絵画に関してはまったくの素人だが、それでも、この人の絵は好きだなぁと感覚的に感じる方はいる。
その1人が、版画家の川瀬巴水(かわせはすい)である。1883年(明治16年)生まれの巴水は、亡くなる1957年(昭和32年)まで、日本各地を旅して風景をスケッチし、四季折々の日本の原風景を描いた多くの版画を残している。
最近のお気に入りは、冒頭でも紹介した、隅田川に架かる清洲橋の版画だ。
清洲橋は1928年(昭和3年)の竣工で、版画作品が発表されたのが1931年(昭和6年)なので、まだ橋が出来たばかりの頃だろう。
空も海も滲ませ方の異なる微妙な美しいグラデーションで描かれる中、夕やみに沈みゆく清洲橋の鋼鉄の質感がずっしりと感じられる。それゆえ、少しひんやりとした空気が流れそうなところを、橋上のオレンジの照明灯が、なんともいえないあたたかみを醸し出している。
ちなみに、清洲橋が竣工した時期のモノクロの絵葉書と並べて比べてみると、正確な描写力を感じつつ、川瀬巴水ならではの世界観にうっとりとしてしまうのだ。
川瀬巴水と清洲橋に関しては、ほぼ日のサイトに以下の記事が掲載されているのでご興味ある方は下のリンクからどうぞ。
「美しき日本 ― 大正昭和の旅」展 江戸博学芸員新田さんと小山さんのさらにくわしい解説
ちなみに、清洲橋は100年近くたった今でも現役である。
東京都新宿区にあるSOMPO美術館では、2021年12月26日(日)まで、「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」と題して、初期から晩年までの川瀬巴水の作品を展示中である。
★残念ながら今回の展示作品リストに、清洲橋はないようだ