港から六島灯台まで、ずっと4匹の猫がついてきた

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

到達:2026年4月
難易度:■■□□(初級)

六島灯台(むしまとうだい、岡山県笠岡市)のクエストは、港から灯台まで猫と一緒にのぼる20分、中級レベルの山登り、児童数1人の小学校、クラフトビールのブリュワリーでのビールとランチ、4時間半があっという間に過ぎた、充実の滞在だった。

 

六島行きの船が出る笠岡住吉港は、JR山陽本線笠岡駅から徒歩5分ぐらい。鉄道駅から徒歩で行ける、という非常にありがたい立地にある。

改札を出てから地下道をくぐって線路の反対側に行くとか、路地が狭くてわかりにくいとか、ちょっとした注意点があるが、案内板が充実しているのであまり迷わないと思う。

笠岡市の沖合にある笠岡諸島は高い密度で島が密集していて、有人島も7つある。船はそれらをかいくぐるようにして六島に向かう。

(国土地理院)

「笠岡港」と呼ばれる港はいくつかあり、さらにその一つの住吉港から出る航路も複数あるので、間違えないように。

約1時間で六島の前浦に到着。まだ桜が咲いている。左にあるのは待合所兼トイレ兼診療所。

この日はほとんど波がなかった。ただ、とくに冬(後述する水仙の時期とか)、雨の降った翌日は海が荒れて欠航することもあるという。

 

左方向に5分ほど歩くと、クラフトビールのブリュワリー(六島浜醸造所)があり、店の前に野良猫が10匹ぐらい集まっていた。いずれも野良っぽい毛づやと体つき。ちょっとかまってやった。猫にひっかかれる人も多いそうなので、手を出すときは注意してね。

ちなみに、六島でランチできるのはここと、湛江(たたえ)集落のゲストハウスだけ(どちらも予約が必要)。自動販売機などはない。

 

店の手前にある「灯台→」の案内板に従い、路地に入って灯台に向かう。

島によくある急な階段。灯台への案内板は曲がり角ごとにこまめに設置されているので、迷う心配はない。また漁具のブイ(浮き)を使った猫の顔もいたるところにある。

このへんで住宅地は終わり。

で、猫が4匹、ずっとついてくるんですけど?

 

この左側はおそらく一面の水仙畑。花の時期にはかなりきれいだろうな。ここほどではないが、島内にはほかにも水仙が生えている(植えられている?)ところがあった。島の一つのウリだね。

ただ、5年ほど前からイノシシが出て(四国から泳いで渡ってきたらしい)、水仙が荒らされるようになっているそうだ。水仙には毒があるのでそのものではなく、球根に付く虫を食うらしいが、困ったものだ。

振り返ると集落と前浦港が見渡せた。

水仙畑を抜けると道は次第に傾斜が緩くなる。

猫が減った?と思うのだが、少し離れながら結局4匹ともいる。

灯台にのぼる階段が現れた。

すでに階段の先に灯台が見える。

 

六島灯台に到着。下船してから約20分だが、猫をかまったりしないで直行すれば15分ぐらいだろう。

これは1984年(昭和59年)2月に改築されたもので、初点灯は1922年(大正11年)12月と古い。

 

六島と香川県の荘内半島の間は、瀬戸内海の東西を行き来する船が多数通る要所だ。荘内半島にある讃岐三埼灯台(さぬきみさきとうだい、香川県三豊市、1959年初点灯)は、天気がいまひとつだったが、かろうじて見えた。

これぐらいの近さなら、イノシシも泳いで来られるのだろう。

反対に、讃岐三埼灯台から見た六島灯台がこちら。

この海域にはほかに鍋島灯台(香川県坂出市、なべしまとうだい、1872年初点灯)、板持鼻灯台(いたもちはなとうだい、香川県多度津町、1967年初点灯)、二面島灯台(ふたおもてしまとうだい、香川県多度津町、1938年初点灯?)がある。

(国土地理院)

 

結局灯台までついてきた4匹の猫たちは、ひと仕事終えたということか、ゆっくりとくつろいでいる。ここへはよく来ているんだろうか。ベンチの上は黒猫に見えるが脱いだパーカーで、黒猫はベンチの右下にいる。向こうに見えるのは荘内半島だ。

