ある世代以上の方なら懐かしく思い出していただけるはずの「ひょっこりひょうたん島」。1964年(昭和39年)から放送されたNHK総合テレビの人形劇である。
物語の舞台は、漂流するひょうたんの形をした島で、モデルになったと言われる場所は複数あるが、岩手県の大槌(おおつち)湾にある蓬莱(ほうらい)島もその一つだ。
今回、蓬莱島を尋ねるにあたり、最寄り駅である三陸鉄道の大槌駅をまず訪問した。東日本大震災で被災した大槌駅も三陸鉄道全線開通とともに2019年に新駅舎として再スタートした。
駅舎の周辺をぐるりと探索してみると、西側には人形劇の主要キャラクター「ドン・ガバチョ」の像が建っていた。
駅舎のある北側には、ロータリーがあり飲食店もぽつぽつと点在しているが、ホームの向こう側(南側)には何もない空間が広がっている。
が、よく目を凝らしてみると、ホームを超えたはるか向こうに何やら水門のようなものがみえる。上の写真の該当部分を拡大してみたのが下の画像だ。
さらに水門の左側には、防潮堤と思われる白い壁が延々と続いている。
これまでもあちこちの三陸の海岸を訪れるたびに、周囲の景観にはやや不似合いな真新しい水門や防潮堤を目にしてきた。完成しているものもあれば、建設中のものもあり、震災後11年たっても復興工事は現在進行形だ。
ここで大槌町の場所を確認しておこう。岩手県上閉伊(かみへい)郡大槌町は、岩手県中部の沿岸部にある。細長い形の町で、大槌川と小鎚(こづち)川の2つの川が北東にある北上山地から南東方向に流れ、大槌湾に注いでいる(2つの川の「つち」という漢字が異なっている。その理由は諸説あるようだが、それはまた別の機会に)。
下の画像は、現在の大槌湾周辺の航空写真。大槌駅から見えたのは、小鎚川水門と津波防潮堤の一部だったことが確認できる。
岩手県の津波対策施設の復旧計画によれば、もともと存在した6.4mの高さの小鎚川水門を14.5mにかさ上げし、津波防潮堤も新設。さらに三陸鉄道が大槌川を渡る鉄橋の南側に、それまでなかった大槌川水門も新設した。
岩手県のサイトには、小鎚川水門の被災直後から10年にわたる復興工事の写真が掲載されている。
かなり古い航空写真になるが、1974~1978年に撮影されたものが下の画像だ。現在のものと見比べれば、大槌川水門や津波防潮堤が存在しないのはもちろん、あたりまえに営まれていた人々の暮らしが津波により根こそぎ奪われてしまったことがよくわかる。
撮影年は不明だが、震災前に撮影された旧大槌駅がWikipediaに掲載されている。
下の2枚は、ほぼ同じ角度(西方向を望む)を撮影したもの。津波被害を受けたであろう左側中央にあるクリーム色の建物が、現在も残っていることに少し胸の奥が熱くなる。
駅の南側には、今もほぼ何もない空間が広がっている。復興計画当初は鎮魂の森・緑地公園・スポーツ施設などの整備が計画されていた。現在、「(仮称)鎮魂の森整備事業」として、一歩一歩計画が進められているようだ。大槌駅から、花の園路が見られる日が早く来てほしい。
ここで、ぜひ見ていただきたい動画がある。
4分37秒の大槌川水門・小鎚川水門工事記録映像で、どのように復興工事が行われたのか非常にわかりやすい映像でまとめられている。復興工事とはどういうものなのか、多くの人にみていただきたい素晴らしい記録映像だ。
大槌駅2階のテラスには、ひょっこりひょうたん島キャラクターの天才少年「ハカセ」が遠くを見つめている。未来の子供たちのために、予想もつかないようなアイデアを期待してるよ。
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