

到達:2025年1月
難易度:■■■□(中級)
四国を代表する灯台としては、太平洋に面した室戸岬灯台と足摺岬灯台、豊後水道に面した佐田岬灯台、そして知名度が少し下がるが紀伊水道に面した蒲生田岬灯台などがある。
蒲生田岬灯台から室戸岬灯台までは、弓なりの比較的まっすぐな海岸線がある……ようにも見えるのだが、味わい深く、難易度も中級程度に高い灯台がいくつかあるのだ。

阿瀬比ノ鼻灯台(あせびのはなとうだい、徳島県美波町)はそのうちの一つだ。のぼりはキツいが、眼前に突如現れる瞬間は劇的だ。
クエストのスタートは、美波町日和佐の街中からクルマで5分ほど、恵比須浜と呼ばれる一帯の港だ。灯台まで歩いた経路を以下に示す。海抜ゼロメートルから150m以上の高低差を700mぐらいの水平距離でのぼらなくてはならない。

道の終点、用途がわからない、ずいぶん広い場所にクルマをとめる。積んであるのは消波ブロックだろうか。
道を少し戻ったところに、2重になっている防波堤の内側に入る階段がある。
防波堤を越えるとこんな階段が待っていた。これをおりるの!?
まったく平気な人もいるだろうけど、ちょっとムリだ。しゃがんで、手をつきながら横向きにゆっくりとおりた。
一番怖かったのはここかもしれない。もう少し集落の方に行くと防波堤の切れ目があるので、多少遠回りだが、そっちを通る手もある。
無事におり切ると、踏み跡のある道があり、細い舗装路に出る。
舗装路の右は行き止まり。左に曲がると池がある。道路と防波堤を作る前は入り江だったっぽい。
池を過ぎると、灯台へののぼり口がある。「四国のみち」と書かれた標識の「阿瀬比ノ鼻休憩所 0.8km」方向に向かう。
新しい感じの竹でできた杖が用意されている。「四国のみち」はこのあとに行った阿波竹ヶ島灯台のところにもあった(つながっているようだ)。全国にある「長距離自然歩道」の一つらしい。
灯台に行く途中、放置されている自然歩道も見かけるが、ここはわりとメンテナンスされている感じだった。なので歩くのにあぶなさそうなところはなかった。
では、手ごわそうな木階段から出発。
「想定津波髙」。想定される最大の津波はここまで来るってことか。防波堤にしてもこういう掲示にしても、このへんは大地震による津波のことを意識しているな、と感じた。
その先は、木階段があったり…
また普通の山道になったり…
また木階段になったり…
平らなところがなく、ずっとのぼりが続くので、立ち止まって息を整えるタイミングがつかみにくい。
右下はかなり急な崖。このあたりはだいぶ苦労して道を作ったようだ。しかも左から土砂が崩れたことがある感じだ。赤いはちまきをしている柱あたりは、何かのタイミングで崩れてもおかしくない。
おお、視界が開けた。気持ちのいい眺めを味わいながら少し休憩。
無名な場所ではあるけど、なかなか見応えのある景色だ。
だが、歩き始めてから20分ぐらいなので、まだ終点ではない。あと10分ぐらいはあるはず。そしてまた、ひたすらのぼる。
ふたたびベンチ。「四」の字を元にした「四国のみち」のマークが付いている。
なにか人工物のようなものが見えてきた。
すると、阿瀬比ノ鼻灯台が目の前に突如現れた。歩き始めてちょうど30分。のぼりが延々と続いて苦しかったけど、劇的な対面で全部帳消しになった。
退息所(官舎)の跡と思われる広い敷地と、なにより全体像が見える灯台。難易度中級の灯台は、周囲の木で全体像が見えないことも多いので、これはうれしい。
初点灯は1952年(昭和27年)5月で、1977年(昭和52年)3月に改築されている。だれかが書いていたが、「灯台らしい灯台」だ。しかも遮蔽板がないので、灯籠の中が見える。ただ、光源やレンズがどうなっているのかはよくわからなかった。
海側から見るとこんな感じ。この“普通っぽさ”はいいねえ。
のぼり口の標識にあった、阿瀬比ノ鼻休憩所はここからもう少しのぼったところ(写真右の道)にあるようだ。しかし、もうのぼるのはやめておこう。
左の道から帰路につく。今度は長いくだりで、息が楽な反面、足の筋肉とひざの関節を酷使するので、あまり速くは歩けない。クルマに戻るまでに25分かかった。
道に迷うことや、危険な箇所はほとんどない。それでも長いのぼりくだりを考えると、難易度は中級と言えると思う。