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☆「旅する言葉」篇ロケ地で語る無人駅 2023年大分むぎ焼酎「二階堂」CM 特別篇 も公開しました
数十秒の動画が、まるで一編の映画を鑑賞したような余韻を残すことがある。大分むぎ焼酎二階堂のCMはまさにその代表格で、感性に訴えかける映像詩が遠い記憶を呼び起こす。
2022年度の作品、テーマは「水のため息」だ。30秒のCMの中に12のシーンが登場する。すべて九州地方の水の風景を扱ったものだ。
それぞれの水の風景が実在する場所を公式サイトで紹介しているが、詳しい場所はわからない。
ここでは時系列に、土木的エッセンスを加えた実際のロケ地を紹介していこう。
小石原川 福岡県朝倉市千手
CM冒頭、緑豊かな河原に川の水が穏やかに流れている。画面奥から手前に流れてくるのは小石原川(こいしわらがわ)、このまま南下して一級河川の筑後川に合流する。
映像は小石原川に架かる千手橋(せんずばし)近辺から、北方向に撮影した風景だ。
ストリートビューと見比べるとだいぶ様子が違うようにも見えるが、画面中央右にある2つ窓のある白い横長の建物は同じものだろう。
野鳥川 福岡県朝倉市秋月
野鳥川とは名前からして風情ある。古くは、豊前国小倉藩と筑後国久留米藩を結んでいた秋月街道の一部ルートに沿うように、この野鳥川は流れている。近くには17世紀に築城された秋月城跡もあり、左手の壁は城下町風の趣を残している。
南新川 福岡県うきは市吉井町
あえての薄暗いシーン。南新川に架かっている橋だが、少しカーブした太鼓橋風になっている。実はこの橋の右手(地図では北)素盞鳴神社(すさのおじんじゃ)がある。太鼓橋は人間界と神々との境界線に流れる川に架かる橋。参道でもある神聖な場所への入口なのだ。
ちなみに下のグーグルマップは車道側からみたものだが、CMでは対岸から撮影したと思われる。
通潤用水 小笹円形分水 熊本県上益城郡山都町
「円形分水」という言葉になじみのない方もいるだろう。地域によって「円筒分水」「分水工」など様々な呼び方があるが、主に農業用水として使われる水を分ける装置の呼び名だ。
古くから日本各地で水争いが絶えない歴史があったが、決められた割合で公平に水を分配する円形分水の登場で水争いも丸く収まったとのこと。
近くには放水で有名な土木遺産の通潤橋がある。
角間天秤 福岡県うきは市吉井町
角間天秤も、水を平等に分けるために考え出された土木設備だ。CMの映像では水が流れすぎていて見えないが、水路に3つの石があり、それにより水を公平に分配するというもの。
ストリートビューで一番見えやすい角度を選んでみたが、3つの石のうち2つが写っているがおわかりになるだろうか。
第五玖珠川橋梁 大分県⽇⽥市天瀬町
深い緑に鮮やかな赤い列車が通る。久留米と大分を結ぶのは久大本線(きゅうだいほんせん)。豊後中川駅と天ヶ瀬駅の間は、鉄道路線と玖珠川(くすがわ)が4回交差し4つの鉄橋が架かっている。
映像にでてくる鉄橋は、そのうちの1つ「第五玖珠川橋梁」だ。映像で見ると鉄道橋の下をくぐる道がある。地図では確かに道があるが、ストリートビューがないので正確な確認できないが、車が通れるのだろうか?
(埼玉県にある沈下橋は車も通行可能なものがあったが、この橋はどうなのかわからない)
ちなみに、下で紹介したストリートビューは一番橋が見えやすいものを選んだため、最新ではなく2021年4月のものとなっている。
三十田橋 福岡県京都郡みやこ町
三十田と書いて、「みとだ」と読む。
平成筑豊鉄道田川線の崎山(さきやま)駅から、北に150mほどのところにある人道橋だ。今川が増水の時には流されることもあるのかもしれないが、そのたびに、地域の人たちが架け直してきた歴史がある・・そんな橋なのではないかと思う。
三連水車 福岡県朝倉市菱野
2017年7月に発生した九州北部豪雨により、国指定の史跡「朝倉三連水車」も被災したが、現在は復旧されたようだ。堀川用水には他にも水車があり、水路好きなら一度は行ってみたい場所である。
甲佐町やな場 熊本県上益城郡甲佐町
「やな場」は竹で編んだ簀(す)で鮎をつかまえる場のことだ。甲佐町によれば、もともと1632年(寛永九年)に作られたと思われていたやな場だが、近年に古文書が発見されたことにより、加藤清正(1562~1611)の時代にもあったことが確認されたとのこと。
大濠公園 福岡県福岡市中央区大濠公園
福岡市の中心部にある市民の憩いの場。公園の名前は、福岡城の外濠として城の護りとなっていたことに由来する。
須崎橋 福岡県福岡市博多区須崎町
映像のラストは、博多湾近くの須崎橋からの眺め。源流から流れ出た水が、九州の地を旅しながら最後に海に流れ着く。
CMのコピーは「あの日 旅立った場所に、私は流れ着く。」
帽子をかぶった中年紳士は、須崎橋から果たして何を想うのだろうか。
実は、今回1つだけ紹介しきれていない場所がある。
熊本県阿蘇郡南阿蘇村にある上川原水路だ。こちらは、わかり次第、追加更新したいと思う。
1年に1~2回ペースでのCM公開だが、次はどんなCMなのだろうか。
九州を知らない私が九州を知る、そんな一つの手がかりとなるCMなのである。
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