2018年の秋、宮城県東松島市にある宮戸島に取材に行った。日帰りでは厳しかったので、当日は隣接する松島町にある、一の坊というホテルに予約をとっていた。
取材が終わり、時刻はまだ午後の早い時間。せっかくなのでチェックインする前にどこかに行ってみようかという気になった。観光目的じゃないし、土地勘もないので、ホテルの近くにどんな観光名所があるかは全くわからない。ネットで調べてみると、徒歩圏内に円通院がある。歴史に疎い私でも耳にしたことがある寺院だ。もしかしたら少し紅葉もみられるかな?ぐらいの軽い気持ちで出かけることにした。
そもそもこれまでの人生で、リアルタイムに紅葉を愛でるということに、ほぼ縁がない。
自宅近くのしょぼい紅葉じゃなくて、ポスターになるような、息をのむような紅葉である。
そんなことを考えながら、表通りから路地裏に入って、ひょいと角を曲がると、そこには夢の世界が広がっていた。
円通院は、伊達政宗の嫡孫(ちゃくそん)光宗の霊廟として、1647年に三慧殿(さんけいでん)が建立され開山された。光宗公の菩提寺というだけでなく、紅葉の美しさでも有名らしい。
早速、拝観料を納めて山門をくぐる。
すぐ左手には縁結び観音があった。
紅葉のアーチに彩られた参道を歩く。このまま、まっすぐ行きたくなるが、拝観順路通り左側の小道に進む。
左の小道に進むと、左手側に美しい庭園が見える。松島湾を模した白砂に、落葉した紅葉の赤が波のように色を添えている。
赤のグラデーションを抜けると、一瞬にして周囲の空気が変わる。正面に見えるのは、光宗公の霊廟、三慧殿(さんけいでん)だ。
同じ敷地内にあるのに、紅葉の進み具合も、厳かな空気感も、その雰囲気の違いにただただ驚く。
三慧殿の正面から今度は右方向に歩いていくと、三慧殿禅林・瞑想の庭と呼ばれる自然庭園の中に出る。天に向かってまっすぐに伸びる見事なスギと、山野草やコケが織りなす非日常空間である。
禅林を抜けると、本堂の大悲亭(だいひてい)が現れる。
松島町の指定文化財にもなっている大悲亭は、生前に光宗公が江戸納涼の亭として住まわれていた館を解体移築したものだ。
円通院の拝観を終え、山門を再びくぐる。
まだ時間はある。すぐ隣にある瑞巌寺に行ってみよう。
つづく