消えゆくダルマ駅、いまならまだ見られる現存駅はココ

冒頭の写真はダルマ駅のひとつ、鵜苫駅。2017年に撮影されたものだが、現在すでになくなっている
(Mister0124, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons)

◎本稿は、ビジネス系デジタルメディアJBpress(ジェイビープレス)に、2022年11月27日に掲載された記事を転載したものです。2026年時点の情報に更新した記事を近日公開予定

 貨車を改造した駅舎を「ダルマ駅」と呼ぶ。貨車が本来とは異なる用途に使われているという違和感がある一方で、いい感じの“古さ”を感じさせる情緒もある。

 私がダルマ駅に興味を持つきっかけになったのが冒頭の写真、JR日高本線の鵜苫駅(うとま、北海道様似町)だ。ぼろぼろになった塗装と車体に描かれた大きなタコの絵。もちろん閑散路線の悲哀も十分に感じるのだが、それにもかかわらず精一杯頑張っているタコの瞳が私の心を打ち抜いたのである。

 いつか必ず見に行きたいと思っていた鵜苫のダルマ駅。しかし、2021年4月に姿を消してしまった。

 一時期ダルマ駅は全国にわりとあったのだが、最近は急速に姿を消していて、現存するのはおそらく30以下。完全になくなってしまう前に見るならどこに行けばいいか。以下で紹介する。

 ダルマ駅の誕生理由や注目ポイントはこちらの前編で。

あわせて読みたい
情緒あふれる“ダルマ駅”が消えていく!ところでダルマ駅ってなに? ◎本稿は、ビジネス系デジタルメディアJBpress(ジェイビープレス)に、2022年11月26日に掲載された記事を転載したものです。2026年時点の情報に更新した記事を近日公開...
目次

現存するダルマ駅はおそらく29

 2022年12月現在、ダルマ駅はどのくらいあるのか。漏れがあるかもしれないが、調べた限りでは北海道に18駅(表1)、それ以外に11駅(表2)の、合計29駅が現存している。

表1 北海道にあるダルマ駅(道南いさりび鉄道は第三セクター、それ以外はJR)

 信濃平駅は、半分が車掌室、半分が貨物室という混合タイプの貨車だ(記号:ワフ)。

表2 北海道以外にあるダルマ駅(しなの鉄道と錦川鉄道は第三セクター、それ以外はJR)
御来屋と清流新岩国は待合室として利用

 表や地図を見るとわかるように、現存するダルマ駅の半数以上は北海道の閑散路線にある。旭川と稚内を結ぶ宗谷本線の名寄から北には、ダルマ駅が5つも集中している。

 滝川と根室を結ぶ根室本線にも、釧路から根室までの区間(愛称“花咲線”)にも3つのダルマ駅が残っている。次の写真は今年(2022年)9月に撮影したもので、いずれも車掌車をベースにしたタイプである。

根室本線に残る3つのダルマ駅(尾幌駅、別当賀駅、西和田駅)

 

 反対方向の車掌室側を撮影。窓があるのが、貨車(貨物室)にはない特徴だ。奥にはデッキスペースにつながるドアがある。

西和田駅舎の室内

駅自体が廃止された北海道のダルマ駅

 前編で書いたように、ダルマ駅が誕生したのは昭和後期。それから30年以上の時がたてば頑強な車体も老朽化は否めない。

 ダルマ駅を詳しく調べている作家・医師の笹田昌宏氏の著作『ダルマ駅へ行こう!』(2007年、小学館文庫)を参考に調べたところ、2006年頃から2021年までの15年間で、消えてしまったダルマ駅は北海道で21駅(表3)、北海道以外で13駅(表4)の、合計34駅があった。

表3 北海道にあり廃止されたダルマ駅

 

