阿賀野川に残る100年超の鉄道遺構を訪ねて  晩秋の磐越西線①

 

 

 

 

福島県の荒海山を源流として新潟県の日本海に流れ下る阿賀野川は、中流域ではJR磐越西線(ばんえつさいせん)とほぼ並行して流れている。

磐越西線で一番最後に開通した津川から野沢までの区間は、阿賀野川も大きく蛇行している。山深いその場所にかかる「阿賀野川当麻(たいま)橋梁」が今回の旅の目的地である。

  

  

 

旅のルートを確認

 

関東住みの筆者が阿賀野川当麻橋梁(上の地図、赤いマーク)にたどりつくには、大きく2つのルートがある。郡山から会津若松を経由する反時計回りのルートと、長岡から新津を経由する時計回りのルートである。

時間帯にもよるが、長岡経由のアプローチのほうが行きやすい。まず上越新幹線で長岡まで行き、信越本線に乗り換えて新津まで。新津からは磐越西線で、橋の最寄り駅である日出谷(ひでや)駅に行くことにした。

 

 

長岡から新津まで

上越新幹線のホーム

 

「とき」に乗車し、長岡に到着したのが7時48分。信越本線への乗り換えは20分ちょっとあるので、余裕である。大丈夫だとわかっていても乗り換え時間が10分ないと、性格的にかなりプレッシャーになる。

 

 

平日なのに空いている。土地勘がないので通勤通学の人の流れがいまいちわからない

 

 

8時12分発、信越本線の新潟行き列車に無事に乗車できた。あいにくの小雨混じりの曇り空だが、刈入れが終わった米どころの車窓をのんびりと眺める。

 

東光寺駅のいい感じの桜の樹

 

途中の東光寺駅は、ホーム沿いにある桜が印象的。春になれば素朴でほのぼのとした眺めになるだろうな。

 

 

 

 

一時間弱の乗車で列車は新津に到着した。新津駅は信越本線のほか、磐越西線や羽越(うえつ)本線の発着駅となっているので、ホームの駅名標が大変なことになっている。ちなみに、下段の「さつき野」「古津」は信越本線、上段左の「京ヶ瀬」は羽越本線、上段右の「東新津」が今回乗車する磐越西線の駅である。

 

駅名標の下には、それぞれの時刻表が並んでいる

 
 

磐越西線の時刻表を見てみる。これから乗るのは、9時34発の会津若松行きだ。本数が多そうに見えるが、日出谷駅に停まるのは会津若松行の普通列車なので、本数は限られる。
 

  

 

 

新津から日出谷まで

ディーゼルエンジンで発電した電力で動く

 

会津若松行きの列車がホームに滑り込んでくる。始発駅なので、誰も乗っていないし、乗り込む人も少ない。2両編成でトイレはついていない。磐越西線の列車ということで、もう少しローカルなタイプをイメージしていたが、なんだかオサレである。

 

 

雲一つない真っ青な空というのもいいが、怪しげな雲が湧いてでているような空も味がある。

 

磐越西線の車窓より

 

 

新津を出発して30分ぐらい経過、列車は馬下(まおろし)に到着した。この駅での必見はなんといっても、ホームに隣接して建つランプ小屋である。

馬下は、日出谷が開業する3年前の1910年(明治43年)に開業している。ランプ小屋は、当時の車両の室内灯、信号灯、車両灯、標識灯などに使用する油を保管していた倉庫だ。イギリス積みと呼ばれるレンガの長短を段違いに積み上げる特徴的な造りとなっている。

  

窓越しに撮影したため、写真全体が少し緑がかっている

 

屋根はふき替えたと思うが、レンガ自体は当時のものと思われる。非常に堅牢な造りという印象

 

 

ランプ小屋はえちごトキめき鉄道の市振駅にもある。あちらは、いかにも赤レンガという色だった。

 

関連記事 「風に吹かれて無人駅」より

1908年(明治41年)に建てられた市振駅のランプ小屋

 

 

 

さらに15分、新津から9つ目の五十島(いがしま)に到着。
 

積雪時に列車の停止位置目標となる「雪」という標識がいい

 

 

三川(みかわ)を出ると、阿賀野川の対岸ぎりぎりに集落がみえた。水面に映る姿は美しく、只見線の川沿いにある集落の風景を思い出す。

 

