到達:2024年3月
難易度:■□□□(入門)
中ノ鼻灯台(なかのはなとうだい、広島県大崎上島町)は、今から130年前の1894年(明治27年)、布刈瀬戸/三原瀬戸航路に沿うほかの8灯台と一緒に建てられた。
ほかの灯台に比べた大きな特徴は、(1)道沿いにあり到達がすごく容易、(2)今でもフレネルレンズが使われている、という2点だ。
中ノ鼻灯台があるのは大崎上島(おおさきかみじま)。尾道と今治を結ぶしまなみ海道、呉と大崎下島や岡村島までを結ぶ安芸灘とびしま海道などが近くにあるが、大崎上島にはフェリーか旅客船を使って行くしかない。
今回は大三島の宗方港から、大崎上島の木江(きのえ)港(別名天満港)までのフェリーにクルマとともに乗った。
宗方港からはすでに大崎上島と中ノ鼻灯台が見えていて、フェリーが進むとともにだんだん近づいていく。
写真左端の丘の上に見える建物がホテル清風館で、そのすぐ左下にある白いものが中ノ鼻灯台だ。
大崎上島の木江(きのえ)港から5分ぐらい走ると清風館の案内がある場所に着く。30分ぐらいかかるが歩いて来ることもできる。
駐車場は、この下にある小さな海水浴場のためのようだ。
中ノ鼻灯台は清風館に向かう道沿いにあるのだが、クエスト感を出すために、ひとまずここに駐車し、歩いて坂道を上ることにする。
カーブを一つすぎれば、灯台はほどなく見えてくる。遠くに白い姿が見え、徐々に近づいていく高揚感。これが灯台クエストの醍醐味なので、今回わざわざこういうアプローチをとったのだ。
5分もかからずに中ノ鼻灯台に到着。道幅は広いし、清風館に行くクルマが通るだけなので、ここに駐車してもあまり問題はないとは思うが。
青空と海を背景に、真っ白い姿が美しい。2016年に塗装されたようなので、白さが際立っている。周りに視界をさえぎる木がないので(きちんと伐採しているのかもしれない)、開放感があるし見晴らしもいい。アクセスも楽だし、灯台入門者におすすめだ。
布刈瀬戸/三原瀬戸航路9灯台はいずれもそれほど高さのあるものはないが、一番背が低いかもしれない(高根島灯台と同じぐらい?)。開けた場所に立っているので、灯塔の高さを必要としなかったということだろう。
低いにもかかわらず、2段構造になっているので、扉もとても低く、かわいい。
どちらもひざをつかないと入れない高さなのだが、内部では立ち上がれるのだろうか。
珍しく光源はいまだにランプとフレネルレンズを使っている。その理由は、レンズの前にある縦長の赤いアクリル板にある。
帯の部分だけ灯光が赤くなり、この先(北北西方向)に浅瀬があることを示している。この必要性から、光源をLEDにしていないという。ただ、最初からのレンズではなく、新居浜港東防波堤灯台のレンズを移設したものだそうだ。
銘板はない。そばに「制御器室」というのがあるのだが、銘板は制御器室のもので「新築 昭和63年10月」となっている。石っぽい見栄えにしたコンクリート製だな。
木や草にさえぎられることなく、島が点在する海の風景を見られるのが、中ノ鼻灯台の大きな特徴だが、景色を見るなら、道をさらにあがったホテル清風館がおすすめだ。
とくに、800円で日帰り利用できる「絶景露天風呂」がすばらしい。2023年4月にリニューアルしたそうで、湯船につかると海と島しか見えなくなる(“ほぼ”インフィニティ)。
次の2つの写真は露天風呂の隣にある駐車場からの景色だ。
左が大下島(おおげしま)で、右端に大下島灯台が見えているはずだが、小さくてよくわからない。眼下にはさっきクルマを止めた駐車場下の海水浴場が見える。
視線を左に移すと、大三島が見える。写真中央ぐらいに宗方港がある。
絶景露天風呂ではなく、清風館の駐車場や、灯台のところからでも、このような風景が見られる。「苦労してたどり着く」ことに興味がない人でも、中ノ鼻灯台は楽しめるだろう。
反対に、この前を通る「今治-宗方-大下島-小大下島-岡村」の船から、中ノ鼻灯台や清風館を見るとこんな感じだ。
明治時代に清風館はなかったけど、多くの船員や旅人がこの景色を眺めていたんだな。