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乗降者数が極めて少ない無人駅には「トイレ」がないところもある。が、ありがたいことに多くの無人駅にトイレが設置されている。
首都圏の駅のトイレなどは、だいたいどこでも似たようなものだが、ローカル線無人駅のトイレとなると、それなりに味わいのあるものがあったりする。
例えば、こんな感じだ。
●飯給駅(小湊鉄道)
五井(千葉県市原市)から上総中野(千葉県夷隅郡大多喜町)の区間を走る小湊鉄道線は、古い駅舎やのどかな風景が人気のローカル線だが、ユニークなトイレが多くある。中でも飯給(いたぶ)駅(千葉県市原市)のトイレは、「世界一」としてメディアでもよくとりあげられているので、ご存知の方もいるだろう。
何が世界一かといえば、その「広さ」である。
言葉で説明するより、実際のトイレをご覧いただくほうが話が早い。
扉をあけて中に入ると、円状の敷地の奥にある便座と目が合う。
近づいてよくみると、ガラス張りだが扉がついている。
にしても、落ち着かない。これが、自由というやつなのか。
●養老渓谷駅(小湊鉄道)
養老渓谷駅(千葉県市原市)は観光客が多く訪れるということもあり、トイレも巨大だ。全体にシックな色合いなのは、小湊鉄道のトイレのコンセプトカラーなのかもしれない。
●上総鶴舞駅(小湊鉄道)
上総鶴舞(かずさつるまい)駅(千葉県市原市)は、1925年(大正14年)に開業した当時の駅舎が残されている。ひさしの造形などが同じ大正時代に開業した新潟県の市振(いちぶり)駅によく似ている。
そんなレトロな上総鶴舞駅のトイレもまた、古くて新しい不思議な雰囲気を醸し出している。先にでてきた飯給駅のトイレを作ったのと同じ設計事務所と聞けば、なんとなく納得だ。
●風合瀬駅(JR五能線)
秋田県能代(のしろ)市の東能代から青森県南津軽郡田舎館村(いなかだてむら)の川部までを結ぶ五能線も、風光明媚な日本海の絶景が車窓から眺められることで人気のローカル線だ。風合瀬駅(青森県西津軽郡深浦町)は普通列車しか止まらず周辺に目立った観光地もないため、海沿いの駅舎もひっそりとしている。
トイレは駅の待合室の横に、これまたひっそりと設置されている。車窓からの撮影なので、はっきりとは言えないがトイレの入り口付近は舗装されていないように見える。
波の音を聞きながら、ここで用を足すというのも、風情があってよいかもしれない。(冬は寒いだろうね)
●鰺ケ沢駅(JR五能線)
秋田県「わさお」で有名になった、同じく五能線の鰺ケ沢(あじがさわ)駅(青森県西津軽郡鰺ヶ沢町)。とりたてて駅舎に特徴があるわけでもないのだが、ホームに面したトイレ壁のペイントが、なんだか地元愛に満ちていてほっこりする。出港しようとしている「くまげら」と「橅(ぶな)」は、リゾートしらかみの愛称と同じだ。
※2020年6月8日にわさおは永眠したとのことで、ご冥福をお祈りいたします。
●土合駅 (JR上越線)
群馬県利根郡みなかみ町にある土合駅は、上りと下りのホームが距離も高さも離れた場所にあるユニークな駅だ。下りホームから上りホームがある地上にでるには、462段の階段を上っていけなければならない。
幸いなことに、トイレはホームの一画に設置されている。もし、この場所にトイレがなかったら・・と思うと、想像するだけで怖い。
もっとも、同じくトンネルの中にある新潟県の筒石駅のトイレは地上にあるので、考えたくもないが、ホームで万が一催したときは必死に300段近くの階段を上りきらねばならない。
●アプトいちしろ駅(大井川鉄道)
オクシズとも呼ばれる静岡県静岡市北部の山間地を南北に走る大井川鉄道は、観光列車として人気が高い。アプトいちしろ駅では、この先の急勾配を登るために列車の最後尾に電気機関車が連結されることから、乗客はいったん列車を降りてその様子を見学するのが恒例だ。
しばらく停車することもあり、この駅のトイレで用をすます乗客も少なくない。
●閑蔵駅(大井川鉄道)
大井川鉄道の終点近くにある閑蔵(かんぞう)駅(静岡県静岡市葵区)は、これぞ秘境といった趣がある。待合室もホームも簡素なものだが、バス路線に通じた道があるため、別棟のトイレが設置されている。
今年はクマの出没が全国的に多いと聞くので、こうした山の中の駅も油断できない。
●神戸駅(わたらせ渓谷鉄道)
わたらせ渓谷鐡道のわたらせ渓谷線は、桐生(群馬県桐生市)から間藤(栃木県日光市)までをつなぐ路線である。神戸(ごうど)駅は、この路線のちょうど中間あたりに位置する。見ての通り、春先の美しさは桃源郷のようで、レトロな駅舎とあいまって、一度は訪れる価値のある場所だ。
トイレは駅舎とは別棟に設置されており、古い駅舎の雰囲気を踏襲したデザインとなっている。
駅もいろいろ、トイレもいろいろ。
造りだけでなく、当たり前なのだが、周囲の環境によっても雰囲気は大きく左右されるものだな・・とこの記事を書いていて改めて認識した次第である。