【全駅実地調査】風前の灯のダルマ駅、4年間で29駅→23駅に減少

※冒頭の画像は、現存するダルマ駅の一つ、道南いさりび鉄道の釜谷駅の駅舎。有蓋貨車ワムを転用した

実地調査を続けたこの4年の間に6駅がなくなってしまった。一時期は日本全国あちこちにあったダルマ駅だが、残っているのは23駅。もはや風前の灯と言える状態だ。廃止された6駅と現存する23駅を全部実地調査したので、その現在の姿をお伝えする。

目次

ダルマ駅って?

「ダルマ駅」とは、貨車を改造して駅舎・待合室に転用した駅の通称だ。貨車から車輪や連結器などを取り外し車体だけになった様子が、手足のない置物のだるまに似ているからだ。

昭和の終わり(1986~1988年ごろ)、大量の貨車や車掌車が不要になり、それを生かす方策として相当な数のダルマ駅が誕生した。だがその後年月の経過とともに、新しい駅舎に建て替えられたり、廃駅になったりして、ダルマ駅は少しずつ数を減らしてきた。

そのような状況を知り、2022年11月に次の2本の記事をJBpressに書いた(以下のリンクは、その記事を2026年8月に「探検ウォークしてみない?」に転載したもの)。

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ただこの時点で、実際に訪問したダルマ駅は6駅しかなく、あとはネットの情報などで補った。それがどうにも気になったので、残りのダルマ駅にも実際に行くことにした。結局全部の駅に行くのに4年近くがかかり、その間に6駅が消滅してしまったのだ。

前回記事を執筆した2022年11月以降に消えたダルマ駅は以下の通り。

2022年11月から現在までに消えたダルマ駅

恵比島・幌糠・大和田:路線自体の廃止による

2023年3月に留萌(るもい)本線の石狩沼田から留萌までの区間が廃線となり、この区間にあった恵比島、幌糠、大和田の3駅も廃駅となった。

その後、2026年3月に残る石狩沼田から深川までも廃線になり、留萌本線(最長時は深川から増毛)はすべて姿を消してしまった。

廃駅となってから2年半後の2025年9月に訪れると、3つの駅はまだ撤去されずに、その場所に残されていた。

廃止された大和田駅。2025年9月撮影

恵比島駅は1999年に放送されたテレビドラマ(朝ドラ)「すずらん」の撮影に使われた。「すずらん」では架空の「明日萌驛」(あしもいえき)として設定され、古いイメージの木造駅舎を新たに建設する一方、ダルマ駅舎はドラマセットの雰囲気を損なわないよう古びて見える木板で覆われた。

恵比島駅(右)と「明日萌驛」のセットとしてつくられた木造駅舎(左)。2025年9月撮影

この見た目では「ダルマ駅」の本来の姿ではないし、すずらんの放送からすでに27年が経ち、明日萌驛のセットがいつまで保存されているかは見通せない。

中ノ沢・二股:利用者数減少による

函館本線の長万部駅を挟む2つの駅は、ずっと利用者がほとんどなかったために廃駅になった。

中ノ沢駅は、2024年3月に廃駅になったが、2025年10月に現地に行ってみるとすでにダルマ駅は残されていなかった。北海道新幹線の工事をするため急いで撤去したのかもしれない。

中ノ沢駅の跡地。2025年10月撮影

二股駅は廃止予定が判明していたので、2025年10月に急いで訪問したのだ。そして、翌2026年3月に廃駅となった。次の写真はまだ現役だったときのものだ。

現役時代の二股駅。2025年10月撮影

北海道はダルマ駅の宝庫だったのだが、廃線、利用者数減少によって多くが姿を消した。ダルマ駅が消えていくというのは、北海道のローカル線が細っていく話なのだ。

中川:新駅舎に建て替え

奥羽本線の中川駅への訪問は大きなショックが待ち構えていた。なんとあるはずのところにダルマ駅舎がなく、工事が行われていたのだ。しかも、聞くとダルマ駅舎は工事の前日に撤去されたという。たった1日の違い! 2重のショックだった。

リニューアルはダルマ駅が消える理由としては珍しくない。ただ、訪問日の前日に撤去されてしまったというタイミングは、非常に後悔が残る。次の写真は撤去翌日のもので、明るい緑色の油圧ショベルのあたりにダルマ駅舎があった。

