わたらせ渓谷鉄道、各駅を順に旅するの第5回。前回と今回の2回に分けて春の神戸(ごうど)駅を紹介する。
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次の下り列車が到着するまで少し時間があるので、外を歩いてみることにした。
検札は列車内で行われるので、そのまま改札を抜けて駅の外に出る。
駅を出て道なりに右方向に進む。白・桃・紅色の花桃に負けじと桜の花も咲き誇る。
駅前にいた地元の方の話では、昨日あたりからいっきに咲き揃って満開になったとのこと。
神戸駅は線路よりも少し高い場所にあるので、下り坂を歩いていくと小さな踏切にでる。このまま進んでいけば草木(くさき)ダムを眺められる場所にでられるはずだ。(草木ダムに直接行くには、この道ではなく、駅の北側を通る国道122号線が早い)
当初の予定だと、草木ダム周辺も訪問予定だったが、残念ながら今回は見送りとなった。
ちなみに、草木ダムは1977年(昭和52年)に完成。渡良瀬川の治水や首都圏への利水や発電など多くの目的を持つ多目的ダムである。
神戸駅に花桃が咲き乱れるワケ
踏切から神戸駅方向を振り返る。天気は曇りだったが、これほど花が咲き乱れるタイミングで訪れることはそうそうない。何もかも忘れて、しばし景色に見入る。
列車の到着時刻が近づいてきた。名残惜しいが、この場を後にし駅に引き返す。
神戸駅にこれほど花桃が咲き乱れるのは、「たまたま」ではない。
わたらせ渓谷鉄道も、他のローカル線と同じく、鉄道の経営は厳しく赤字解消が大きな課題である。 この花桃の樹々は 、観光客を呼び込む目玉の1つとして2000年(平成12年)に植樹されたものだ。神戸駅周辺におよそ300本の花桃があるという。
神戸駅には「お車でお越しのお客様へ」という貼り紙がある。
車で来訪する方には駐車場のある駅に車を止め、そこからぜひ鉄道を利用してほしいというアナウンスもある。
「鉄道に乗ってもらわなければ、花桃を植栽した意味がない」そんなストレートな訴えに、協力しないわけにはいかないだろう。
みどり市によると、2025年までに東町(東町神戸ほか近隣の地域)全体で、1万本の花桃を植える取り組みも進行中とのこと。花桃のグラデーションに染まる桃源郷が、ますます楽しみになる。
トロッコ列車で間藤に向かう
桐生駅を9時30分に発車した臨時列車「トロッコわっしー号」が10時26分に到着した。トロッコ列車に乗車するためには乗車券のほかトロッコ整理券が必要で、混雑時には乗車できないこともある。
2両編成の先頭車両は、窓のないトロッコ車両。地元の方がホームでお弁当を販売していた。
さすがにこの時期、窓なしで渓谷を走るのは、けっこう寒い。 それなりの防寒は必要だが、トロッコ列車は普通列車よりも少しゆっくりと走行し景色をより楽しめるとのこと。
せっかくなので、先頭車両に席をとり、子供のように少しわくわくして発車を待った。
10時28分。トロッコ列車は、次の沢入(そうり)駅に向けて、がたんごとんと神戸駅を後にした。
このあとちょっとしたサプライズがあるのだが、それはまた次の話で。
つづく