それぞれのお盆 ところ変われば

 

職場で同僚女子2人がお盆のお墓参りについて話をしていた。
なんだか盛り上がってるなーと思っていると、
そのうちの一人、Bさんが私のほうにやってきて、

Bさん
Aさんの田舎では、夕方から提灯もってお墓参りにいくんですって!
そんなの聞いたことないですよね~

 

と、ニコニコしながら話しかけてくる。
せっかくの盛り上がりに水を差すようで悪いと思いつつ、

あたし
えっと、私の母の田舎は、夜に提灯をぶら下げて
みんなでぞろぞろと墓参りに行くよ

 

と言ったら、「えー怖いー」「うそー」と大騒ぎになる。

確かに、真っ暗な人気のない墓地を一人で提灯をぶらさげて忍び歩くとしたら、きっと怖い。
でも、うちのお盆のお墓参りはちょっと違う。

母の実家では、都会にでている親族がお盆頃に帰ってくる。これはよくある光景。
陽が沈むと、子供たちは浴衣に着替えて、赤いしゃんじゃくを結んでもらう。
(しゃんじゃくは、三尺帯の略語らしいが、”さんじゃく”ではどうも雰囲気がでない)
帯をキュッと結ぶとそれだけでテンションがあがるのは、どんなに幼くても、やはり「女子」だからだろうか。

お墓参りには、手提げ提灯が欠かせない。
折りたたまれた新品の手提げ提灯の底にはロウソクを立てる金具がついていて、そこに小さなロウソクを立てる。
ロウソクに火を灯したあとは、そっと、じゃばらになっている提灯を上下にひっぱる。
濃い紅色と深い緑色の提灯が、ロウソクの灯りに透けて、ぼぉっと浮かび上がる瞬間がいい。

手に下げた提灯の灯りを揺らしながら、大人たちに混じり先祖の眠る墓までの道行きは、どこか高揚した気分と、この世とあの世の交差する場への畏怖感を幼いながらも感じたものだった。

こうして夜に墓参りに行く風習のある地域では、お墓のロウソクに灯した火を、提灯に移して家に持ち帰る。
いわゆる迎え火の変型版のような意味があるようだ。

アタリマエだと思っていた風習が、成長して世間を知るようになってくると、夜に提灯もって墓参りに行くということが、普通ではないということがわかってきた。

逆に、ドラマや映画などでたまにみかける、ナスやキュウリに棒をさして、動物のような形にするのを見たときは、いったいこれは何のおふざけなの?という驚きがあった。

まったく冠婚葬祭というのは、地方によって、いやもっと狭い地域によって、本当に千差万別である。

(ちなみに、冒頭の夕方から墓参りにいくというAさんの実家は群馬県のどこか。
私の母方の実家は、新潟県の海に近い上越地方のどこかである。)

ところで、夜の墓参りに驚いていたBさんであるが、彼女の実家では、みなで墓参りに行くわけなんだけど(もちろん昼間に)お墓の前で宴会をすると聞いて、これまた驚く。

お墓の前って、そんな狭い場所で宴会を?と思ったのだが、彼女の地域のお墓は、区画が広いんだそうだ。
私は見たことがないけど、県の特性を取り上げるような番組で放送されたこともあるらしい。

 

墓の前でみなで座りこんで食事をする。お酒は飲むし、それこそ踊りだすしで、にぎにぎしい様子になるらしい。
シーミーとも呼ばれるらしく、画像検索するとそれらしいショットがたくさんでてくる。
ただしお酒飲んで踊ってるような写真はなかったので、これも色々なバリエーションがあるのかもしれないな。

繰り返しになるが、自分がアタリマエと思っている常識なんて
実は全然当たり前じゃないってことが、この世の中にはたくさんある。

Bさんの故郷は沖縄県の離島。そのどこかの地域の話である。

 

 

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