2022年6月、11年ぶりの全線開通を間近に控えたJR只見線不通区間を再訪した。第6只見川橋梁近くまでくると、深い森色の只見川が目の前をゆっくりと流れていた。
阿賀野川水系の只見川。改めて調べてみると、水源は尾瀬沼であることを知り驚く。尾瀬の南にある群馬県片品村には何度か足を運んだことがあるが、まさかあんな場所から流れてきているとは!
本名(ほんな)ダムと発電所は、只見線の本名駅から徒歩圏内にある。残念ながら列車はまだ動いていないので、只見駅から代行バスに乗り本名駅近くで降ろしてもらう。
国道252号を西に進むと、第6只見川橋梁が見えてくる。ダムと発電所はあの黄色い橋のすぐ奥(上流側)にある。
本名トンネルの開通から約2年後の今年1月に、全長2.7kmの国道252号本名バイパスが開通している。以前は本名ダムの天端(てんば)が国道252号のルートになっていて、そこそこの交通量があったみたいだけど、今はもうダムのある旧道に車は流れていかないんだろうな。
ロックシェッドを抜けると、本名発電所の一角が目に飛び込んでくる。
これまで、色々な発電所の近くに行くことはあったけど、こうして真上から見下ろせる発電所は初めてかもしれない。碍子(がいし)の三角帽子(たぶん、専門用語があると思うけどわからない)が、足軽みたいでかわいいな。
上の写真、天端の上部にある水色トラスのゲートピアも萌えポイントなんだけど、それよりもゲートピアの下にある、ゆるいアーチ状のトラスに注目してほしい。
ダムと同時期の1955年(昭和30年)に開通した本名橋で、14~16mの支間長を持つ9連の上路トラス橋だ。天端はダムの堤体の最上部に位置する場所だが、この本名橋は天端というよりも、下流側にせり出して橋脚で支える独立したトラス橋という感じだ。
左岸側に本名発電所の出入口ゲートがある。本名発電所は東北電力の管轄だ。
橋の欄干の隙間から、上流側をこっそり見る。いや、別にこっそりみなくてもいいんだけども 笑
以前、ダムの歴史に詳しい方から伺ったのだが、1951年(昭和26年)に発足した東北電力は阿賀野川や只見川流域を中心に多くのダムや発電所を建設していて、その最大の特徴が鉄骨トラスの多用とのことだった。
以前に訪れた上野尻(かみのじり)ダム(福島県西会津町)も、トラス造りのピアゲートがかっこいいなと思ったけれど、本名ダムはもう別次元のトラスの嵐で、ある種のインダストリアルな芸術性すら感じてしまう。
ダムのゲートピアは、発電所のものより少し高さがある。ダムのローラーゲートは4門。
昭和30年代ぐらいまでの古い橋に特徴的な数多くのリベットが、トラスのあちこちに見える。
橋の途中まで来て、右岸側を振り返る。
橋からは、第6只見川橋梁の全体像がよく見える。平成23年の豪雨で流出した以前の橋梁は下路式トラスだったが、新しい橋梁は色は同じ黄色のまま上路式となり、橋の上部構造が増水に影響を受けにくい構造になっている。
11年ぶりに、この黄色い橋の上を只見線の列車が走る。
列車のがたごとという走行音の振動が、この鉄骨トラスを少しだけ震わせるだろうか。
そんなことを考えながら、本名橋をあとにした。