ダルマ駅舎が撤去され工事中の中川駅。2025年10月撮影

中川駅は北海道の5駅とは事情が違う。駅自体が廃止されるのではなく、ダルマ駅舎が撤去され新しい駅舎に建て替えられたのだ。

路線や駅の廃止は事前にニュースになることもあるが、駅舎の建て替えではふつうニュースにはならない(後日調べたところ、所在地の南陽市の市報には小さいお知らせが載っていた)。ある日重機が来て更地になっている。そのはかなさを目の当たりにした出来事だった。

新しい駅舎が建ったのは撤去から3カ月後の2026年1月。シンプルモダンで頑丈そうな作りの駅舎だった。

建て替えられた中川駅。2026年1月撮影

中川駅の詳細については次の記事で書いている。

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まだ残っているダルマ駅の見どころ

2026年10月時点で、現存しているダルマ駅は23ある。そのうち特徴のあるいくつかを紹介しよう。地図も用意したので、近くに行く機会があったら訪ねてみてほしい。

宗谷本線の5駅:外壁を改修

黒丸が現存13駅、赤丸が失われた5駅。赤い線は廃止された留萌本線(出典:国土数値情報(行政区域データ N03/鉄道データ N02-25/鉄道時系列データ N05-23、国土交通省)をもとに作成)

北海道北部にある宗谷本線にはまだ5駅が残っている。そのうち勇知(ゆうち)、問寒別(といかんべつ)、筬島(おさしま)、智恵文(ちえぶん)の4駅の外壁は似た感じの金属サイディングで改修され、ダルマ駅が持つみすぼらしさが消えている。

どの駅も、過去の写真が駅舎内に掲示されていたり、トイレがきれいな状態であったりなど、地元の方々が手間をかけて設備を維持しているように見えた。

左上から時計回りに勇知、問寒別、筬島、智恵文

残りの1つ下沼駅は、古い塗装のままだが、こんなおちゃめな絵が描かれている。

下沼駅 2025年9月撮影

ただ、これらの駅の利用者数は少なく、宗谷本線自体の存続すら検討されている。いつまで残っているか、心もとない状況だ。

道南いさりび鉄道の2駅:中に券売機まである

北海道新幹線開業に伴い、江差線の木古内から五稜郭までの路線を引き継いだ第三セクターが、道南いさりび鉄道だ。同鉄道には2つのダルマ駅が現存する。

本記事の冒頭画像は釜谷駅だ。どこか愛らしい姿をしたこの駅舎、きれいに塗装されており、消えゆく哀愁のようなものは感じない。

釜谷駅の駅舎内。ストーブが北海道っぽい

もう一つの東久根別駅には、なんと駅舎内に電子マネーも使える券売機がある。券売機があるダルマ駅はここと四国の堀江駅(予讃線)だけだ。ここは函館に近く、利用者がそれなりに多いのだろう。

東久根別駅の駅舎内。掃除も行き届いている

道南いさりび鉄道の2駅は当面残りそうな感じだ。

吾妻線の2駅:貨車由来と気づかないまでの厚化粧

赤丸の中川駅は、ダルマ駅舎が建て替えられた(出典:国土数値情報(行政区域データ N03/鉄道データ N02-25/鉄道時系列データ N05-23、国土交通省)をもとに作成)

ユニークな利用方法なのが、吾妻線の郷原(ごうばら)駅と市城(いちしろ)駅だ。どちらも元の貨車をまったく感じさせない厚化粧を施している。

郷原駅はお城を模した外観をしている。この中に貨車が隠れているとは、まず気が付かないだろう。この駅の楽しみは、貨車の痕跡を探すことだ。例えば、駅舎の側面を見ると電線をつなぐために壁が正方形にくり抜かれている。よくよく見ると、貨車の特徴の一つである、波打った金属面が現れていることがわかるだろう。

郷原駅の側面。くり抜かれた壁の奥に貨車の外板がのぞく

貨車をまるごと包み込んでしまったこの駅は、もうダルマ駅とは呼べないかもしれない。だが当面は建て替えなどが行われる可能性は低く、「変形ダルマ駅」として長く使われていきそうだ。