 

 

 

新津から約1時間、列車は日出谷に到着した。今にも雨がふりそうだが、ぎりぎりもっている感じ。

 

日出谷駅ホームから津川方向を臨む

 

 

 

平瀬橋を目指して

列車は会津若松に向けて出発

 
日出谷駅の開業は、磐越西線が全線開通したのと同時期の1914年(大正3年)。かつては賑わいをみせたこの駅も、1993年(平成5年)から無人駅となっている。現在の簡易駅舎は2010年(平成22年)に建てられたもの。
 

駅前にはシックな造りの当麻公民館があり、トイレなども利用できる。

 

 

 

 

 

阿賀野川当麻橋梁は日出谷駅の西側、徒歩10分ほどの距離にある。阿賀野川当麻橋梁と平行して「平瀬(びょうぜ)橋」が架かっているので、そこから橋を眺めることにする(下の地図A ③のあたり)。

 

地図A   Google 航空写真 より

 

 

 

平瀬橋が見えてきた。なんといっても、赤い橋は目立つ。

 

地図A①の位置より

 

 

地図A②の位置。「すれ違い不可」の標識あり

 

最初、「ひらせ」だと思っていた

 

 

阿賀野川当麻橋梁を見に来たのだが、この平瀬橋もなかなかカッコいい。

 

橋長:174m 幅員:4m 形式:ランガ―桁橋  1975年(昭和50年)竣工の平瀬橋

 

 

 

 

川面に映る阿賀野川当麻橋梁

二代目当麻橋梁 橋長:175.65m 形式:曲弦ワーレントラス2連+プラットトラス1連の下路式 1929年(昭和4年)竣工

 

遮るものがなく、平瀬橋から見る阿賀野川当麻橋梁は最高だった。現在の橋は二代目で、鹿瀬ダム建設に伴い初代を撤去し架け替えられた。現在も、初代の橋脚が1本だけ残っている。

初代の阿賀野川当麻橋梁は、撤去された後に分割されて、埼玉県の秩父鉄道で第二の人生を送っている。詳しくは、以下の記事をご覧いただきたい。 

関連記事

秩父鉄道に架かる3つの鉄橋は、新潟県の阿賀野川にかつて架けられていた鉄橋を3分割したものだった!

100年経っても現役、仲よく働く「三つ子橋」」(JBpress)

 
 

さて、せっかくなので、列車が通過する姿も写真に収めたい。事前に調べたところ、1時間弱で下り列車が通過するので、それまで待つことにした。

 

待ち時間の間に、もう少し橋に近づける場所に移動する(地図A ④~⑤)。

 

地図A④の位置より

 

西に大きく迂回して、農道らしき道を歩いて行く。

 

二代目とはいえ、この橋も竣工から100年近く経っている

 

 

2つの橋をなんとか1枚に収められないかと奮闘したが、スマホの超広角で下の写真が限界。平瀬橋が半分しか写ってないのが残念。

 

地図A⑤の位置より

 

 

 

再び、平瀬橋に戻る。パラパラと小雨が時折降ってくる。本降りにならないといいんだけど。

 

日出谷駅方向を臨む

 

 

 

列車が通過するまでまだ20分ほど時間があった。人はもちろん、車の往来もほとんどないのだが、それでも時折地元の車が通過していく。

心配だったのは、橋の中央でじっとしていると身投げする人に間違われないかということだ。だから、まだ列車がこないのがわかっているのに、カメラを抱えて「私は撮影するためにここにいるんですよ」アピールをし続けて、ちょっと疲れる 笑。

 

赤い橋に赤い郵便車。似合うなぁ

 

 

やっと、下り列車がやってきた。雨が降ってきているので、川面が水鏡にならず橋も列車も映りこまないが、まあ仕方ない。

それにしても、列車が橋を通過する姿は、いつみてもぐっとくる。

 

 

 

 

自分的に大きなミッションを無事終えて、日出谷駅に戻ってくる。しばらくすると、上り列車がやってきた。これに乗って、次の目的地、上野尻駅近くにある鉄橋を撮りに行くのだ。

 

 

 

続きは、下の記事で。

 

 

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