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いかにも「山寺」という名前にふさわしい趣の山寺駅は、1933年(昭和8年)に開業した。当時はまだ仙台と山形の間が全線開通しておらず、仙台から作並までが仙山東線(せんざんとうせん)、羽前千歳から山寺までが仙山西線(せんざんさいせん)としての運行だった。
仙山西線の終点駅だった山寺駅には、当時運行していた蒸気機関車が方向転換するための転車台もあり、現在も鉄道遺構として駅近隣に残っている。
仙山線として全線開通したのは1937年(昭和12年)のこと。現在は宝珠山 立石寺(通称「山寺」)の最寄り駅としても知られている。
2020年の晩秋に、仙山線に乗る機会があった。スケジュールの関係で滞在は1時間と短かったが、山寺駅周辺を散策したのでその様子をレポートする。
懐かしさ感が漂う駅ホーム
山寺駅のホームは東西に伸びている。ホームから西方向(山形方面)を見るとミニ富士のような山がみえる。地図で調べてみると、隣の高瀬駅のすぐ北にある大森山(標高367m)のようだ。
ホームの東端からカーブが始まっており、仙台からの電車は大きなカーブを描いてホームに侵入してくる。
駅舎へ続く階段はホームの東寄りにある。階段に向かって歩いて行くと、前方左手に「やぐら」のようなものが見える。このやぐらが、山寺駅に設置されている見晴台だ。
ホームの右手側には、事前に知らないと気が付かないが、転車台の跡がみえる。その場所で蒸気機関車がくるりと向きを変えていたのだと思うと、感慨深い。
階段を降りていく。壁が漆喰のようなアイボリーで、鉄骨が茶色に塗られているので、お城の中のような雰囲気がある。
山寺駅には機械的な改札ゲートはないが、列車が到着した直後は、駅員さんが通路に立って検札をする。
見晴台から眺める立石寺
山寺駅の北側には、年月をかけて浸食された山肌に立石寺(りっしゃくじ)の御堂や祠が点在している。860年(貞観2 年)に慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が創建した宝珠山立石寺は、通称「山寺」と呼ばれ、多くの参拝客が訪れる。
駅に隣接した見晴台に上ってみよう。
180度途中で向きを変える折り返し階段を上り、見晴台へ。
階段を上り切ると、眼前に広がるピクチャーウィンドウ。
ピクチャーウィンドウの奥には、紅葉に彩られた樹々と岩肌が連なり、よくよく目を凝らすと立石寺の御堂が見えてくる。
少し拡大してみたのが下の写真だ。
中央右寄りにはっきりと見えるのが五大堂。断崖絶壁に立ち、周囲を一望できる。
写真の撮影角度を少し変えてみる。五大堂と開山堂の右にある崖のでっぱりの上に小さな御堂があるのがわかるだろうか。この御堂は「納経堂」といい、名前のごとく写経が納められている御堂で、山寺の中で最も古い建物だという。
ちなみに、下の写真はWikipediaに掲載されていた、冬の納経堂だ。まるで水墨画の一シーンのような風景に、時が止まるようである。
その昔、松尾芭蕉がこの地に一泊し、あの『閑さや岩にしみ入る蝉の声』を詠んだという。もしこの雪の季節に訪れていたなら、いったいどんな名句が生まれていたかと、想像してみるのも楽しい。
郷土色香る駅待合室
駅の待合室には、山形らしく花笠の飾り付けがあちこちに見られた。
JR仙山線の駅には完全無人で券売機もないところもあるが、山寺駅には自動券売機が設置されている。
また時間限定となるが、みどりの窓口があるのもうれしい。
東北の駅100選にも選ばれた山寺駅。次に訪問できることがあれば、もう少し時間をとって、立石寺の御堂をつなぐ1050段の階段を上って山の上まで行ってみたいものである。