予讃線の2駅:最も海に近いダルマ駅

中国と四国のダルマ駅(出典:国土数値情報(行政区域データ N03/鉄道データ N02-25/鉄道時系列データ N05-23、国土交通省)をもとに作成)

四国を走る予讃線には堀江駅と箕浦駅というダルマ駅がある。松山都市圏に位置する堀江駅は1日の乗降者数が340人と多い。現存するダルマ駅の中で、1、2を争う数ではないか。

次の写真は箕浦駅。背後に見えるのは瀬戸内海で、おそらく最も海に近いダルマ駅だ。

箕浦駅。駅の北側にみえるのは、瀬戸内海だ

予讃線の2駅はきれいに塗装されており、しばらくなくなることはなさそうに思える。

中国地方の2駅:駅舎ではなく待合室として利用

山陰本線の御来屋(みくりや)と、第三セクター錦川鉄道の清流新岩国(せいりゅうしんいわくに)は、車掌車を改修して駅舎ではなく待合室として利用している。これも「ダルマ駅」と言えるのかどうか微妙なところだが、現存23駅の中でこの2駅はちょっと異質だ。

次の写真は御来屋駅のホームに設置された「ダルマ待合室」だ。では駅舎はというと、これが立派なものなのだ。駅舎は1902年(明治35年)建築のものが補修されながら残っていて、山陰本線の現役駅舎では最古となっている。御来屋駅の魅力は、ダルマ待合室と最古の駅舎という2つがいっぺんに見られるところにある。

御来屋駅のダルマ待合室と駅舎(右下)

ただ、御来屋駅のダルマ待合室は、停車する列車が少ないホームにある。清流新岩国駅ではホームに屋根とベンチが別にある。どちらもダルマ待合室の存在意義が薄いため、いずれ撤去されてしまうかもしれない。

現存全23駅の一覧表

今残っている23のダルマ駅も、いくつかはすでにカウントダウンが始まっている。それを止めることはできないが、「まだあった」「もうなかった」を一つずつ確かめて、日付とともに書き留めておくことはできる。29駅を訪ねてまわったのは、そうして変わりゆく駅の姿を残していく時間だったのかもしれない。

以下に、23のダルマ駅の一覧表を載せる。駅名をクリックすれば、より詳しい記事が表示されるようにリンクを貼った。

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駅名よみ路線名所在地元の貨車種類
勇知ゆうち宗谷本線北海道稚内市ヨ3500形車掌車
下沼しもぬま宗谷本線北海道幌延町ヨ3500形車掌車
問寒別といかんべつ宗谷本線北海道幌延町ヨ3500形車掌車
筬島おさしま宗谷本線北海道音威子府村ヨ3500形車掌車
智恵文ちえぶん宗谷本線北海道名寄市ヨ3500形車掌車
西和田にしわだ根室本線北海道根室市ヨ3500形車掌車?
別当賀べっとが根室本線北海道根室市ヨ3500形車掌車?
尾幌おぼろ根室本線北海道厚岸町ヨ3500形車掌車?
美留和びるわ釧網本線北海道弟子屈町ヨ3500形車掌車
尾白内おしろない函館本線北海道森町ワム80000形
浜厚真はまあつま日高本線北海道厚真町ヨ3500形車掌車?
釜谷かまや道南いさりび鉄道北海道木古内町ワム80000形
東久根別ひがしくねべつ道南いさりび鉄道北海道北斗市ワフ29500形
陸中夏井りくちゅうなつい八戸線岩手県久慈市ワフ29500形
会津坂本あいづさかもと只見線福島県会津坂下町ワラ1形
市城いちしろ吾妻線群馬県中之条町ワラ1形
郷原ごうばら吾妻線群馬県東吾妻町ワラ1形
信濃平しなのたいら飯山線長野県飯山市ワフ29500形
平原ひらはらしなの鉄道長野県小諸市ヨ5000形車掌車
箕浦みのうら予讃線香川県観音寺市ワラ1形
堀江ほりえ予讃線愛媛県松山市ワラ1形
御来屋みくりや山陰本線鳥取県大山町ヨ5000形車掌車
清流新岩国せいりゅうしんいわくに錦川鉄道山口県岩国市コンテナ緩急車
(コキフ)の車掌室

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