無人じゃなかった吉里吉里駅

 

 

 

 

三陸鉄道リアス線の中に、吉里吉里(きりきり)駅というちょっと変わった名前の駅がある。

 

 

 

駅を含めた一帯が、岩手県大槌町の吉里吉里という地名であることから、吉里吉里駅と命名されたのだろう。

 

 

赤線で囲まれた場所が大槌町吉里吉里だ

 

 

 

 

三陸鉄道と並走する国道45号から少し離れた住宅街のど真ん中にある駅は、慎重に地図をみていないとすんなりたどり着けない場所にある。

下の写真は吉里吉里駅前の広場だが、鉄道の線路も見えなければ駅舎も見えず、そうと知らなければここが駅前とは気づきにくい。

 

 

駅前の広場。正面の階段を上がればホームがある

 

 

東日本大震災の津波被害により、当時JR東日本の駅だった吉里吉里は、2011年3月に営業を停止。2019年3月に宮古から釜石までの区間が三陸鉄道のリアス線として復旧したことに伴い、吉里吉里駅も営業を再開した。

下の写真は旧駅舎だが、写真の右端にホームに上がる階段が写っている。つまり、震災前には現在の駅前広場に駅舎があったのだろう。2019年に営業再開のタイミングで、小さな待合室がホームに新設されている。(もともとホームに待合室があったかもしれないが、詳細は不明)

 

吉里吉里駅の旧駅舎。2012年に解体された
  Cassiopeia sweet, Public domain, via Wikimedia Commons

 

 

 

ホームへ行くには、数十段の階段を上るしかない。足腰の弱い方には、なかなか厳しい高低差だ。

 

階段を上がって左手に待合室がある

 

 

吉里吉里駅は1面1線。訪問時は1月、ホームには雪が残っていた。

いま階段をあがってきた駅の南東は高低差があるが、北西側は線路と同じ高さの道がある。構内踏切を作って北西側にも駅入り口を作れば助かる人もいるのでは?と思いつつ、いろいろ難しい問題もあるのだろう。

 

 

宮古方を撮影

 

釜石方を撮影

 

 

ホームの端、釜石寄りまで歩いてきて、反対方向を振り返る。中央に見える茶色とベージュのツートンの建物が小さな待合室である。

 

 

宮古方を撮影。ここからは見えないが、真正面の方向に吉里吉里海岸がある

 

 

近隣の吉里吉里海岸は、砂浜を歩くと「キリキリ」と音がするらしく、鳴き砂の浜と呼ばれているらしい。本当にキリキリと聞こえるのかわからないが、一度は訪ねて実際に音を聞いてみたいものである。

 

 

ホームにある駅名標

 

 

 

ちなみに、下の写真はWikipediaに掲載されていた2019年当時の吉里吉里駅の写真である。

2022年1月に撮影した写真と何かが違う。

 

 

2019年の吉里吉里駅  Ty19080914, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 

 

 

こいつら このこたちだ (⌒∇⌒)

 

 

待合室の前で豊漁に沸く猫たち

 

 

駅訪問時は、この木彫りの人形たちがなぜここにあるのかをよく理解していなかった。

大槌湾にある蓬莱島は、ひょっこりひょうたん島のモデルという説があり、放送作家の井上ひさし氏が原作者の一人であると言われている。小説家でもある井上ひさし氏の「吉里吉里人」という小説と何か関係のあるキャラクターなのだろうか?などと、とんちんかんなことを訪問時に思っていた。(小説は未読である)

帰宅後、改めて調べてみると、まったく思っていたのとは違う事実が明らかになった。

「三陸鉄道を勝手に応援する会」という市民団体が、震災前の2010年から駅に木彫りの動物たちを寄贈する活動をしていたのだ。

しかも単なる木彫り人形じゃあない。「動物駅員」としてなのである。

 

僕たち、皆さんをお迎えする駅員なんです

 

 

2019年7月20日、11番目の設置駅として吉里吉里駅に動物駅員が設置された。 

設置直後の猫も鮭?も、ぴかぴかで木の香りがしそうな様子だが、三陸の風雨にさらされて色合いの変化した今の木彫りの駅員たちも、なかなかの風格がにじみ出ていると思う。

 

 

吉里吉里駅は、正式には無人駅である。が、この駅には動物駅員がいる。

三陸鉄道のスローガン『笑顔をつなぐ、ずっと・・・』にあるように、動物駅員が関わる人たちの笑顔を生むような、そんな存在であるのかもしれない。

 

 

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