砂防ダムPRの赤坂小便小僧を訪ねてみたら 千と千尋の世界に迷い込んだ話

 

 

 

埼玉県の西部、秩父地域の東側にある越生(おごせ)町の山の中に、ユニークな砂防ダムがある。砂防ダムの手前に人口の木のオブジェがあり、その木の枝に「赤坂小便小僧」とよばれる像が据えられている。ダムの上流で取水した沢の水をその小便小僧が放水するという、前代未聞のパフォーマンスをしているのである。

  

左の枝には赤坂小便小僧、右の枝には謎の手招きする猿がいる

 

 

このパフォーマンスの仕組みは、現地に設置されていた看板の説明図(下図)を見るとよくわかる。赤坂川の上流にある取水口から取り込んだ水は導水路を経由、約20mの落差を利用して放水する仕組みとなっている。その放水口を、公園などでよくみられる「小便小僧」像にすることで、人々の関心をひき、ひいては砂防ダムに対しての関心・理解を高めることを目的としている・・と思われる。

 

 

 

 

 

この赤坂沢砂防ダム、埼玉県が砂防ダム事業のPRを兼ねて1991年(平成3年)に造ったものだ。

 

 

 

 

これは、直接この目で確かめにいくしかない。ちょうど雨量の多い梅雨の時期、豪快な放水のパフォーマンスを見るために、赤坂沢砂防ダムを訪ねていくことにした。

 

 

後姿に、そこはかとない哀愁が漂う

 

 

 

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赤坂沢砂防ダムへのアクセス

 

 

赤坂沢砂防ダムに公共交通機関で訪問する場合、最寄り駅は越生だ(JR八高線または東武越生線)。そこから徒歩で7km前後。舗装された道が続くので、歩けない距離ではない。が、通常は車やバイクでの訪問が多いだろう。

 

 

 

駐車場にはトイレもある。マップに描いた赤矢印方向に赤坂沢砂防ダムがある

 

上のマップは、赤坂沢砂防ダムの少し北にある「あじさい山公園」に掲示されているものだ。左端中央に駐車場と書かれているが、ここに車をとめてハイキングがてら歩いて行くのもいいだろう。赤坂沢砂防ダムやあじさい山公園に続く道は「あじさい街道」と呼ばれ、時期がくれば街道沿いに咲く紫陽花を楽しめる。

 

 

 

駐車場の中央から東側を臨む。正面に見えるのがトイレ

 

駐車場中央から西側を臨む。右手の道路があじさい街道

 

駐車場はかなり広い。紫陽花シーズン週末ともなれば、それなりに混みあうかもしれない。

 

それでは、この駐車場から赤坂砂防ダムまで、周辺の様子を紹介しながら歩いて行こう。

 

 

あじさい街道

 

 

 

しばらく歩くと、「川への降り口」という標識がある。あじさい街道に沿って麦原川が流れており、こんな道しるべをみたら、寄り道しないわけにはいかない。ただし、川へ降りる道はすべりやすいので、十分な注意が必要だ。

 

 

 

 

川の近くまで降りてくる。木々に囲まれ大小の岩の間を小さく渦を巻きながら水が流れていく。

 

下流方向

上流方向

 

 

再びあじさい街道に戻ってくる。今年は紫陽花の花の付きが今一つのようだ。
 

 

 

麦原川弁財天

 

 

 

 

 

駐車場から7~8分歩くと、左に分岐する道が見えてくる。いくつもの標識が立っているので見逃すことはないと思うが、「800m先」と書かれた縦書きの看板と、小さめの「赤坂小便小僧」、2つの標識が目印だ。

 

標識があるところを左折する

 

 

これから歩いて行く道を航空写真でも見ておこう。赤坂沢砂防ダムが造られた立地や、どんな道を歩いて行くかが少しイメージしやすくなるかもしれない。

黄色の丸が歩いた道   Google 航空写真より

  

 

お天気にもよるが、高い樹々がみっしりと覆いかぶさっている道は、かなり薄暗い。何か違う世界へ果て無く続いて行くような、そんな雰囲気がある。

私は歩いて行ったが、もちろん車でそのまま進んでいくこともできる。赤坂沢砂防ダムの先に小さな集落があるので、後ろから来た郵便配達のバイクが、ゆっくりと私を追い越していった。

 

 

 

まっすぐな道を、何かに招き入れられるように進んでいく。

 

 

 

 

やがて道は大きく右にそれていくが、突き当りに壁のようなものが見えてきた。

赤坂沢砂防ダムに到着である。

 

 

 

 

 

写真でみた印象よりも、猿も小便小僧もずっと小さいものだった。木は人工物だが、苔むしていい感じに枯れた雰囲気があり、遠目に見ると本物の木のようにも見える。想像していたよりはずっと、放水はおだやかな感じだった。「頑張ってお仕事しています!」という印象だ 笑

 

 

湿度が高く、本堤は美しい苔で覆われていた  ☆クリックで拡大

 

 

 

しかし、小便小僧のけなげなパフォーマンス以上に目を奪われたのが、砂防ダムの本堤である。とにもかくにも、正面からの写真をご覧いただきたい。

 

 

 

本堤の上部中央には「水通し」と呼ばれる、水が越流する部分があり、その直下は苔の色が濃くなっている。そしてその下にある3つの水抜きが、目と口、そうまるで顔のようなのだ。典型的なシミュラクラ現象で、もうどうしたって顔にしか見えない。

 

目に該当する水抜きからは水が流れ落ち、まるではらはらと泣いているように見える。

 

 

 

この顔には確かに見覚えがあった。なんだったろうか・・?

そうだ、千と千尋の神隠しにでてくる「カオナシ」の顔によく似ているのだ。映画ではカオナシは無表情だったが、ここのカオナシは違う。泣いているようでいて、どこか微笑んでいるようでもある。自然の怖さや厳しさとともに、どこか訪れるものを癒してくれるような、不思議な空間がそこにあった。

 

小便小僧にも驚くが、この本堤を泣き顔に見立てた作りには圧倒される。こんなウィットに富んだアイデアを採用した埼玉県はすごいなぁ。

 

 

ちなみに、訪問した日は6月の中旬で前日は雨だったが、小便小僧の放水も、カオナシの涙も勢いはゆるやかだった。定期的に行われているメンテナンス直後や、気象条件が揃うと放水は水平に飛び、カオナシは号泣する。埼玉県の公式ページに写真が掲載されているので、ぜひご覧いただきたい。

 

最後に、現地で撮影した2つの短い動画をご覧いただいて、今回のレポートの〆としたい。

 

  

  

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