まだまだ予約したランチの時間には早い。せっかくなので、島の中心、大石山(おおいしやま)の山頂までのぼることにした。灯台の脇道を、クモの巣をよけながらのぼっていく。

大石山山頂までは25分らしい。灯台のある場所は標高およそ60m、山頂は185mなので、標高差100m以上をその時間でのぼることになる。

道はイノシシがほじくり返した跡だらけで歩きにくい。さっきまで薄曇りだったのに、日差しがちゃんと出てきて暑い。

1カ所倒木があって、またぐのもくぐるのも無理そうだ。この先も同じように道が通じていないことも考えられる。そこまで行ってから引き返すとしたら、またここを通らなければならない。ちょっと迷ったけど、何メートルか藪の中を回り込むことでなんとかやりすごせたので、このまま進むことにした。

「先へ行こう」と思う助けになったのは、倒木の少し先に見えるピンクのリボンだった。この先もリボンとロープが、進む方向を見つける役に立った。島の人たちが整備してくれているそうで、ありがたい。

このあたり、撮影するだけの余裕がなく、写真がほとんどない。灯台へは到達したので、という気持ちもあったし。

 

案内板の通り、ほぼ25分で大石山山頂に着いた。もう汗びっしょりだ。

QRコードの付いた案内板などもあるし、定期的に整備されている感じはある。とすれば、右下の矢印が示す「小学校」に向かう道も通じていそうだ。「登山案内図」には灯台と山頂を結ぶ、いま来た道が描かれていなかったりするが。

というわけで、小学校への道をおりていったが、これがなかなか大変だった。のぼって来た道と違い、目安となるピンクのリボンがない。ロープ、(コンクリート製)木段、赤く塗った木の道標などで、かろうじて道があっていることを確かめながらおりていく。

灯台から山頂への道よりも傾斜がきつい。このあと道が通れなくなっていたり、道がまったくわからなくなったりしても、もう山頂経由で灯台まで引き返すことは考えられない。

3回ぐらい道を見失った。ここはくぐるべき? それとも道ではない?

スマホのGPSで現在位置と方向を見て、小学校から離れないようにしつつ、低い方に向かう。藪を強行突破したあと木段を見つけると安心する。

ところが、通ったあとに振り返ると、ちゃんと道が見えたりする。のぼりなら迷わないのかもしれない。ただし、小学校から山頂を経由して灯台に行く(つまり今の逆)ルートは、のぼりがキツいのでお薦めしにくい。

途中、ほぼ満開の桜があった。ちゃんと下までおりられるかどうか、心配しながらの道中で、ちょっと気持ちに余裕が出た。

この「←小学校」の案内板は助かった。右か左か迷ったんだ。この付近にも水仙と思われるものが生えているが、ところによってイノシシにやられている。

 

山頂から30分ぐらい経ったころ、校庭っぽいものが見えてきた。小学校だ! いやー、ホントにほっとしたよ。

前浦港の桟橋から、六島小学校まで、歩いた経路はこんな感じ。国土地理院の地図にある「徒歩道」は実際と違うこともあるので、途中の経路は赤矢印を省略している。

(国土地理院)

六島小学校の校庭。この右上あたりからおりてきた。

校庭から見る海の景色はなかなかだ。

外でなにかの作業をしていた校長先生が、「本当は児童が渡すんですけど、いま授業中なので」と言って、ご自身が水仙の折り紙を渡してくれた。島に来た人に配っているらしい。

ところが小学校で現在唯一の“児童”は6年生。その子が来年卒業すれば、この小学校は休校になってしまう。ということは、この折り紙をもらうこともなくなってしまうのか。

灯台を見にいく途中で、廃校/休校になった小中学校を見ることも多い。いくつもの教室に児童・生徒があふれていた、そういう時代もあったんだと思うと、その土地により親しみが湧いてくる。

というわけで、結果的にはちょうどランチにいい時刻にブリュワリーに戻ってきた。大汗をかいたところで飲む、セゾンタイプのビールがものすごくうまい。

このあとカレーを食ったり、ラオホやスタウトのビールも飲んでいるうちに、あっという間に帰りの船の時間になった。「もてあますのではないか」と心配していた4時間半の滞在時間が、まったく充実したものとして終了した。

 

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