天然の要害、秋深まりゆく吾妻峡①

吾妻(あがつま)川は、観光地である「吾妻渓谷」から西方向におよそ40kmの付近、上田市(長野県)と嬬恋村(群馬県吾妻郡)の境にある鳥居峠を水源としている。
吾妻郡を東に流れ下り、渋川市で利根川に合流する利根川水系の川である。

吾妻渓谷は、吾妻川の渓谷でおよそ3.5kmの区間を言う(下図の①から⑦まで)。
そのなかでも、渓谷の川幅がとても狭くなっている900mほどの区間を「吾妻峡」と呼び、国の名勝にも指定されている。
吾妻峡は別名「八丁暗がり」とも言われていて、こちらの名称のほうがちょっと粋な感じがする。
由来は総延長が八丁(一丁は約109m)であることからだ。

 

吾妻渓谷全体図 クリックして拡大

 

吾妻渓谷全体も素晴らしいのだけれど、やはりこの地に来たなら「吾妻峡」を堪能できるところまで足を踏み入れなければ意味がない。(楽しみ方は人それぞれ。あくまでも今の自分としては・・である)
しかし事前にリサーチしてみると、いわゆるハイキングコース(上図の青と緑の破線)は相当手ごわいらしい。
「遊歩道」というイメージに騙されてはいけないというのは、前回の丸沼でだいぶ学習したけれど、 吾妻峡では自治体のほうもだいぶ現状を把握していて、それなりの覚悟と準備がないとハイキングコースは止めてね的な注意喚起をしている。
調べた範囲ではこの時点で特にハイキングコースが通行禁止にはなっていなかったが、まぁそれも行ってみないとわからない。
その都度現場判断することにしよう。

なお、吾妻渓谷全体の散策マップは、いろいろネット上にあって、バージョンの新旧も混在していて、どれを参考にするか少し迷うところがある。
例えば、シンプルに紅葉を楽しみたい人には、吾妻線の旧線情報なんて不要だけれど、廃線跡を追いたい人には絶対欲しい情報だろう。

吾妻町の観光情報サイト、まちづくり推進課が何種類かのガイドマップを作っている。
目的によるが、例えば次の2つなどが特に参考になりそうだ。

登山・ハイキングのパンフレット
歩くことに特化してルート情報が欲しいならこのマップが一番かもしれない

★吾妻渓谷のパンフレット 表面 裏面
こちらは、吾妻渓谷へのアクセスやお店情報など、総合的な情報が多く掲載されている(裏面にはマップもあり)

それでは前回からの続きだ。
ふれあい大橋を渡り天狗の湯の前(上図①)から、まずは吾妻峡の入り口「猿橋」(上図③)を目指す。

 

ふれあい大橋を振り返ったショット。向かって左の「公園散歩道」へ進む

 

 

公園の散歩道はご覧の通りよく整備されていて、歩くにはとても快適だ。
でも当然だけど人工的というか、吾妻じゃなくてもどこにでもありそうな風景ともいえる。
もしかして、このままずっとこんな道なのかな?と思ったけど、さすがにそんなことはなかった。

 

 

航空写真の下図をみるとわかりやすいが、公園散歩道はオレンジ色のルートだけ(東方向にもあるが今回は歩かない)。
すぐに一般道にでて短い雑木林を抜けると、吾妻峡橋のたもとにでる。

公園散歩道のすぐ南は果樹園。色づいたリンゴがたくさん。台風で落下しなくてほんとによかった

 

 

こちらが吾妻峡橋からの眺め。
さきほどのふれあい大橋から、おそらく700m程度上流にきただけだが、ずいぶん景色が違ってくる。

 

 

吾妻峡橋を渡り左折し、旧国道145線に合流する。
一般車両はもう通ることはできない。歩行者のみ通行可である。

 

国道沿いに比較的平坦な遊歩道があり、こちらをずっと歩いていくこともできる

 

 

このあたりは、旧国道145線と旧吾妻線と並走しているので、少し高い位置に旧吾妻線の路線が見え隠れする。
落葉している時期ならきっともっとはっきり見えるはず。
日本一短いトンネルとして有名な樽沢トンネルもこの先にあるのだが、今回は撮影できなかった。
えっと、すっかり(存在を)忘れてしまっていたんだけどね 笑

 

薄暗くて見えにくいが画面中央にトンネルがある

 

左手に「猿橋」がみえてきた

 

 

徹底的に調べたわけではないので、断言はできないが、この地に橋が架けられたのは江戸時代になってからのようだ。
道も整備されていない、これだけの山と渓谷の中で橋を架けるというのが如何に困難であったかは容易に想像がつく。
「猿橋」という名前の橋は江戸時代から大正時代にかけて実在しており(現存していない)、その名前を引き継いで2017年3月に新しい猿橋がこの場所に架けられた。
景勝地だけに景観に配慮した作りになっているのはご覧の通りである。
木造橋のように見えるが、実際は表面に木材を使っているだけなので、あくまでも木造風である。
まだ木材など若々しすぎて、映画のセット風というか、いまひとつ景観になじんでいないような気もするが、これから年月をかけて吾妻峡色に変わっていくのだろうか。

ちなみにこの橋は、八ッ場(やんば)ダム建設事業に係わる水源地域整備計画事業の一つとして建設されている。

 

 

当初の八ッ場ダム建設ではここも建設対象地になっていたようだが、実際には600mほど上流に建設されることになった。
実際にこうした景色を目の当たりにすると、素直に、この景観が残ってよかったと思う。
ただ、上流部にできたダムによる水量調整がもたらす吾妻渓谷への影響はこれからの話。

 

猿橋からの吾妻川

 

横から見ると木造じゃないことはすぐわかるが、土台の塗装を土色にして周囲になじませている

 

 

さて、このまま猿橋を渡らずに旧国道145線の遊歩道を歩くという選択肢もある。
が、お天気にも恵まれたことだし当初の予定通りハイキングコースを歩いて鹿飛橋までいくことにした。

猿橋を渡り、わりあいと整備されたつづら折りの道を少し登っていくと、右手にハイキングコースの入り口が見えてきた。

ハイキングコースに一部通行止めの期間があると書かれている

 

 

この入口から鹿飛橋までのハイキングコースの距離は直線距離にしたら500mもない(下図)。
もちろんつづら折りの山道なので直線距離ではないんだけれど、それにしたって「けっこう行けちゃうじゃん?」と思う人もいるだろう。
確かに距離はそれほどでもない、でもなめてはいけない。
そんな道行きを次回、紹介する。

天然の要害、秋深まりゆく吾妻峡②」につづく・・

 

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事