岩手県の大槌町(おおつちちょう)の南端、大槌湾内に外周200mもない小さな島がある。複雑に入り組んだリアス海岸に位置するこの島の名前は「蓬莱(ほうらい)島」。
1960年代に放送されたNHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルと言われている。(モデルになったと言われる島は複数あり、蓬莱島はその候補の一つ)
蓬莱島には漁師の守り神である弁財天が祭られたお堂と、赤い灯台「大槌港灯台」があった。1953年(昭和28年)に建てられた高さ7.4mの小さな灯台もまた、大槌湾の安全航行を担う守り神だった。
2011年3月に発生した東日本大震災の大津波により、この蓬莱島も大きな被害を受けた。赤い灯台は根元から折れ、島の一部は崩れ、お堂の前にあった鳥居も流されてしまった。
復興は一歩ずつ
大槌町も大きな被害を受けたが、震災の翌年2012年(平成24年)12月に、赤い灯台が再建された。釜石海上本部と大槌町が協力し、復興のシンボルとなるよう灯台のデザインを大槌町在住の住民から公募。復興のシンボルとして蓬莱島に設置されたのだ。
(詳細はこちらの「大槌港灯台のデザイン決定」を参照)
以前より4mほど高くなった灯台には、明るい未来と必ず復興するという願いが込められている。
蓬莱島と陸地は、1947年(昭和22年)に作られた約340mの防波堤でつながれていたが、震災で大破した。この防波堤も現在は復旧されており、大槌町の赤浜地区から蓬莱島まで歩いて行くことができる。
蓬莱島は、もともとは大槌町漁協の所有だったが、震災後に破産。その後、管財人の管理下に置かれていたが、2013年12月に大槌町が20万7200円で購入している。
灯台の形は変わりはしたものの、震災前と同じ様子を取り戻した蓬莱島は、小さな丘の上に立つ灯台を舳先として、海に繰り出すひょうたん島そのものだ。
いまだ多くの場所が復興途中で多くの解決すべき問題がある中、復興のシンボルの一つとして、大槌港灯台は今日も未来を照らし続けている。