海外の水路橋には100年、200年どころか、2000年近く前に建造された水路橋も奇跡的に現存していて、ヨーロッパの土木建造物の歴史に圧倒される。
日本ではどうだろう。国内の水路橋として真っ先に思い浮かぶのは、熊本県にある通潤橋(つうじゅんきょう)だ。先の記事でも取り上げたイギリスのポントカサステ水路橋のように、橋からの放水が観光客にも人気である。
今回紹介するのは冒頭の写真にも登場した、岩手県住田町にある水路橋だ。通称「葉山めがね橋」と呼ばれている。1931年(昭和6年)にかんがい用水のための水路橋として架橋された。
この水路橋、歩行者用の通路に沿ってかんがい用水専用の細い水路がある。水の流れる様子を目の前で見られるのが大きな特徴だ。
葉山めがね橋は、国道340号と気仙川(けせんがわ)が近接する一画にあり、国道340号から見える場所にある。
葉山めがね橋を囲む一帯は、小さいながらも葉山めがね橋水園として、憩いのスペースとなっている。
案内板のすぐ右側に葉山めがね橋がある。下の写真、橋の左側には水路があり、奥から手前に向かって水が流れている。
葉山めがね橋を渡ってみる。橋の右手側は高さ1mほどの欄干があり、左手側にはそれより低い高さの水路が通っている。
下の動画は、実際に水が流れていく様子を撮影したものだ。車道からの喧騒と水音に混じり、虫の鳴く声が聞こえてくる。
橋を渡り切った突き当たりに、小さな堰がある。
堰のある方から、橋方向を撮影したものが下の写真だ。
水路は90度向きを変え、山肌に沿って続いていく。
国道方向に振り返ってみる。こうしてみると、水路の高さがよくわかる。
再び、国道まで戻ってきた。橋の上流側右岸(先の案内板に向かって左手)には東屋があり、気仙川の近くまで降りていくこともできる。
東屋の一画には、葉山めがね橋の歴史的由来がかかれた碑もあった。現在も、かんがい用水を提供する水路橋として現役であることが書かれている。
碑には、「22ヘクタールの水田を潤し続けている」と具体的な数値が刻まれていた。葉山めがね橋が運ぶ水は、実際にはどこの土地に運ばれているのだろうか?調べてはみたが、確証にいたるデータを見つけることができなかった。
ただ、地図でこの地を俯瞰してみると、少し見えてくるものもあった。
下の地図は、葉山めがね橋付近の地図を3Dにして南西方向を望んだものだ。用水路の水が流れいく先、気仙川の右岸に細長い水田がある(下図のオレンジで囲んだ部分)。地図上でざっくり計算してみると、このオレンジ枠内がおよそ20ヘクタールほどになる。あくまでも推測ではあるが、このあたりの土地に水が運ばれているのかもしれない。
東屋からは、段々になった石積みの道が続く。途中まで降りて、葉山めがね橋を撮影する。この時期は緑がまだ美しいが、樹々が邪魔をして橋の全景ははっきりとしない。
少し拡大してみる。しっかりとしたアーチ部が見える。
橋の下を通る気仙川。景勝地にふさわしい美しい水の流れがみてとれる。
本当なら、川岸まで降りていきたかったのだが、苔のついた石積みの降り口が滑りやすく、今回は途中まで降りたところで引き返した。
あと1~2カ月もすれば、このあたりも樹々が紅葉し、また美しい装いをみせてくれるのだろう。
住田町の旅はまだまだ続く。