上田電鉄別所線は、上田と別所温泉をむすぶ、長野県上田市の鉄道路線だ。
別所線は上田駅をでるとすぐに、千曲川(ちくまがわ)を越える。この千曲川に架かる鉄道橋が千曲川橋梁で、1924年(大正13年)竣工の古い橋である。
2019年に発生した台風19号により、千曲川は濁流となり左岸側(別所温泉側)の護岸が大きく崩れた。橋の一部が落橋し、別所線は不通となっていたが、復旧工事を進め2021年3月に全線開通となったのである。
落橋したトラスの8割が再利用されたと聞き、その姿を見るために現地を訪れた。
訪問したのは2022年9月下旬。空は底抜けに青く、歩いていると日差しが肌に痛い陽気だった。すでに全線開通してから1年と半年経っているが、遠目で見る限り千曲川橋梁は昔と変わらない姿をみせていた。
右岸側の踏切を渡る。こちら側には大きな被害はなかったので、変わりはないようだ。
下の動画は、同日撮影したもの。豊かな千曲川の流れを実感できる。
(再生すると、川の流れる音が出ますので音量にご注意ください)
下流側にある県道77号の橋をわたり、対岸に向かう。
千曲川橋梁はプラットトラスという、一般的によく見かけるトラス橋だが、コリジョンストラット(collision strut)という支柱がある(下図の黄色丸)。
あまり詳しく調べていないが、古い橋の一部にある補強材のようだ。
次の写真は、台風19号襲来からちょうど1年経過したもの。5連目の落橋したトラスは撤去され、崩れた左岸側の護岸工事が完了した状態だ。
県道の橋を渡り終え、左岸側にやってきた。新しいトラスとして美しく甦り、しっかりとした新しい橋台も設置されている。
落ちたトラスは一度分解され、8割ほど再利用されて新しい5番目のトラスとして架設されたと聞く。
たしかに間近で見てみると、リベットではなく高力ボルトで部材が接合されていることがよくわかる。
上流側の左岸から、あらためて千曲川橋梁を眺める。地元の赤い橋として長年愛されてきた橋の復活は、この土地に何の関わりもない私ですら、心から祝いたい気分になる。
下り列車が通過する動画をご覧いただき、この記事の〆としたい。