箱根駅伝でおなじみ 函嶺洞門と2つのレトロ橋 【2021年晩秋の箱根路】

 

 

 

 

2005年(平成17年)、箱根地区国道1号施設群として「函嶺洞門(かんれいどうもん)」「旭橋」「千歳橋」の3つが土木学会推奨の土木遺産として認定された。

「箱根の山は 天下の嶮(けん)」とうたわれた箱根山の東麓に位置する幹線道路施設群は、昭和初期の近代道路史における土木遺産としても価値が高く、当時の高度な技術を垣間見ることができる。

箱根駅伝の往路山登りの5区として、TV中継などでこれらの施設群が駅伝選手の力走とともに映し出されることもあるため、名前は知らなくともこれら建造物に見覚えのある方もいるだろう。

2015年には国の重要文化財にも指定された、「函嶺洞門」「旭橋」「千歳橋」をそれぞれ紹介していこう。
 

 

 

 

旭橋

 

箱根の玄関口でもある箱根湯本駅(箱根登山鉄道)から、1号線を西に進み徒歩5分ほどのところにあるのが旭橋だ。

  

所在地:神奈川県足柄下郡箱根町湯本
竣 工:1933年(昭和8年)
形 式:鉄筋コンクリート下路式タイドアーチ
橋 長:39.5m
幅 員:10.0m
 

国土地理院の地図で標高を確認すると、橋の東西両端では約1mの高低差がある。竣工当時のRCタイドアーチ橋としては国内最大級のスパンを誇った。

さらに旭橋の最大の特徴は斜橋であることだ。下の画像を見ていただければ、橋の2つのアーチが斜めにずれていることがおわかりいただけるだろう。

 

早川を斜めに横切る国道1号線と旭橋  Google航空写真より

 

渋滞緩和のため、1967年(昭和42年)に旭橋の北側に新しく橋が架けられた。これにより2つの並行する橋は上下線に分かれることとなり、旭橋は宮ノ下方面に向かう下り線の一方通行となった。 

 

 

旭橋の東端から宮ノ下方を望む

 

アーチの終端部分からゆるやかに立ち上がるように照明が取り付けられている。当時の物ではなく後から復元したようだが、レトロで優美なデザインが当時の雰囲気をしのばせる。

 

左右のアーチがずれているため、上部の梁も斜めになっている

 

神奈川県の橋100選に選定

 

旭橋から南側(下流方向)を望む

  

旭橋の西端から箱根湯本駅方を望む

 

 

 

函嶺洞門

函嶺もみじ橋から洞門を望む

 

旭橋をあとにして西に進んで行くと、ほどなく函嶺洞門が見えてくる。「洞門」とは、落石や土砂崩れなどから道路を守るためのトンネルに類似した建造物のことだ。落石による事故が多く発生する場所のため、1931年(昭和6年)に落石防護のために建設された。

 

山と一体化しつつある函嶺洞門

 

所在地:神奈川県足柄下郡箱根町湯本
竣 工:1931年(昭和6年)
形 式:鉄筋コンクリート造6連
長 さ:100.9m
幅 員:6.3m

 

現在は、洞門を迂回する函嶺洞門バイパスが完成し、2014年(平成26年)に函嶺洞門は通行禁止となった。

 

通行禁止のため、立ち入りができないようフェンスで囲まれている

 

函嶺さくら橋から洞門を望む

 

 

下の3D画像は、函嶺洞門(左側)とバイパス(右側)の位置関係を示したものだ。バイパスができるまでは、早川に沿ってそのまま1号線は続いていた。バイパスが完成したことにより、函嶺洞門の手前で「函嶺もみじ橋」を渡って右方向に迂回し、すぐに「函嶺さくら橋」を渡りもとの1号線に戻る形になっている。

 

宮ノ下方を望む Google3Dマップより

 

 

 

千歳橋

千歳橋の東端から宮ノ下方を望む

 

函嶺洞門からさらに西に50mほど行けば、千歳橋がある。

所在地:神奈川県足柄下郡箱根町塔之澤
竣 工:1933年(昭和8年)
形 式:鉄筋コンクリート下路式タイドアーチ
橋 長:25.5m
幅 員:9.0m 

 

旭橋と同時期に架設された貴重な橋の一つである。

 

旭橋よりは一回り小さい

 

旭橋とは異なるデザインの照明が取り付けられている

 

 

箱根湯本駅方を望む

 

 

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