4本のロープの助けをかりながらのぼる日振島灯台、往復1時間の大冒険

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

到達:2026年4月
難易度:■■■□(中級)

日振島灯台(ひぶりしまとうだい、愛媛県宇和島市)への登山道は傾斜がきつく、難易度は相当高い。スニーカーの場合はアイゼンを装着することをお勧めする。難易度高めの灯台クエストに挑戦したい人向けの灯台だ。

 

日振島灯台があるのは四国と九州に挟まれた豊後水道。この海域の主な灯台は次のとおり。

(国土地理院)

このうち水ノ子島灯台の灯火はとくに強力で、光達距離は約37km。この海域のほぼ全体に光が届くのだ。

日振島灯台は、佐田岬、関埼、水ノ子島の各灯台に比べると、重要度や知名度はやや下がるが、それでも存在感のある場所にあるのは確かだ。

日振島へは宇和島新内港から定期船が1日4往復(高速艇が3往復、普通船が1往復)出ている。日振島には3つの寄港地があるが、灯台に近いのは能登で、宇和島からは50~60分かかる。

通常運行であれば、次の便まで4~5時間あるので、3~4時間近くの時間を持て余してしまう。ところが今回は普通船のドック入りに伴い、別の高速艇による代船運航が行われている期間で、幸運なことに「次の便まで2時間」という効率のいい滞在ができた。ドック入りの頻度は不明だが、1年に1回だろうか。

 

能登港に到着した。人が多いのは、翌週に予定されている桟橋補修工事のためのようだ(この工事の日だったら能登での乗り降りができなかった、いろいろ運がよかった)。

桟橋の左手が港の奥。黄緑色の壁の家あたりにのぼり口がある。灯台は、写真右の山の向こうあたりだ。

地図で見るとこんな感じ。海抜117mまでを水平距離400mぐらいでのぼる。とくに最初の50m(太い等高線)がきつそうだ。

(国土地理院)

高い擁壁が目印だ。すべり台の先を左にはいる。

民家が終わったところに擁壁をのぼる階段がある。左端の排水溝をまたいで階段にたどり着く。

こうやって見上げると、急だなあ。

 

階段をのぼって柵の間を抜けるといきなり崖だ。傾斜がきついので、ロープにつかまってのぼるしかない。

先人のみなさんのおかげで(いつもありがとうございます)、こののぼりがわかっていたので、用意したアイゼンを装着。

1本目のロープが終わったあたりに2本目。

あまりにロープに体重をかけていることに気づいた。万が一ロープが切れたりしたら思いっきり転落してしまう。もっと足で踏ん張らないといけない。

のぼるのにせいいっぱいだったせいか、何を撮ろうとしたのかよくわからない。

2本目の終わりだと思う。3本目かもしれない。道であることはわかるが、路面とほかの場所の傾きにほとんど違いがない。紀伊宮崎ノ鼻灯台を思い出す。ここもアイゼンが必要だった。

3本目か4本目。

これは4本目じゃないかと思う。先端何メートルかは枯草や土に埋もれていた。

ロープは4本で終わりらしい。だがロープが終わってもこんな道が続いている。

傾斜がきついので、手も地面につきながら進む。つかまれるものはいろいろつかむ。

 

カーブを曲がり、ようやく傾斜が少し緩やかになった。擁壁の上からここまで10分しか経っていないが、大仕事を終えた気分だ。

ここでは左が崖下、右が崖上だが、考えてみると、ここまでずっと左が崖上、右が崖下だったように思う。とすると、上掲した国土地理院の地図でつづらおりに描かれている部分は、もっとまっすぐなんだろう(国土地理院の地図の徒歩道はそれほど正確ではないことがある)。きついわけだ。

あ、そういえば「虫よけヤンマくん」を持ってきたのを忘れていた。ナップザックに付けたが、以降少なくともハチとかにはほぼ遭遇しなかった。ただ、小バエのような小さい虫にはだいぶまとわりつかれた。

「傾斜が緩やかになった」というのは、ロープがいらないぐらい、という意味であって、ラクに歩けるようになったわけではない。

灯台に行くときの、一般的な「きつい上り坂」になったにすぎない。これはうしろを振り返ったところ。このへんも、アイゼンなしのスニーカーだけだとかなり大変じゃないかなあ。

まだまだのぼりは続く。

だいぶ歩きやすくはなってきたが、道は続く。灯台はまだか!

もしかして!? 心おどる瞬間。

やった、灯台だ。

 

下船してから30分弱、擁壁から20分強、傾斜が緩やかになってから10分強、日振島灯台に到着した。

初点灯は1958年(昭和33年)2月。灯籠は昔ながらの形だが、付属舎は無粋な直方体だ。

珍しいことに、施工会社の銘板がある。「昭和32年12月竣工」ということで、初点灯の2カ月前に建物は完成した。

これに気を取られていたせいか、灯台の銘板を撮り忘れた。この下あたりにあったんだろうか。

手前は退息所(官舎)があったっぽい敷地があって開けているが、海側はほとんど場所がなく、これぐらいしか撮れる余地がない。

 

木立の間から海が見える。今ひとつの天気なので、ぼんやりとしているのだが、これは大分県津久見市と佐伯市にまたがる四浦半島ではないだろうか。とするとどこかに高甲岩灯台(たかごいわ/たかごういわとうだい)があるはず。

もう少し左は鶴御埼灯台(つるみさきとうだい)のある鶴見半島かな。とすると、その手前に水ノ子島灯台(みずのこじまとうだい)があるはず。最大に拡大したら黒い点が見えたが、水ノ子島かどうか判別できず。

夜になれば、ここからこれら3つの灯台の灯光は見えるはずだ。この場所で夜を明かす気にはなれないが。

(国土地理院)

くだりはのぼりより多少ラクだったが、時間は港まで25分ぐらいと、のぼりと大差なかった。急な傾斜、とくにロープがあるところはまっすぐ前向きではおりられず、斜め45度から横向きぐらいになり、確実に足を地面に固定しつつ一歩一歩踏み出す必要がある。くだりの局面でもアイゼンがあるとないとでは歩きやすさに大きな違いがあった。

というわけで、能登港まで戻った。灯台までの往復は1時間ちょっとだったから、帰りの船を1時間近くぼんやり待つことになった。とはいえ、通常の運航ダイヤだったら3時間待たなければならなかったのだから、今回の幸運が身にしみた。

 

最後に、宇和島新内港から日振島への往復で、船から見えた灯台を紹介しよう。

(国土地理院)

宇和島新内港を出航してすぐに見えてくるのが堂埼灯台(どうさきとうだい)だ。日振島に行く前にここにも行ったので、これは別の記事を作成予定。

島のように見えるが、実は地続きである三浦半島(または蒋淵半島:こもぶちはんとう)の細木運河北口灯台(ほそきうんがきたぐちとうだい)。

大小島という小島に立つ大小島灯台(おおこしまとうだい)は、送電線鉄塔の右に、LED光源だけがわずかに見えている。

宇和嘉島灯台(うわかしまとうだい)は島の北寄りに位置しており、船からは見えなかった。

白い縦長のもの(写真中央)がかろうじて見えるが灯台かな? 方向や地形からして大良埼灯台(おおらさきとうだい)と思われる。

坊主碆灯標(ぼうずばえとうひょう)はかなり近くを通った。

行きと同じく九島の南側を通ったため、引出鼻灯台(ひきではなとうだい)は見えなかった。これは宇和島新内港に戻ったあとに陸路で向かったので、別の記事を作成予定。

 

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