維持管理されているようだ。阿波水軍の時代からあるのかもしれない。
そこから振り返れば、もう刈又埼灯台だ。クルマをおりてから5分ぐらい。しかし、木に隠れてほとんど姿が見えない。
灯台の反対側に回り込むと、少しだけくだっていける場所がある。
そちらから見上げることで、ようやく全体像が捉えられた。
反対側の海はこんな感じ。手前に見えるのが無人島の舞子島、その右が有人島の伊島だ。
このときはかなりの強風が吹いていて、あおられて10メートルぐらい下の海面までころげ落ちてしまいそうだった。
この強風と伊島については、蒲生田岬灯台の方でもう少し詳しく書いている。
ほかに灯台を写せる場所もないので、引き返すことにする。
民家近くまで戻ると、気配を察した秋田犬エルくんがこっちを注視していた。
その後、彼に吠えられながら脇を通過し、刈又埼灯台のクエストは終了した。一番の難関はエルくんだった。邪魔してゴメン。