冒頭の映像『長浜大橋(通称 赤橋)ドローン空撮 愛媛県大洲市長浜』は、空活ちゃんねる様が撮影されたものです。

 

仕掛けのある鉄の橋が好きだ。一般的に「可動橋」と呼ばれる類のものだ。

可動橋には、橋桁がくるくる回転する旋回橋や、以前も取り上げたことのある橋の一部が上昇する昇開橋などがある。そして橋桁が跳ね上がる跳開橋(ちょうかいきょう)も可動橋の一つだ。

跳ね橋といえば、ゴッホの絵画にも登場する。あれの大がかりバージョンという感じだろうか。

「アルルの跳ね橋」 Vincent van Gogh, Public domain, via Wikimedia Commons

 

長浜大橋とは

長浜大橋(愛媛県大洲市)は橋長232.3m、幅員5.5mの跳開橋で、1935年(昭和10年)に竣工した。中央部の可動桁(18m)が開閉する。

アルルの跳ね橋は観音開きのように開閉するが、長浜大橋は片開きである(一葉跳開橋とも)。

 

P1010129.JPG

 

『長浜は、藩政時代より河川舟運と海運とを結ぶ重要な拠点として発展した港町で、肱川河口付近は荷物の積み替えのために数多くの船が往来しました。』(長浜大橋紹介公式サイトより)

と公式サイトに記載があるように、長浜大橋はかつては多くの船舶が往来する肘川(ひじかわ)河口に架かる橋だった。橋のタイプを跳開橋とすることで、大型船舶の航行も妨げず、地元港町の経済発展に大きな役割を果たしてきた。 

 

次の画像は、橋の中央部を写したもの。開閉するのは、路面が赤く塗られている部分だ。上部に見える直方体は橋の開閉を助けるオモリ(カウンターウエイト)で、およそ82tある。

  

左岸から右岸方向を撮影(左手方向が海)

 

開閉部を見上げる

 

跳ね上がる橋桁のすぐ横に、開閉を操作する管理棟がある(下の画像、白い建物)。

 

 

 

開閉時に道路を通行止めにする「進入禁止」のポールは、通常時は橋桁の横に設置されている。
またポールの向こう側に見えるコンクリート造の橋は、新長浜大橋で1977年に完成している。

 

開閉時には緑矢印方向にポールを回転させる

 

大型船舶の航行がなくなり、橋を開閉させる必要がなくなった今でも、点検を兼ねて定期的に開閉作業が行われている。

 

少しだけ伸びた長浜大橋

下流左岸から撮影

長浜大橋は、左岸側にポニーワーレントラスが3基、右岸側に2基、中央の開閉部という構成になっている。

次に示す橋の側面図は、上流側から見たものになる。このため上の画像とは左右が逆になっている。
ここで注目していただきたいのは、もっとも右岸より(側面図の右端)にあるトラスだ。

 

 

他の4基よりトラスが長い。

これは、河川改修のため拡幅工事が行われたからだ。もとのトラス中央部を解体し、新しいM型に組まれた部材を継ぎ足したのだ(下図の緑線部分)。

 

右岸の拡幅工事は2012年(平成24年)に完了

 

右岸側から橋を渡っていくと、継ぎ足した部分がすぐ見えてくる。下の画像の緑丸の部分だ。もとからある他の部材と少し違っているのがわかるだろうか。

 

 

次の画像の右端に見える斜材(レーシングバー)は継ぎ足した部分なのだが、リベットがなく表面がつるつるしている。逆光で見えにくいが、もし現地に行くことがあれば、ぜひこの点にも注目してみていただければと思う。

 

 

ちなみに、Wikipediaには橋長が226mと記載されているが、この河川改修により6.3m延伸したため、公式には橋長232.3mとなっている。

 

古くから残るもの、新しく追加されたもの

左岸の親柱

昭和初期に竣工した長浜大橋は、総工費29万円。現在に換算すると20億円近いとも言われる大工事だ。

橋を建造するにあたり、当時の技術が結集されているのはもちろんだが、意匠のこだわりも見逃せない。橋の顔となる親柱はレトロな趣を醸す石積みで、街灯のデザインも凝っている。

 

 

橋のところどころに設置された照明は球形で、印象的なデザインだ。もしかすると、後世になってから設置されたものかもしれない・・と最初思ったのだが、長浜大橋の設計図・照明詳細図には同じデザインの図案が描かれていたので、竣工時からあったものに間違いない。

 

左岸側のトラスに設置されている照明

 

開閉部に設置されている照明とサイレン

 

長浜大橋には戦時中に刻まれた機銃掃射の後も残っている。

 

 

 

長浜大橋が建設されてから、2025年の今年で約90年。橋には数々の歴史の証が刻まれている一方、先ほどのトラスへの継ぎ足しのように、後世に追加されたものもある。

例えば、橋の道路上にあるポールだ。

次の画像のように、両岸近くに、車両の通行を規制するようなポールが路面上に設置されている。

 

右岸側に設置されたポール

 

対面通行ができないようにするためのポールか?と思われたのだが、ポール以外の場所では幅員が5.5mあるので、車両のすれ違いは可能だし、実際に橋の上で車がすれ違うこともある。

次の画像は、実際にポールの間を車が通過しているものだ。

 

左岸側に設置されたポール

 

一般車がぎりぎり通れる幅でポールが設置されていることがわかる。

おそらくは、大型車両の通行を制限するためのポールなのかもしれない。橋の保全を考慮しての規制なのだろう。

跳ね上げの角度が変わった

現地案内板より

現地訪問したときには気が付かなかったのだが、帰宅してからいろいろ調べていると、あることに気が付いた。

開閉部の橋桁の角度だ。

竣工当時は、上の画像のように跳ね上げる角度は90度だった。

ところが、現在は60度程度となっている。理由はわからないが、点検としてはその程度で十分ということなのだろうか。

また竣工時は、開閉するモーターは7.5馬力だったが、現在は案内板にもあるように15馬力(7.5馬力のモーターが2基)で稼働させているとのことだ。

 

長浜大橋は、現役で稼働する日本最古の道路可動橋だ。地元では「赤橋」として親しまれている。国の重要文化財にも指定された、美しく歴史の息づかいを感じる赤橋の雄姿を、もう一度ご覧いただこう。

 

 

【注意】

長浜大橋は補修工事の影響で、令和7年10月15日から令和8年3月25日まで、車両通行止めとなっています。
詳しくは、大洲市の案内をご覧ください。

 

【参考文献】

「四国技報」第12巻23号 平成24年7月1日  「長浜大橋部分改造について

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