

到達:2025年7月
難易度:■■□□(初級)
ようやく鯛島(弁天島)に上陸し、陸奥弁天島灯台(むつべんてんじまとうだい、青森県むつ市)の前に立つことができた。感慨深い。
しかも灯台を取り巻く風景がすばらしい。これまで行った中で1、2を争う。
この島には今年(2025年)10月以降、来ることができない。“ラストチャンス”だったのだ。
鯛島は長辺200m×短編100m弱のごく小さな無人島だ。このような島に、定期的に運航されている船で行って上陸できるのは、全国でも珍しいだろう。もちろん船をチャーターすれば行ける島ならあるが。
陸奥弁天島灯台は、青森県下北半島の南西部、脇野沢港の近くにある。津軽海峡から来た船が、陸奥湾の東側、大湊(むつ市)や野辺地(のへじ)に向かう際の入口にある。入口を挟んで反対側の夏泊半島(平内町)には陸奥大島灯台がある。

鯛島には脇野沢港から観光船「夢の平成号」の貝崎周遊・鯛島上陸コースで行く。

「夢の平成号」は1989年(平成元年)の「ふるさと創生1億円事業」によるものだそうだ(当時の脇野沢村の事業)。貝崎周遊・鯛島上陸コース(7月から10月)のほか、仏ヶ浦コース(4月から10月)、イルカウォッチングコース(4月から6月)がある。

実は、2年前の2023年に一度乗ろうとしたのだが、「波が荒いので欠航」となってしまったのだ。仕方ないので、陸地からと、脇野沢-蟹田のフェリーから撮影し、ひとまず「行った灯台」にカウントした。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76956?page=3
「もう一度挑戦しようか」とも思うのだが、日帰りでは行くことができないのでそのままにしていた。
ところが。
今年7月になって「夢の平成号、今季で運航終了」というニュースを偶然発見。安全対策強化の必要があることや、利用者の減少などの理由で、今シーズン限りで運航を終わらせるという。つまり、鯛島に上陸する方法がなくなる、ということだ。
ということであわてて出かけた。
観光船が出航する脇野沢港からは、南方向に小さく鯛島が見える。

鯛島は見る方向によって大きく表情が違う。北から見る鯛島は、一番さかなっぽい。

灯台の下に目のような穴があるし、口っぽい形もある。「鯨に見える」という意見も多いのだが、尾びれが立っているのは哺乳類ではなく魚類なので、「鯛島」となったようだ。
もう少し右に回ると、尾びれと思っていた部分(立岩という名前が付いている)が結構離れていることがわかる。

そして尾びれを回り込み反対側へ。灯台へ向かう道や、横腹に開いたへこみなど、陸側からは見えなかったものが姿を現した。

船は、灯台の真下にあるコンクリート桟橋に接岸する。

桟橋からは、しっかりした歩道が延びている。

ここが、鯛島の頂上、つまり灯台へののぼり口だ。想像していたよりすごく立派な工事が行われているのがオドロキだ。夢の平成号の鯛島上陸コース開始に合わせて整備したんだろうか。

もう一つのオドロキは、鳥のフンの多さだ。島に近づいたころから気がついていたのだが、鯛島にはかなりの数のウミネコがいる。
避けようがないフンを踏みながら階段をのぼっていくと、弁天さまの鳥居とやしろ、そして灯台が並んで現れた。

階段の中央付近にある黒っぽいものは、ウミネコのヒナの死骸だ。大量のフンと羽毛のほかに、死骸もずいぶんある。ほかの鳥に襲われたのか、別の理由で死んだのかはわからない。
鯛島上陸コースが7月下旬から始まるのには理由がある。下北ジオパークのFacebookによると、ウミネコのヒナが巣立つのを待っているのだ。ウミネコとさほど大きさは変わらないが、羽色が違う鳥がいるのは、ヒナなんだな。
道の途中にあるのは退息所(官舎)の跡かなと思っていたが、弁天さまだったんだね。

そのやしろの横を通れば…。

灯台が全容を現す。非常にオーソドックスな姿だ。

挑戦2回目で、ついに陸奥弁天島灯台に到達できた。うれしい。ウミネコも歓迎してくれている(?)。

灯台を取り巻く景色、灯台から眺める景色、どちらも解放感があってすばらしい。これまで100以上の灯台に到達したが、その中の1、2を争うものだと思う。
初点灯は1945年(昭和20年)1月。戦時中になぜ?と思うが、陸奥湾の奥、大湊に軍港があった(現在も海上自衛隊の基地がある)ことが関係していると思う。
「灯台をぐるりと一周するだけだよ」という柵は、鯛島上陸コースと一緒に作られたんだろうな。

このため、反対側に回っても灯台の姿は撮影しにくい。仕方ないのでその先の風景(脇野沢港付近)を撮る。正面にウミネコの成鳥、右にヒナが写っている。

灯台を一周するともう行くところがない。四方に広がった、おだやかな陸奥湾の風景をしばらく味わったら、戻ることにしよう。

鯛の尾びれにあたる立岩にも歩道がつながっているので、そっちにも行ってみよう。

全体に丸みがある鯛島とは対照的に、岩肌の荒々しさが目立つ。岩の中央付近に四角い穴が開いている。自然にできたものではないよね?

近くまで行ったら、階段があることが判明。観光客向けの整備がすごくないか?

階段をのぼって穴の前に立つと、鯛島の全景が目に入る。これはすばらしい。灯台のために鯛島がある、と言ってもいい。

そして穴をくぐり、鯛島とは反対側に出ると、遠くに陸地が見える。青森湾と野辺地湾の間にある夏泊半島ではないかと思う。

そうであれば、中央に少し濃く見えるのが大島だ。画像を拡大してみると、陸奥大島灯台らしき白い点があるように思える。陸奥弁天島灯台と陸奥大島灯台の距離は約12.5km。気象条件次第では、もう少しはっきり見えるかもしれない。

陸奥大島灯台についてはこちら。

一方、西に目を向けると、もう少し高い山なみが見える。津軽半島だ。
手前の陸地の先端と重なるような位置に平舘灯台(たいらだてとうだい、青森県外ヶ浜町)があるはずだが、肉眼でも拡大画像でもさすがにわからない。距離は16km弱だから、見える可能性はあると思うのだが。

平舘灯台についてはこちら。
鯛島に戻り、船着き場の反対側から灯台を見る。こちらからの眺めもさまになっているな。

30分が経った。そろそろ船が出る。

とても充実した上陸体験だった。今年10月以降、この体験ができなくなるのは残念だ。夢の平成号と、関係するみなさん、長らくありがとう。

このあと、鯛島はウミネコだけの楽園になる。











