スコットランド北東部のモレイ地方を流れるスペイ川。スペイ川の川沿いには「スペイサイド」と呼ばれる多くの蒸留所が立ち並ぶ地区がある。クライゲラヒー(クライゲラキ)は、そのスペイサイドの中心部にある村で、古くからスコッチウィスキーの歴史とともに歩んできた場所でもある。
村と同じ名前を持つ、スペイ川に架かるクライゲラヒー橋(Craigellachie Bridge)もまた、古い歴史を持つ鋳鉄製の橋だ。
スコットランドで最古
クライゲラヒー橋が作られたのが1814年。設計したのは、後にイギリス土木学会の初代会長を務めたトーマス・テルフォード(Thomas Telford)である(以前紹介したポントカサステ水路橋も、彼の設計だ)。石積みの橋では難しい場所に架設するために考え出された設計で、当時は革新的な橋だったという。
・橋長 45.7m(150フィート)
・幅員 5.5m(18フィート) ※注1
・高さ 10.0m(33フィート) ※注2
※注1 幅員(ふくいん)は、橋の横幅の長さ
※注2 水面からの最大値
1963年から1964年にかけて大規模な改修がなされたが、そのころは普通に車両も通行できる橋だった。その後、バイパスができ、1972年に車両通行止めとなった。
下の画像はクライゲラヒー橋を空撮したものだが、緑矢印の先に見えるのがバイパスの国道A941である。
クライゲラヒー橋は鋳鉄製のアーチ橋と、3つの石橋で構成されている。上の画像で言えば、左側の鋳鉄製のアーチ橋に続くなだらかなアプローチが右側にあるが、このアプローチが3つの石橋部分となる。
上の画像の赤矢印の場所を地表から撮影したものが、下の写真である。
クライゲラヒー橋を下から撮影した写真を見ると、橋台の上部が少し傾斜していて、4つのリブ(アーチ)が橋台に垂直に設置されていることがわかる。
また、クライゲラヒー橋について書かれた以下の説明文には、アーチライズ(円弧の高さ)が20フィートで、リブの厚みが2.5インチであることなどが書かれている。が、最後の「seven pieces」が何を指しているのかわからなかった。リブをよくみてみると、中が×になっている四角い枠が5個1セットで一つの部品になっているようにみえる。この部品が7つ連続してアーチリブを形成している。説明文の「seven pieces」とは、このことを言っているのかもしれない。
The main 150 feet span is a lozenge lattice spandrel cast iron arch with a rise of 20 feet. The four lattice arch ribs are 2-1/2 inches thick and 3 feet deep each cast in seven pieces.
Invention & Technology https://www.inventionandtech.com/content/craigellachie-bridge
橋のたもとには、石積みの中世風の塔があり、クライゲラヒー橋のビジュアルに華を添えている。
スペイサイドの蒸留所
先にも書いたが、スペイサイドには多くの蒸留所がある。
クライゲラヒー橋のすぐそばには、クライゲラヒ蒸留所(John Dewar & Sons Distillers)がある。スコッチウィスキーの銘柄「ホワイト・ホース」の原酒製造で名高い蒸留所だ。
上のストリートビューを見てもわかるように、蒸留所の壁は換気のために開閉できるようになっている。換気のタイミングによっては、中にある蒸留窯を外から見ることができる。
クライゲラヒー橋の写真を何枚も見ていると、特に浅瀬などではスペイ川の水の色が茶色っぽいことに気が付く。この茶色は、ピートが溶け出した色だという。ピートとはスコットランド北部の野草や水生植物などが炭化した泥炭のことで、スコッチウィスキーの香りづけなどに欠かせないものだ。
最後に3分弱の動画を紹介して本記事の〆とする。クライゲラヒー橋とスペイ川、美しいスコットランドの情景をお楽しみいただければと思う。
参考資料
・「たまさぶろのBAR遊記」様 本場スコットランド蒸留所探訪2.【クライゲラキ編】
・スコットランド・クライゲラヒ村におけるウィスキーツーリズムの現状 著 飯塚遼 氏