

到達:2023年4月
難易度:■■□□(初級)
余部(あまるべ)と言えば、山陰本線の余部鉄橋が有名だが(ここでは説明を省く)、その近くに灯台もある。余部埼灯台(あまるべさきとうだい、兵庫県香美町)だ。
せっかくなら灯台にも寄ってみてはどうかと言いたいところだが、自動車道が少しシビアな点がちょっとひっかかる。もちろん「これぐらいは全然平気」と思う人もいるだろうが、少なくとも慎重に運転した方がいい。
余部鉄橋の下、道の駅があるあたりが、余部の町の中心部だ。旧国道178号(新しい山陰近畿自動車道の方が国道178号になってしまった)の交差点を右折する。

信号機の下には「恋する灯台 余部埼灯台 5km」「眺望パワースポット」「漁火林道三尾御崎線 眼下に海」など、お誘いの看板が立っている。後述するが、これはちょっと期待を持たせすぎかもしれない。
右折すると道は一気に上り坂になる。地図を見るとわかるように、余部の町(地図右下)から海に沿って北西方向へ進む。

道の右手は崖で、運転しながらでも目の端に海面が見えているのがわかる。そして高さがどんどん増していくので、ちょっと怖い感じがする。
しかも道幅は乗用車の1.5倍ぐらいか。少し幅が広がったところでないとすれ違えない気がする。すれ違うにしても、下りの車は崖ギリギリに寄らないといけない。
さいわい、対向車が来ないまま、道は海岸から離れ、山の中に入った。が。右手側が崖なのは続いていて、運転の緊張は続く。
実は、帰り道にこのあたりで対向車に出会ってしまった。道がややふくらんだ部分にバックしたのだが、踏み外さないか、崖がくずれないかとおっかなびっくりだ。地元の人らしい軽トラはさーっとすれ違っていった。
ずいぶん長い時間に感じたが、おそらくたかだか5分、ちょっと開けた場所に出た。灯台の方向を示す標識もある。

ここに御崎(みさき)という集落がある。1日3往復だがコミュニティバスが来ているし、小学校の分校もある。つまり老人だけでなく、子供もいるのだ。
余部の町からも海岸からも離れた場所にある集落が、なぜできて、なぜこのように維持されているのか。ちょっと興味深いし、研究論文などもあるのだが、ここでは触れないでおく。
ただ、余部の町からここまで上ってきた道は、この集落の生活道路であるわけで、対向車が来ることも十分にあることは、知っておいた方がいいだろう。
道は右にカーブしているのだが、そのまま行くと集落の中に入ってしまう。親切に灯台への案内がコンクリート壁に書かれている。

実はペンキの標識の左上にも、板に書かれた「←灯台 浜坂」という小さな案内があるのだが、草でほとんど見えなくなっている。

御崎集落を過ぎても同じような道だが、先には灯台しかないから、対向車が来る可能性はかなり減る。
そしてわりと広い駐車場に到着。正面にはすでに灯台の頭が見えている。

駐車場の先は、ちょっとした公園のように整備されている。左手前の木造の建物はトイレ。

歩いてわずか1、2分で灯台に到着。

余部埼灯台は海面から灯光までが284mあり、日本で一番高い場所にあるという。海抜数メートルの余部の町からここまで、それだけの高さを一気に上ってきたわけだ。

灯台の向こうには海が見えるのだが、海岸を見下ろすことはできない。残念ながら、「すばらしい眺望」とまでは言えないように思う。
灯塔はタイル貼り。ただ、付属舎は普通の塗装だ。

風見鶏の下にある、下部にスリットの入った小さな球体、装飾なのか用途があるのかはわからないが、ちょっとしゃれた雰囲気を持っているところがいい。

実は、この灯台とは別に、もっと岬の先端、海岸近くにもう一つ、余部埼北灯台というのもある。前出の地図では上端、「伊笹岬」とあるあたりだ。国土地理院の地図には灯台のマークがないが、Googleマップだと(すごく拡大すると)表示される。
余部埼北灯台に行った人のブログを見ると、「片道30分」「落石が危険で通行禁止」「滑ったら確実にあの世いき」とあるので、行くのはあっさりとあきらめた。
さて、そろそろ戻ることにするが、灯台より先の道がどうなっているかというと、「通行止め」だ。

この道は、三尾(兵庫県美方郡新温泉町)という集落に続いているのだが、三尾から先はちゃんとした県道260号となって、浜坂方向につながっている。おそらく三尾の人々はそっちの方向に出ているのだろう。
途中には「林道三尾御崎線開通記念碑」があって、「三尾と香美町の御崎地区は、姻戚関係が深く長年にわたって交流が盛んでありましたが、(中略)観光道路を兼ねた林道が昭和63年3月に完成しました」とある。しかし現代、この道路の必要性はかなり下がっているのではないか。看板も「工事中」「復旧作業中」なのではなく単なる「通り抜けできません」「通行止」。もう修復する気がないのかもしれない。
とすると、御崎から先は、ほぼ「余部埼灯台に行くため」だけの道路ということだ。もしこの区間が今後土砂崩れなどで不通になったとしたら、復旧工事が行われるだろうか。多少不安が残る。
そう考えると、余部埼灯台には今のうちに行っておいた方がいいかもしれない。