陸中弁天埼灯台を味わうなら遠景がいい、「見てからのぼる」か「のぼってから見る」か

 

ナギヒコさんから寄稿していただいた記事です

到達:2025年6月
難易度:■■■□(中級)

急な崖に作られた細い道、45度ぐらいあるのではないかという急階段。陸中弁天埼灯台(りくちゅうべんてんさきとうだい、岩手県田野畑村)へは、短時間だがなかなかハードな道のりだ。

だが、この灯台の最大の味わいポイントは、高い崖の上に立つ赤白模様の灯台という、遠景での美しさにあると思う。そのような場所にのぼらなければならないのだから、道がキツいのももっともだ。

さてあなたは「見てからのぼる」か「のぼってから見る」か。

 

「灯台クエスト」は、まず灯台の目前に到達するのが基本だから、そちらからいこう。

陸中弁天埼灯台は、三陸鉄道田野畑(たのはた)駅から、景勝地の北山崎展望台や、陸中黒埼灯台に向かう県道44号の途中にある。

(国土地理院)

ロレオール田野畑というレストランに向かう道に曲がったところに広い駐車場がある。レストランの駐車場かと思われるが、営業時間でないこともあり、クルマをとめさせてもらう。このロープを越え、まずレストランに向かう。

このレストランのすぐ右が、灯台への入口だ。ここはみちのく潮風トレイルという自然遊歩道の一部にもなっていて、ところどころにその標識がある。

階段を下りた少し先は、遊歩道に草が進出してきている。

その先は荒れていない、きれいな遊歩道だ。のぼりくだりも少ない。だが、気楽に歩けるわけではない。

遊歩道は急な斜面に作られていて、右側は海面近くまで一気に落ち込んでいる。もしつまずいてよろけたり、ころんだりしたら?という不安がよぎり、慎重な歩き方になってしまう。そういうのを(あまり)気にしないで歩ける人がうらやましい。

地図では標高15m前後のところに道があることになっているが、もっと高いように感じる。

 

歩き出して5分ぐらいで分岐点に来た。右のくだる道ではなく、左の急な階段をのぼる。先人のみなさんの情報がないと、ちょっと迷うところだ。

前掲の地図では、破線が急角度で折れ曲がっているところだ。

みちのく潮風トレイルの柱はあるのだが、道標はない。どうもこの上部の白い矢印が「急角度で左へ」を示しているようだが、これはちょっとわかりにくい。あとの分岐ではわかりやすい道標があったのにな…。

ともかくこの急階段をのぼらなければならない。傾斜が45度ぐらいあるんじゃないかと思ってしまうほどだ。水平距離で200mぐらいしかないところで、70mぐらいの高さをのぼらなきゃいけないんだから仕方ない。

しかも踏み面は水平ではなく、枯れた松葉が堆積して、下方向に傾斜している。ヘタに滑ると海面まで真っ逆さまとか!? 念のため、垂直の擬木に手をつきながらのぼる。

少しのぼって、振り返るとこんな感じ。帰りのくだりがもっとこわいかも。写真で見ると大したことがなさそうに見えてしまうのが悲しい。

息も絶えだえになって階段をのぼりきると、少し緩やかな山道になり、一息つける。

 

木立を抜けると、灯台が見えた。いいねえ。

到達するまでまったく見えない灯台は出会った瞬間の感動が大きいが、遠景から眺められる灯台もまた味わい深い。

さっきよりは緩い傾斜の階段をのぼったりしていると、灯台への分かれ道に着いた。ここには立派な道標がある。

右が灯台、左がトレイルの続きで机浜まで0.9km、いま来た方は明戸浜まで2.7km。このトレイル、全行程が生きているのかどうかわからないが、相当の健脚向きだよ。

右へ曲がればまた階段だ。

幸いなことに、この先を曲がれば、灯台はすぐ近くだ。

 

そして陸中弁天埼灯台に到着。クルマを降りてから約15分。時間は短いが緊張度と疲労度はなかなかなものだ。

赤白の縞模様が鮮やかで、バックの海と空との対比がきれいだ。ただ、太陽の位置の関係で、灯台が影になってしまう。

「鳥居埼灯台(青森県深浦町)に似ている」という意見をネット上で見かけたが、確かに2つのバルコニーや手すり、塗色などが似ているな。

開けている場所で灯台を撮ると、どうしても逆光になってしまう。

一方、灯台に日の当たる側、つまり海をバックに撮影しようとしても、場所が狭くてうまく撮れない。

そう考えると、さっきのぼり道の途中で見えた姿の方が、(多少遠くからではあるけど)いいショットなのではないか。

いやいや、実はもっといいショットがある。それは海からの遠景だ。

 

断崖が絶景の北山崎を海から眺める、「北山崎断崖クルーズ」という観光船がある。田野畑駅より南の島越(しまのこし)漁港を出発して10分ほど、観光船は灯台のある弁天崎の近くを通ると、崖の上に立つ陸中弁天埼灯台の勇姿を見ることができるのだ。

上の写真の左端に、灯台への入口にあったレストランが見える。さっき歩いた遊歩道は、ほぼ水平に写真右に延びたあと、左に曲がって灯台までのぼりつめている。

船は灯台の立つ弁天崎をぐるっと回り込むように進む。近くにはウミネコの営巣地があり、餌付けする船を多くのウミネコが追ってくる。

遠景ではあるが、いかにも「はたらく現場」(実際の稼働は夜間だが)という感じの姿。ここから見るのが、一番の味わいポイントだと思う。

 

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