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3年ほど前に、オンタリオ湖のオスウェゴ灯台を紹介したことがある。オンタリオ湖は、アメリカとカナダの国境にある五大湖の一つだ。
湖といえど半端なく荒ぶるオンタリオ湖と、それゆえに灯台が必要なのだということを知った。
今回紹介するのは、同じ五大湖の一つ、オンタリオ湖よりも西にあるミシガン湖の灯台だ。冒頭の画像である。
灯台のある場所をズームしてみると、ミシガン湖に注ぐグランド川の両岸から2本の突堤が伸びている。本記事では、北側の突堤を北桟橋、南側を南桟橋と呼ぶことにする。
南桟橋には2つの灯台が並んでいる。
桟橋の端にあるのがアウターライトで、その右側にあるのがインナーライトだ。
(アウターライトは、エントランスライトとも呼ばれている)
最初にこの灯台の写真を見たとき、なぜ1つの桟橋に2つの灯台(しかも一つは家の形をしている)があるのか?桟橋にある黒い柵のようなものはなんなのか?いろいろ気になって調べてみることにした。
霧笛小屋と灯台が合体
まずは現在のアウターライトを見ていこう。
南桟橋は約461mで、アウターライトは桟橋の先端にある。2020年4月に撮影された上の画像は、岸側から見たもの。家のような建物は霧笛小屋で、霧信号所(fog horn station)だと思われる。
雪や霧の深い悪天候時に音を出して船に位置を知らせる音波標識(施設)。灯台に併設される場合が多く、音の鳴り方(周期)でどの灯台(霧信号所)かがわかりました。
犬吠埼灯台大百科(https://inaboye.jp/wordpress_6/)
逆側から見たのがこちらの画像。霧笛小屋に灯台が組み込まれた一体型となっている。みんな釣りをしたりでとても楽しそうだ。
ちなみに、真冬ともなればこんな様相になる。深い霧もでて、湖や建物は凍り付くのだからまったく油断できない。
赤い光を放つ鋳鉄製の灯台
続いて内側にあるインナーライトだ。約15m(52フィート)の鋳鉄製の灯台で、桟橋の先端より約182m(600フィート)後方に設置されている。
灯台が赤く塗装されたのは1918年。(絵葉書で見る限りそれ以前は白だったようだ)
灯台が放つ赤色光に合わせてとのことらしい。
現在のレンズはVLB Marine LED Beaconで、いまも3秒赤く光り1秒消えるを繰り返す。
ちなみに、以前は4等のフレネルレンズが設置されていたが、いまは取り外されトリシティ歴史博物館に寄贈、展示されている。
現地にいかなくてもこうしてみることができるんだから、ありがたい話である。なんて美しいんだろ💛。
黒い柵の正体はキャットウォーク!?
黒い柵に見えるのはキャットウォークで、以前は歩けるように板が張られていた。上のほうの画像でもご覧いただいたように、このあたりの気象は激しい。暴風や高波時であっても、霧笛小屋や灯台に行き来できるように、高さのあるキャットウォークが設置されたのだ。
次の画像には、キャットウォークと灯台の接点が映っている。確かに、キャットウォークから塔の途中にあるドアを開けて、中に入ることができそうだ。
しかし、1969年に灯台の照明が自動化されたことにより、キャットウォークの使用頻度が激減。その後、老朽化が著しいため、1987年に取り壊されることになっていた。
ところが、キャットウォークを救え!という運動が巻き起こり、歩く部分の木の板を撤去し、支柱を補強、桟橋全体に照明を設置するための資金調達が行われ、現在のような姿に落ち着いたのである。
どうだろう。有明海にある長部田海床路 (ながべたかいしょうろ、熊本県宇土市)をゴージャスなしたような雰囲気、ちょっと派手な気もするがアメリカらしくていい感じではないだろうか。
さて、実は本当におもしろいのはここからだ。
黎明期のインフラ事業あるあるなのだが、失敗とたゆまぬ努力の積み重ねがここにある。グランドヘイヴンの灯台も、作ったり壊したり移動したりを150年近く続けて、この美しい光景の“いま”があるのだ。
とはいえ、長くなってしまったので続きは後編【なぜその位置に編】で!