コンテンツ
新潟県にある「親不知(おやしらず)」という地名をご存じだろうか。日本海から立ち上がるように断崖絶壁が続くこの地は、江戸の昔から通行するものを阻む難所として有名だった。
なんとか安全に通行できるよう、道路を作り、トンネルを掘り、鉄道を敷くなど、多くの年月をかけてこの難所に立ち向かってきた歴史がある。
そして令和の現在、親不知駅の周辺は、海側から北陸自動車道、国道8号線、鉄道、県道と、狭い場所に複数の交通路がひしめきあっている。特に海岸線沿いにある橋梁は潮風にさらされ塩害をうけやすい。このため、通常のメンテナンスとは別に、損傷の度合いにより架け替えなどの根本的な対策が行われることもある。
国道8号線の歌高架橋(うたこうかきょう)は、2017年(平成29年)に新橋への架け替えが行われた。下図のように、北陸自動車道に隣接していた旧橋(下図では「現橋」と記載)のすぐ隣に新橋を作ったのである。
架け替え自体は3年以上も前の話であるが、その後、旧橋はどうなったのだろうか。調べてみると、どうやらまだ橋脚の一部などが残されているらしい。早速現地に行ってみることにした。
国道8号線への徒歩ルートを確認
親不知は、2015年(平成27年)の北陸新幹線延伸により、えちごトキめき鉄道の駅となった(以前はJR西日本の北陸本線の駅)。ホームに降り立つと、海への視界を遮るように高架橋がそびえたつ。
事前に親不知駅周辺の道路について調べたのだが、自分の空間認知能力が低いからなのか、平面図はもちろん、Googleのストリートビューをみても今一つよくわからなかった。実際に現地を歩いてみてようやく道の絡まり方がわかってきた。
まず親不知駅の改札をでて、目の前にある県道525線を東方向に道なりに行く。そのまま海に向かって上り坂になり、国道8号線に続く連絡道に入っていけばいいのだ。
では早速、駅をでて国道8号線に向かうことにしよう。
親不知駅から国道8号線へ
北陸自動車道は親不知駅の手前(東側)で、国道8号線の上を海側に円弧を描くように抜けていく。
さらに県道を歩いて行くと、小さな川を渡る。上の写真、水色の桁(国道8号線)の手前にあるのが県道に通じる連絡道路だ。
国道8号線と同じくらいの高さまで上ってきた。この位置から見ると、北陸自動車道が弓のように大きく円弧を描いているのがよくわかる。
新しく架け替えられた高架橋を歩く
国道8号線に入り、歩道を歩いて行く。
この日はよく晴れていたので、空と海の青が北陸自動車道に反射し全体が青みがかってみえる。
おそらくここから先が、新しく架け替えられた新橋になると思われる。新橋の右側の空間は旧橋があった場所だろう。進行方向のだいぶ先に、工事中の重機などが見える。
このあたりでは、北陸自動車道の2本の橋脚は両方とも海の中だ。こどもの頃の記憶にある黒い日本海のイメージを覆す、南国のような海の色に少し驚く。
重機の見える場所の手前に、背の低いコンクリートの塊が見えてきた。最初はなんだけわからなかったが、かつては橋脚だったもののようだ。ここからさらに、何か処理をするのだろうか。
いままさに解体処理中という場所までやってきた。2つの橋脚に足場が組まれている。訪問した日は日曜日だったので作業現場には人影もなく、時折通る車の走行音がするばかり。
さらに歩いて行くと、むき出しの橋脚がみえてきた。
むき出しの橋脚が3つ続いたところで、桁を撤去している途中の現場に着く。こんな景色を間近で見る機会はなかなかないので、つい魅入ってしまう。
解体工事は続く
正直なところ、これほど旧橋がまだ残っているとは思わなかった。しかも解体の様子が段階的に見ることができて、私としてはうれしい想定外である。
どの状態がゴールになるのかわからないが、それでもまだまだ相当な時間がかかるであろうことは門外漢の私にも想像がつく。
こうしたインフラは、作るだけでなく保守と撤去もセットで考えなければいけない・・と専門家の方がおっしゃった言葉を思い出す。
国土交通省高田河川国道事務所によると、糸魚川地区橋梁架け替え事業において対象となる9つの橋のうち、2017年度の時点で進捗状況は下図の通りとなっている。
先日訪問した際、車窓からではあるが青海川橋の工事の様子が見えた。下図の青色で書かれた4つの橋も架け替え作業が進んでいるのだろう。
最後に下の動画は、北陸自動車道と国道8号線の全体をドローンにより4Kで空撮されたもの。立体的な位置関係が非常によくわかるだけでなく、映像としても美しいので、ぜひご覧いただければと思う。
親不知駅については、姉妹サイト「風に吹かれて無人駅」の別記事で紹介しています。