突然ですが皆さん、「恋する灯台プロジェクト」なるものをご存じですか。日本ロマンチスト協会(そんな協会が!)と日本財団が共同で企画したもので、灯台を「ふたりの未来を見つめる場所」→「ロマンスの聖地」として地域の活性化を図るソレである。
「未来を照らす灯台が、ふたりの道標になる」というキャッチコピーにはあんまり心を動かされないが、ちょっとロマンチック風な灯台の一覧は、こんなやさぐれた私でも見ていて少しだけわくわくする。灯台はいいやね。
そんな恋する灯台にめでたく2019年に認定されたのが、今回紹介する艫作埼(へなしさき)灯台だ。
青森県西津軽郡深浦町にある艫作埼灯台の認定理由の一つは、“日本海北部として最大級の高さ”だった。調べてみると、確かに近隣の半径20km圏内にある灯台の中では一番背が高い。
大戸瀬埼灯台 | 鳥居埼灯台 | 艫作埼灯台 | チゴキ埼灯台 | |
光度(カンデラ) | 75000 | 5600 | 770000 | 240000 |
光達距離(海里) | 18.0 | 12.0 | 21.5 | 18.5 |
塔高(m) | 13 | 10 | 24 | 13 |
灯高(m) | 54 | 27 | 68 | 47 |
ちなみに、「ごらんあれがたっぴみさき・・」のあの曲にでてくる岬に立つ龍飛埼(たっぴざき)灯台は、80kmほど北東にある。塔高こそ14mだが灯高は119mあり、津軽海峡冬景色な風格を存分に匂わせている。(残念ながら恋する灯台には選ばれていない。そらそうだわね)
ともあれ、今回は縁あって艫作埼灯台へ行く機会を得た。灯台に行く・・とそう思うだけで、なんとなく楽しくて気分があがる。たとえ、たった一人徒歩で向かうにしても・・である。
五能線の艫作駅から徒歩で
艫作埼灯台は、比較的交通の便がいい。五能線の本数は少ないが、駅から徒歩15分程度で歩いて行ける場所にある。東側に少し迂回をして西に曲がれば、灯台への目印が見えてくる・・はずで、それはもう間違えようがない。
まずは、艫作駅を降りたら、道なりにまっすぐ進んでいく。
右手に民家の蔵が見えてきた。
艫作簡易郵便局の手前を左折。ほどなく、五能線の踏切がみえてくる。天気予報では午後は雨混じりで、黒い雲が出てきているのが気になる。
灯台はどこに?!
10年以上の歳月をかけて、秋田の東能代から青森の川部まで、五能線の全線が開通したのが1936年(昭和11年)であった。その最後の工区となったのが深浦と艫作の間で、艫作駅の近くに「五能線全通記念碑」が建立された。その後、石碑の老朽化のため、修復するタイミングで艫作崎灯台の近くに移転したということだ。
案内板の標識に従い、右の道を行く。すぐ小さな広場のような場所にでて、数本、そこから小さな小路が伸びている。盛夏の頃なので道と言っても低木や草が盛大に生い茂り、先が見通せない。
ここかな?と思った道の先に、灯台はなかった。
すぐ近くにあるのは間違いないのに、まったく見えない。
そうしている間に、空はみるみるどす黒くなり、今にも大粒の雨が降ってきそうだ。本当はここでもっとよく調べればよかったのだが、やぶだらけの道を突き進むのもためらわれ、灯台に行くのをあきらめてしまったのだ。まったく根性がないにもほどがある。
しかし、現場を遠く離れてから、ふと思い出したのだ。
標識、動いてない?と。
ストリートビューで確認すると、確かに標識は左側の道にたっている。右じゃなくて、左だったんだ。
しかし私が訪問したときは、空が暗いこともあったが、もっと草がぼーぼーとしていて左の道が灯台に通じているとは思わなかった。まぁ落ち着いて考えればわかりそうなものなんだけど、こういう失敗をしてしまう。
(というか、なぜ標識が動いてるんだって話ですよ!)
上の3D地図をみれば、気付きそうなもんだろう?と思われるかもしれないけれど、いや、本当にまったく見えないんですよ、灯台が。
艫作埼灯台を見ることができなかったが、その代わりに上のオレンジ色の道で、野生の鹿と目が合った。
ま、それで帳消しということにしようかな。
とはいえ、やはり艫作崎灯台を見ていただかないと、私の気がすまない。
今はいい時代で、素敵などなた様かがドローンで空撮してくれている。
私がリアルでみることのできなかった恋する灯台を、ぜひご覧いただきたい。
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