表4 北海道以外にあり廃止されたダルマ駅

 北海道以外のダルマ駅は、いずれも2006~2009年ごろに新しい駅舎に建て替えられている。

 注目してほしいのは北海道のダルマ駅だ。いずれも駅自体が廃止されてしまったのだ。しかも、2014~2021年というごく最近のことである。

 乗降者数の少なさから廃駅になったものもあるが、廃線と運命をともにしたダルマ駅も多い。留萌本線、札沼線、江差線は一部区間の廃線に伴うものだ(残りの江差線はその後に第三セクター化)。冒頭で紹介した鵜苫駅のある日高本線は、2015年1月に発生した高波で被災し、実に路線の8割にあたる区間(鵡川駅-様似駅間)が廃線となってしまったのだ。

 現存しているものでも、とくに函館本線の3駅(尾白内、中ノ沢、二股)は、北海道新幹線の札幌延伸でどうなってしまうか、将来が見通せない。

 これを見ると、北海道の鉄道路線(JR北海道)が苦境に陥っていることが如実にわかるだろう。地方の秘境路線、特に広大な大地を走る北海道の地では、路線の消滅危機が現在進行形で待ったなしの状態なのだと強く感じる。「赤字の地方鉄道をどうしていくか」という議論がこのところ話題になっているが、ダルマ駅もその渦中にあるのだ。

第3の人生を歩む道も

 そのような厳しい状況にあるダルマ駅だが、新たに「第3の人生」を歩み始めたものがある。

 現在JR宗谷本線に5つあるダルマ駅のうち4つは、非常に特徴のある外観に改装されている。色合いはさまざまなのだが、ガルバリウム鋼板で車体をぐるりと囲んで、近未来的な雰囲気を漂わせているのだ。リフォーム番組などでよく目にする金属サイディング張りというやつだ。

宗谷本線問寒別駅(2017年撮影、Mister0124CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 老朽化して見た目が劣化したダルマ駅でも、このように化粧直しすれば見栄えがよくなり、まだまだ利用できるということが、この例でよくわかる。

 JR吾妻線にある市城駅(いちしろ、群馬県中之条町)と郷原駅(ごうばら、群馬県東吾妻町)も、驚くべき変身を遂げたダルマ駅だ。次の写真を見れば一目瞭然、知らなければこれがダルマ駅だとは到底気づかない。

吾妻線郷原駅(2021年撮影、Mister0124CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 

 屋根瓦を乗っけられてしまえば、貨車の特徴である屋根部分の形状もわからなくなる。ただし、中に入って天井を見上げれば、その痕跡が残っているそうなので、一度訪れてみたい駅である。

「別の場所で余生を送る」というダルマ駅もある。

 JR根室本線には現在3つのダルマ駅があるが、もう一つ、花咲駅(北海道根室市)もそうだった。花咲ガニで知られる花咲港が近い駅だ。ただ、この駅は2016年3月26日に廃駅となった。

根室本線花咲駅跡(Mister0124CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 

 花咲駅が開業したのは1921年(大正10年)。すぐ北にある松浦牧場が用地を寄付したことで、この場所に駅が設置された。その後、1986年(昭和61年)に古い駅舎からダルマ駅に替わった。そして30年にわたり第2の人生を送った貨車は、廃駅後に撤去されたのだが、松浦牧場に引き取られたという。

 その様子を一目みられないかとネット上を探していたところ、おそらく公道から撮影したものと思われる写真が見つかった。木々の間から厩舎に寄り添うように置かれた貨車の車体が見える。その姿は、白黒の牛柄に美しく化粧直しされていた。

 駅が生まれることとなったゆかりの松浦牧場で、ゆっくりと余生を過ごしてほしいなと願わずにはいられない。

 貨車として長い間日本の物流を支え、第2の人生として30年以上にわたり駅舎としての務めを果たしたダルマ駅たち。解体されたものにはお疲れさまでしたと心から労いたい。一方改装されたダルマ駅には、その頑強さでもうしばらく駅舎としての役割を果たしてほしいと思う。いずれにしても、すべてのダルマ駅たちに、感謝の気持ちを伝えたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次