小雨が時折ぱらつく11月の下旬、JR磐越西線(ばんえつさいせん)の列車に揺られ上野尻(かみのじり)駅に降り立った。近隣にあるボルチモアトラスの古い橋梁を撮影するためだが、近くにあるダムもついでに立ち寄るつもりだった。
上野尻ダムは駅から北方向におよそ1kmの距離にある。道なりに進めばなんなくダムにたどりつけるはずだ。
すっかり葉の落ちた桜並木が続く川沿いの道を歩いて行くと、右手にダムが見えてきた。発電のための上野尻ダムには2つの発電所が併設されている。
ダム近くの両岸には、小さな公園のようなものがある。春になれば見事な桜で雰囲気は一変する。
公園内にあった看板を見ると、最初の発電所はダム竣工と同時の1958年(昭和33年)。2番目の発電所は比較的最近の2002年(平成14年)につくられている。
ダムの上流側から近付いて行ったが、いったんダムを通り過ぎて、下流側からダムを眺められる位置まで移動した。
重力式コンクリートの上野尻ダムには8つのローラーゲートがある(下の写真、薄緑色のゲート)。人や車が通行可能な天端(てんば)の上に水色の鉄骨トラスがにょきっと立つ姿が印象的だ。
ダムの天端まで戻ってきた。
ダム建設前には上流側の少し離れた場所に橋があった。ダム竣工時にその橋は廃止となり、天端は福島県道338号の新しい柴崎橋となった。
また1990年には、柴崎橋のすぐ横に歩道橋が架けられている。
ダムの天端を歩きながら、鉄骨トラスを見上げる。この上の通路らしき場所まで上れたら、また違った眺めが広がるだろう(関係者以外立ち入り禁止だと思うが)。
天端からローラーゲートをのぞきこんでみる。それほどの高さはないが、それでも下を見るとぞくぞくする。
天端を渡りきる。深い緑色の水を湛えた阿賀川(新潟県に入ると阿賀野川に名前が変わる)の表面には、霧雨の小さな水紋が無数に広がっていた。
阿賀川沿いを少し歩いてみた。
ダムを少し離れた場所から眺める。ダムのゲートと鉄骨トラスが、鏡のように阿賀川に映りこんでいた(冒頭の写真)。それはまるで、空と川に向かいダムが背を伸ばしているかのような光景だった。
桜の咲く時期になると、近くの鉄橋を通るSLを撮影する人たちで大変な賑わいになるというこの場所。
今は冬が訪れるのを、静かにひっそりと待つばかりだ。