夕暮れにともる灯り 家路をいそぐ天王橋

 

 

 

10月の終わり、岩手県の中西部を中心に1泊2日の旅をした。宿泊地は花巻市である。花巻市には多くの温泉地があるが、県外者には「花巻温泉」が一番聞き覚えがある温泉街だろう。

今回はその花巻温泉の南にある志戸平(しどたいら)に宿泊した(志戸平温泉も広義で花巻温泉郷と呼ばれている)。

ホテルに到着したのは午後3時過ぎだったが、そのホテルのすぐ横に、なんと一連の小さなトラス橋が架かっていたのだ。まったく事前情報なしの出会いだったので、そらもうテンション爆上がり。

「天王橋」という名前の橋だが、おそらく名前はほとんど知られていない(他の地区にも天王橋という名前の橋はあるが、この地区の橋はほとんど検索してもヒットしない)。

 

 

 

 

チェックインをすませ、部屋に入る。窓からは先ほどみたトラス橋が見える。暗くなる前に橋を見に行くことにした。

 

ホテルから南東方向を望む。目の前に流れるのが豊沢川

 

 

宿泊したホテル志戸平は、県道12号沿いに建っている。岩手県花巻市を起点としたこの県道は、野越え山越え秋田県大仙市まで続いている。

県道の西には北上川水系の豊沢川が流れている。山深い温泉地なので、県道から豊沢川を渡ると湯口天王(現住所)という小さな集落があるのみである。天王橋は、この集落と県道をつなぐ橋なのだ。

 

 

天王橋に車で行くには、ホテルの手前(花巻寄り)で分岐した左側の道を進む。橋と県道は数mの高低差があるので、一気に下る感じだ。

ホテルのすぐ横には、橋に続く外階段があるので、徒歩ならこの階段を使ってもいい。ただし、恐ろしく急なので上り下りは注意が必要だ。

 

階段下から県道を見上げる。左手にはホテルがある

  

 

下の画像は、県道から分岐した道から、天王橋を見たストリートビュー。2013年に撮影されたもので、冒頭の写真と比べると塗装がかなり剥げているので、直近8年のどこかで再塗装されたのだろう。

 

中央右手には、先ほど降りてきた階段が見える

  

 

橋に近づいてみる。

 

豊沢川の左岸から天王橋をのぞむ

 

橋の銘板

 

1963年(昭和38年)竣工、橋長57m、幅員4mの下路ワーレントラスである。

 

 

橋を渡ってみる。上流方向には、宿泊地のホテルが間近に見える。

  

橋から上流方向を望む

 

 

今度は逆の下流方向を見てみる。

 

橋から下流方向を望む

 

下流方向にある赤いハンドルの取水施設は、新田頭首工(新田堰)だ。上流にある豊沢ダムから続く豊沢川には多くの堰(せき)があり、農業用水の取水や水位のコントロールなどを行っている。

  

県道から橋を渡った対岸、下の航空図でみると、赤線で囲まれている部分が湯口天王地区だ。これをみれば、地区の大半が山林であり、天王橋はすぐ近くの集落との連絡橋という役割が強い。ただし、橋から1km弱南西に薄衣の滝という観光名所がある。こちらへの最短アクセスとしても、天王橋は重要な役割を担っているのだろう。

 

黄色矢印が天王橋 赤★が薄衣の滝

 

 

橋を渡りきり、県道方向を振り返る。

全国各地にある地味なトラス橋なのだが、なぜか心惹かれるものがある。

 

豊沢川の右岸から天王橋を望む

  

 

そう感じるのは、橋の上部についている照明灯によるところが大きいように思う。

  

     

 

 

県道側と中央、2つのみ灯っている照明灯。

どこか暖かく、おかえりなさいと言っているような、名前さえ知られていない小さな橋が半世紀以上の時を経て今もここにある。

 

 

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